勘
女の勘ってあるんだ。当たるんだ。浮気って見抜けるんだ。初めての感覚だった。人の下心や悪意を見抜くのが下手な私が気付いたことに吃驚だった。友達に恋人に浮気された人なんていなかったから私にとっても他人事だと思ってたそれ。案外身近にあって、隣にいなかったことさえ気付かない。
「ねぇ、もうしないから」
猫撫で声で開き直る彼を横目に溜め息をつく。
「ね、お願い。もう許して」
悲しそうに眉を垂らし許しを乞う様子は些か滑稽だった。
「……何でしたの?」
「
「誰でも良かったんだ?」
問い詰める様に聞いてみる。
「……彩絵じゃ無かったら誰でも一緒だよ」
それ、誰と浮気しようが一緒でしょ。早く許してってこと?いや、面倒くさい思考してんのは分かってるけど、私浮気相手とやり取りしてる所後ろ通って見たことあるんだよ?ハートいっぱい使ってご機嫌取りして必死に次の約束取り付けてたじゃん。誰でも良いなら他を当たれば良い。体使いたいならそういう店に行けば良い。私をキープしている必要は無い。
「好きなのは彩絵だけ」
都合の良いことばかり言う。本当に私のことだけ好きならその子に言ってた好きは何なんだ。
「じゃあ連絡先消して。もう会わないで」
「うん」
すぐにスマホを出して浮気してた子に彼女いるからもう会えないとだけ送ってブロック、削除して見せた彼はもう許してくれる?とでも言わんばかりの目で私を見つめる。そもそも恋人がいることすら向こうには知らせてなかったのか。私を見つめる目にほんの少し面倒くさそうなのが滲み出てるのが腹立たしい。でもその割には何と言うか……冷めている様な気もする。呆れているのともまた違う言葉にし難い複雑な感情を一旦置いて私は彼に笑顔を向けた。
「ありがとう」
「うん」
何がうん、だ。浮気した側が感謝の言葉を貰い、それを当たり前の様に受け取っているのも微妙に引っ掛かる。
「ご飯食べに行こ。行きたいところ連れてくよ」
「んー……家で食べたい」
「何食べる?」
「パスタあるから今から茹でるよ」
「分かった」
キッチンに入ってスマホをポケットから取り出す。一人分のパスタが茹で上がるまであと五分。
女の毒は甘い蜜 水貴 竜胆 @purple_lightblue
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。女の毒は甘い蜜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます