二曲目 予想外と日常と
「よー、全員揃ってるか?」
学園祭から数日後。
依頼等一通り落ち着いたのを見計らってR.G.B.全員で遅い打ち上げも兼ねた『志音の楽器体験会』をダニエル宅にて行うこととなり、住宅街の片隅にあるというその家に向かうためにいつもの六人は学園島中央駅の前に集合していた。
「「全員揃ってまーす!」」
「しっかし、ダニーが寮じゃなくて自宅に住んでるなんてな…」
「はっはっは、そこらへんは元から働いてるやつの特権だな。そんなに遠くないから歩くぞー?」
「「「はーい」」」「おー」「分かった」
それからダニエルが先導するままに向かった先――五人の目に入ってきた彼の自宅は一階中央あたりに大量の
「ひぇっ!?」
「えっ、えっ、ここがダニエル先輩の家ですか!?」
「うわ、デッカ…一軒家かよ」
学生が住むには明らかに広い家に後輩たちは予想外だったのか思わず目を丸くする。
その様子を見て、後輩たちの反応は予想できていたのか輝は苦笑していた。
「あはは、いつ見てもすごいよなぁ…ダニエルの家」
「輝先輩は知ってたんですか?」
「まぁね、一応バンド始めた頃は何度かここで
「いや…ちょっと待ってろ」
動じていない様子に問いかける有紗に少しだけ懐かしそうに答えつつも、月日が経っているのでその間に趣味を増やしたのだろうかと輝はバイクを指さす。
ただこの状況は予想外だったのか、ダニエルはつかつかとガレージを挟んで厚みのない方の棟に向かってはガラッと引き戸らしき場所を開けて顔を突っ込んだ。
「――おい、てめぇら今日は“会合”はしねェからココに来るのは禁止だってこの前言ったろーが!!」
『えーっ!!!?』
『だってR.G.B.全員が遊びに来るって情報がー!』
『アキラさんのサイン欲しいんですぅ!』
『小夜ちゃんや有紗ちゃんを間近で一目見たいんスよー!』
『イオ君とツーショットー!!』
「いいから今日は見回りでもしてろ!!」
顔を突っ込んだその部屋の奥でギャンギャンと言い合うような声がしたかと思えば、ぶーぶーと文句を言いつつもぞろぞろとおそらくダニエルの舎弟――不良らしくはない外見ではあるが番長連二番隊の隊員たちと思しき面々が現れる。
そして名残惜しそうにR.G.B.に向けて手を振ったりしたかと思うと、バイクに乗ったり獣化したりそのまま走りつつ立ち去ったのだった。
「…すまん、事前に今日はOFFだって言っていたんだがな」
「あぁうん、お疲れ様?」
「後で〆とかねぇと…それじゃ、どーぞー」
「「「「失礼しまーす」」」」
やれやれと肩をすくめつつ、
「「す、すごーい!!」」
「はわ…すごい…」
「映画のセットかよ…」
「ダニエル、また楽器増やした?」
「んー、まぁいくつかなー」
そして招かれてドアを開けたその先は、アメリカンBARをベースに“男の浪漫”を詰め込んだ秘密基地のような内装が広がっていた。
「それじゃ、適当に座ってくれ。飲み物色々置いてるけど何がいい?」
「お、じゃあコーヒーでー」
「俺もぞれでいいや」
「えっと、オレンジジュースとか?」
「じゃあ私もそれで…」
「ジンジャーエールあります?」
「おう、あるぞー。コーヒーは今淹れるから待ってろ」
ソファに女性陣、BARカウンターに男性陣と別れつつも、全員に飲み物が行き渡ったところでこほんと一つ咳ばらいをしつつ志音が立ち上がる。
「えっと、それじゃあバトルステージ優勝と一応ボクの転校の白紙化を祝しまして…カンパーイ!!」
「「「「カンパーイ!」」」」
そして、ようやく当初の目的通りに打ち上げが始まったのだった。
「ダニエル先輩!楽器触っても大丈夫ですか?」
「いいぞ、高い位置のは危ないから一声かけてくれ。弾き方が分からないのでもいいぞー」
「はーい!小夜っ、有紗ちゃん、どれから演奏してみる?」
「えっと…はわー…ギターがいっぱい…」
「管楽器にドラムも二台も…あ、あれって後夜祭の!?」
飲み物で口を潤し、事前に注文しておいた軽食類をつまんだところで志音たちはガラスの壁の向こうのスタジオへと向かう。
一方、男性陣はカウンターでゆるゆるとおしゃべりしつつ過ごしていた。
「――それにしても、ダニーって銃も扱えんのか?」
「一応牽制用だけどな、メインは剣だし」
「この前の授業でチーム戦やった時、ダニエルってばロケランぶっ放してたよなぁ」
「マージで?ぶっ放した後突っ込んでくるんだろ?怖っ」
一人は
その会話の中でふと目に入った厳重なケースに入った一振りの武器を指さしつつ、衣音はダニエルに対して問いかける。
「ダニーってさ、普段ギターで戦ってるけど“外”だとあの剣使ってんの?大層な両手剣っぽいけど」
「おー、あれか。あれなー昔から使ってる
「へぇ、遺産…遺産っ!?あのやべーって噂の?」
「お、イオは知ってたかー」
何気なく問いかけた武器の予想外の説明に、ごふっと思わず衣音は飲み物を噎せかけていた。
「いい反応してくれて嬉しいぜ、アキラには『へー、そうなんだー』って感じでスルーされたからな」
「だって遺産とか知らなかったし?」
「えぇ…」
ケラケラと良いリアクションだと笑いながらわしわしとカウンター越しに撫でまわしてくるダニエルの手を払いのけつつ、衣音はカウンターテーブルに突っ伏す。
「もうダニーが何者なのか分かんねぇよ…」
「何者って…R.G.B.のGtにして、番長連二番隊隊長ですけどー?」
「そういうことじゃ…あーもーいいや」
天板に突っ伏して嘆く衣音の言葉に、あくまでもアカデミアでの生活を楽しんでいるのだと言わんばかりに笑顔で答えていた。
「せんぱーい!これどうすればいいんですかー?」
「お、エレキヴァイオリンに目をつけるとはお目が高ェな。今行く!」
「衣音、俺達も行こうか?珍しい楽器も触れると思うし」
「そっすね…なんか色々あるみたいだし」
そういうことではないとダニエルの言葉に呆れかえったところで、スタジオルームの方から志音達からのヘルプの声がかかる。
そちらへダニエルが向かった後、せっかく普段扱わないものにも触れる機会があるならと輝と衣音の二人もスタジオの方へ向かったのだった。
R.G.Bの日常 ~ダニエル番外編~ ふはい @huhai
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