第31話
しばらくすると、夜が明けました。ガラス越しの光を浴びて、なおちゃんのお母さんは、ハッと目をさましました。
「こんな時に寝てしまうなんて。」
お母さんは、ひどくあわてて、なおちゃんの顔を見ました。するとどうでしょう。なおちゃんが、パッチリと目をあけて、こっちを見ているではありませんか。あの土気色だったほほにも、血の気がもどっています。
「ねえ、お母さん。ここは、どこ。なおこは、どうしちゃったの。」
なおちゃんは怪訝そうに言いました。
お母さんは、あわてて泣きながらお父さんを起こしました。
「あなた、直子が気がついたわ。助かったのよ。」
こうして、なおちゃんは命をとりとめたのでした。
でも、それ以来、ヨシオ君の姿は、この町から消えてしまいました。お父さんもお母さんも死に物狂いで探し回りました。警察にも頼んで、四方八方に手をつくしたのですが、とうとうヨシオ君は見つかりませんでした。もうこの頃では、みんなすっかりあきらめてしまったみたいです。
でも、なおちゃんにはなんとなくわかっているんです。なおちゃんの命を助けてくれたのは、ヨシオ君だっていうことが。
そして、なおちゃんは、こう思うのです。
目が覚めた時に持っていた、この消しゴムみたいなふしぎな石を持っていれば、いつかきっと、ヨシオ君に会えるにちがいないと。
おばけのたまごの話 OZさん @odisan
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