File.11 届け、恋と断罪のメロディー(電想哀歌殺人事件)

Ep.0 信頼少女

 僕は探偵嫌いの高校一年生、虎川とらかわ氷河ひょうがだ。幼馴染に石井いしい美伊子みいこという女の子がいるのだけれど。

 彼女はとある事件で探偵アズマの怒りを買ってしまい、襲われてしまう。結果、彼女は何処かに幽閉され、Vtuberにされたのだ。

 僕と彼女が交流できるのは、その配信時間だけ。

 彼女を取り戻すため、僕は探偵アズマを探し、彼の探偵としての存在を殺すことを誓った。ただ、そう簡単に彼とは再会できない。多くの事件を解決して、自分が名声を手に入れる。そして、嫉妬深い彼が僕に挑戦状をたたきつけてくるのを待ち、数々の殺人事件に挑んでいる。

 最中、巻き込まれたクローズド・サークルの連続殺人。その犯人が逃亡中、美伊子に自分の心情を否定され、殺意を抱かれていた。殺人鬼は「先に美伊子を見つけて殺す」と言っていたのだ。


 彼女が殺害予告を受け、どうするべきかと悩んでいた。焦って当てもなく美伊子を探して助けようと探す冬の夜。彼女の兄であり、僕の所属する部活の部長でもある石井いしい達也たつやにも手伝ってもらおうと電話をした。すると、落ち着くように言われたのだ。


『氷河、信頼の力って強いと思わないか?』


 その時の僕は彼が話す意図を理解できず、ただただ怒鳴っていた。


「そんなことを言ってる場合じゃないんですよ! 早くしないと! あの殺人鬼に……!」

『大丈夫だ。きっと大丈夫だ。信じろって』

「あの殺人鬼を信用しろってことですか!?」

『違う。美伊子を信じろっ!』

「えっ……?」


 後に自分を勝手にライバルと見なしている女子大生探偵、恵庭えにわ知影ちかげも電話で同じことを語っていた。


『きっと、あの子なら大丈夫じゃないかな。達也くんの妹ってことでしょ? 殺される前に自分が生きている意味を自信満々に語るんじゃないの? そして殺人鬼を説得しちゃうと思う? そう思わない? 信じられないと思う? ワタシは少なくともそうなると信じてる』

「美伊子の力なら、できるのか……」

『うん。それにあの殺人鬼は「優しい人は殺さないはず」だよ。殺した人物についてはしっかり調べ上げてるみたい……美伊子ちゃんって、今まで生きてきた中で何か悪いことをやってた?』

「……いや」

『じゃあ、美伊子ちゃんの優しさを信じてあげて!』


 また同じことを部長が家に来て、言った。


「あいつ絶対お前が先走って混乱して苦しむことを望んじゃいねえぞ。ただ嫌って言うことと言えば、お前が人生を楽しめないこと、だろうな……」


 そして、Vtuberになった美伊子すら画面の中から言っていた。


『そっ、私を信じてみせてよ。もし、あの殺人犯が私のところに来たとしてだよ。ちゃんと説得してみせるからっ!』


 信じることを僕の仲間達が教えてくれた。だから、僕は平常でいられた。

 ここからは、疑うことしか知らない僕が信じることを学ぶ物語。

 

 

 

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