第14話 友達

スマホの電話音で目を覚ます。一体誰かと画面を見ると楓だった。布団から手をだし手探りでスマホを見つけ電話に出た。眠そうな声で応答する。

「もしもし」

「あ。しゅう?次の土曜日って用事ある?」

「特になし」

「じゃあ、どっか行かない?」

「いいけど」


あの日から2週間が経っていた。俺たちに何かあったわけではないが、いつの間にか普段から会う仲になっていた。俺としては最初は友達からで構わない。


「じゃあさ、今度しゅうの働いてるお店連れてってよ」

「別にオーナーが良いって言うなら良いけど」

「オッケ!決まり。じゃあまた今度」


電話が切れる。布団から這い出て、洗面所に行き鏡で自分の顔を見ると嬉しそうな顔をした自分がいた。

最近は幸せであると感じることが多くなってきている。おそらく楓と出会ってからだ。彼女に会える日はいつもより頑張ろうと思える。楓が居ると自分が明るくなれる。


岡田からは何も言ってこない。まあ、これ以上の合コンはもううんざりだ。



店の前で待ち合わせということで待っていると楓が現れた。少し息が荒い。


「ごめん。待った?講義が長引いちゃって」

「構わないよ。それより俺の店に来たってなんも面白くねえぞ」

「良いの。河野さんがどんな人か見ておきたいし」


ふーんと俺は言い扉を開ける。厨房から河野が顔を覗かせ俺の後ろを見る。


「ありゃ。修哉君の彼女さん?偉いべっぴんだね」

「違うよ。友達。ほら、電話でも伝えただろ」


すると楓が顔を出し


「どうも河野さん。水野楓と申します。今日は河野さんに会うためにやってきました」


河野はそれを聞きニッコリと笑い


「お。そいつは嬉しいね。ほらほら開店前だから座んな」


俺たちは河野に促され席に座る。河野は俺達の向かい側に座った。


「いやー。修哉君とはいつ会ったの?」


河野は楓の方向を向きながら言う。


「合コンです」


河野は目を見開き驚きの表情になり


「合コン!?この修哉君が!?いやーどうやら修哉君は俺が思っているよりも相当なプレイボーイだね」


俺は反論する


「いや。別に俺補欠として行っただけで行こうとする気なんてなかったんだよ」

「でも、そう断ればよかったじゃないか」


確かに断ればよかったものを断らなかったということは心の中にすこし興味があったということだ。俺が黙っていると


「楓ちゃんは今いくつなの?」


河野が突然話題を切り替える。


「20歳です」

「20歳か・・・ご両親は何歳なの?」

「それはまあ・・・」


突然楓の歯切れが悪くなり俺は横の居る楓を見る。楓がこのような反応を初めて示したことに驚いたからだ。

いけないことを尋ねてしまったと思ったのか河野はそれ以上詮索してこなかった。


それから1時間程会話をし、楓の講義があるのでその場で解散となった。

楓が店を出ていくのを見届けていると河野に突然声をかけられた。


「修哉君。彼女をしっかり支えてあげてね」


その目には真剣味を帯びていた。


「当たり前ですよ」


そう答えると河野は安心し、厨房に戻っていった。




支えてあげるなど義務同然だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛情 キツツキ @tsuki29

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ