File.13 夜の墓場で一人ぼっち (地縛寺殺人事件)
Ep.0 君がこの世にいてくれれば
ワタシは今日も彼に会いに行く。
いなくなったら、嫌だから。これ以上、失うなんて悲しい思いをしたくない。君をこの世にとどまらせるためには何をしたら、いいのかな?
ワタシ、
彼を励ますこと、だろうな。氷河くんにはたくさんたくさん、貸しがある。だから、その分、きっちり返してもらわなければ……!
「氷河くん。明日もまた、会おうね。いろんなところにアンタを連れてって、見せてやらなきゃってものがいっぱいあるんだから! だから、明日もちゃんと、ワタシの話を聞きなさいよ! いっぱいいっぱい話したいことがあるから! いなくなったら、絶対やだからね! 後、少しやつれてるから、ちゃんとご飯を食べなさいよ! ほら! 今日も持ってきたから!」
彼は未だに笑顔を見せてくれはしない。彼が心を閉ざしたまま。
だから、笑わなくては。ワタシが心の底から笑って、氷河くんにも移していく。
なんて思ってたら、ふと、あの人の笑顔を思い出してしまった。
「そう言えば、あの人も……ワタシにずっと笑顔を見せてたよなぁ……」
スマートフォンの中に彼女はいた。当たり前だが、画面には変わらない素敵な彼女の顔がある。画面はだんだんと水気を帯び、ワタシの視界に
あれ、おかしいな。笑顔にならなきゃ、ダメって思ったのに。何で考えれば、考える程に涙が出るんだろう? 何で心が苦しいんだろう。
そうか。ワタシのスマートフォンの中に消えていったみんなの思い出が詰まっているから、だ。見る度、彼女達を連想してしまう。
だからと言って、スマートフォンを捨てることなんてできないんだけどね。
その記憶を消すためにできる限りのことはしよう。まずは今、思い返した彼女との思い出を切り離すために墓参り。
彼の家に言って、玄関から叫んでみせた。
「氷河くーん! 今からご飯でも食べに行こうよ! 赤葉刑事が奢ってくれるって言ってたし。ちょっとした居酒屋なんだけど。あっ、ただ、その前にちょっと寄りたいところがあるから、付き合ってもらってもいい?」
何度も何度も強引に伝えてみせる。
すると、とうとう抵抗することを諦めたのか、氷河くんが私服姿でワタシの前に現れた。
「昼間から、いきなり……どうしたんですか?」
「ちょっとね。ちょっと! ちょっとだけだから! 付き合って、ね! お願い!」
彼を励ますために立てた、この外出計画。それがまた、悲劇との衝突だなんて思っていなかった。
この一連の悲劇で、ワタシは……いや、今は言うべきではないか。
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