エピローグ 風姿花伝
妖狐と人間の
だのに
思い当たる理由はふたつ。
ひとつは契りを結んでいたから。
もうひとつは、これ。
私は首から下げたペンダントに触れた。
ペンダントトップには綺麗な小石が使われている――
彼に名乗ろうと、苗字を紙に書いた時点で彼は、
「ナンテン・ジョー……くん?」
と言った。苗字を音読みで分解された事より、男の子と思われたショックで
いつだったか訊かれたことがある。
「ジョーはなんでそんなに自由にしていられるの?」
私は、当時のまだ歪んでいなかったころの私は、
「自分がやりたいと思ったことをするのが正しいと思うから」
と答えた。
彼はその子供じみた答えに感銘を受けていたように思う。
その後の人生に影響を及ぼすほど。
翌日から彼は熱心に治療に取り組み私より早く退院した。退院の日、彼は私に彼の宝物をくれた。綺麗なだけの、そこらの石ころだった。それでもとても嬉しかったし、この石が
遅れて退院した私は魔道の血族の血みどろの権力闘争に巻き込まれ、蟲毒もかくやといった酷く醜い争いの中で人として歪んでいき、髪色も魔力に染まり、高校に上がった頃には「魔女」と呼ばれるようになっていた。
そんなある日、私は彼を見つけた。
見知らぬ他人を助け、相手と喧嘩に発展し、助けた相手にすら恐れられても平然としている彼の姿を見た時、もしかしたら、昔私が語った「正しさ」のようなモノに
そう思った瞬間、泣いていた。
涙はしばらく止まらなかった。
誰にも
翌日、彼の事を調べ上げ「狂犬」と呼ばれている事を知った。損な性格だな、と思い、あの頃の自分がそこにいるようにも思った。
――そしてあの日、「
これは私だけの秘密。
絶対彼には教えない。
とても教えられない。
「駄犬、そろそろ起きなさいな」
「……すまん。まだちょっと無理だ」
「仕方ありませんわね。もう少しだけ、このままでいてあげますわ」
あの日以来の膝枕をしながら、私は過去を懐かしんでいた。
魔女と守護者のカーディガン 江田・K @kouda-kei
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