第11話 修行。

 今日から、父さん、そして三兄弟とともに修行が始まる。しかも、修行場所は、昨日行った湖畔だ。ちょっと遠い。日課のランニングの他に、移動は体力大丈夫かな?


 湖に向け、森の中を進む。


「ねえ、父さんなんでわざわざ、湖まで行くの?村の広場じゃダメなの?」


「我が息子よ、いずれ、お前たちは旅に出るのだろう?その時に森を抜けた経験が少なければ、命に係わるかもしれない。後は、単純に体力を増やす狙いもある。お前も、そのために、毎日はしっているのだろう?」


 なるほどな、確かにそうだ。修行も日課になるんだし、そのほうが、効率がいい。


「師匠、それであれば、この森の中を走って進み、われら4人で競争してはどうでしょうか?」


 おい、青目デカ男、余計な事いうな。お前は、単純に俺に勝ちたいだけだろ!!てか、いつの間に師匠になったんだ!


「それはできんな、お前らがバラバラになって、誰かが、森の魔物に襲われてもカバーしきれん。それに、【身体強化】の使える我が息子が必ず勝ってしまうしな。そもそも、【身体強化】なしの息子に三人がかりで挑んで、攻撃をあてられなかったのだろう?」


 フハハハハ、その通りだ。よく言った、父さん。


「まあ、息子に負けたのが悔しいのはわかる。だが安心して欲しい。この後必ずボコボコにするからな!!慢心せぬように!」


 え?まじで、児童虐待だよそれ。やばい。


「ねえ、父さん。お腹が痛くなってきた。今日は帰って休んでいい?」


 おれが、振り返って、来た道を戻ろうとすると。左右の方が掴まれた。


「ねえ、君、ここで帰ったら、わかるよね?」


「僕も、君を絶対に返さないよ?」


 おい、どういうことだ、昨日は優男も、赤目女もそんな力なかっただろう。変なオーラ出しやがって。余ほど、ボコボコにされるのを見たいのか!!


「あ、あぁ。もちろん、精一杯父さんに挑むさ。」



 そんなこんなで話していると、湖畔についた。


「「「「ついたぁ~!!」」」」


 俺たちが、そういうと同時に。


「じゃあさっそく、ヤルゾ!息子よ!!」


 そういって、突っ込んできた。


「やばい、【身体強化】!!なんで、こんな突然になんだよ!!」


 【身体強化】を使って、何とか、ギリギリでかわす。

 武器は......。何も持ってない、素手か!!突然殴りかかってくるなんて、チンピラと一緒じゃん!!


「村を出て旅してれば、気を抜いてるまにやられるぞ!!いつだって敵は待ってくれないのだ!!」


 父さんはすぐに反転し、また殴りかかってくる。


「息子よ、逃げてるばかりじゃ、俺には勝てないぞ!!」


 父さんの、攻撃をなんとかかわしているものの、父さんは余裕そうに見える。


「......ッチ。(ヤバイヤバイヤバイ!!今かすったよ!)」


 父さんが驚いた顔をした。そのとたん、攻撃のスピードがあがり、攻撃が詰められてきてる。


「手加減するなら、最初の力のままでやってよ!!」


「いやあ、思った以上にやるから。ちょっとむっとしてなぁ。」


 むっとした。って子供かよ。


「少し、本気出すから、頑張って耐えてくれよ!!」


 そういった途端、父さんの雰囲気が変わった。まさか、【身体強化】か?!しかも、速い!!このままだと、かわせない!!


「ック。【魔力操作】躱せないなら、耐えるしかない!!」


 【魔力操作】を使い、体中に魔力を固定し、耐久度をあげる。【身体強化】の効果も相まって、なかなかの強度だと思う。


「息子よ、その覚悟はよし!!だが、お前の負けだ!!」


「グハッ.......。(俺の防御は豆腐ですか?)」


 そして、気を失う。



 体中が痛い、それに冷たい。俺はどうなったのだろう。ん、苦しい!!


"ジャバン"


 体を起こすと俺は、湖の上にいた。


「お、起きたかぁ。はやく上がってこい。」


 意味が分からない、父さんに負けたが、湖まで飛んで言った記憶はない。


「父さん俺はどうして、湖の中にいるんですか?」


「あ、あぁ。軽いきぇつで済むように手加減したから、水の中に投げ込めば起きるかなって?」


 ああ、じゃあ、体中が痛いのって湖に投げ込まれた衝撃か。何てことしてくれるんだ!!


「おぼれ死んだら、どうするんですか!!」


「いやぁ、起きたろ?ならいいではないか。細かいことは気にするな。」


 父さん、こっち見ていってください。そのこと考えてなかったでしょう。


「家に帰ったら、母さんに言いますからね。」


「そ、それはやめてくれないか?」


 やっぱり父さんは母さんに弱い。起こし方を間違えた父さんが悪い。


「そんなことより、修行始めますよ!!ご指導よろしくお願いします。」

「じゃあ、さっそくだが、さっきの俺と息子の戦いで、俺が何のスキルを使っていたかわかるか?んー、でかいの。」


 長兄デカ男は悩みつつ答えた。


「【拳術】と【身体強化】でしょうか。」


 まあ、そうだよな。俺もそう思う。


「まあ、【拳術】はあたりだが、【身体強化】は違う。」


 え?じゃあ、あの時雰囲気がかわったのって、なんでなんだ?


「じゃあ、あの時何を使ったの?」


「それは、【魔力循環】だ。いつもより多く循環させ、スピードも速くしただけだ。」


 それだったら、【身体強化】と変わらないんじゃないか?


「【身体強化】と【魔力循環】の違いって何でしょうか?」


 お、いいこと聞いてくれた次兄の優男よ。


「そうだなぁ。【身体強化】と【魔力循環】では効果は前者のほうが上だ。パワーやスピードの向上力はの差は大きい。だが、この二つには決定的違いがある。それは、魔力の消費量だ。ただのゴブリンが、【身体強化】を使い続ければ、5分で魔力が尽きて死ぬ。」


 なんだと、そんなことがるのか。たしか前に、魔族って、魔力が尽きれば死ぬって誰か言ってたな。あぁ、母さんか。てか、まさか俺は、


「じゃあ、それって......。」


「お前は、昨日も今日も命かけて勝負してたってことだ。」


 あ、やばい。冷汗が止まらない。あれ?でも、爺さんとの修行で、【身体強化】を1時間くらい継続したことがあるぞ?それって単純に普通のゴブリン10人分以上ってことだよな?すごいじゃん!!俺!!しかもさらに持続できそうだったし。


 いや、まてよ。低位の冒険者数名でワイルドボアを狩れる、そしてそのワイルドボアにこの三兄弟は負ける。仮にゴブリン5人でなら、ワイルドボアに勝てるとすれば、その二倍の10人ならワイルドボア二頭。ってことは、おおざっぱな計算だが、俺の魔力量的に.......。いや、魔法の使用の有無もあるから、これじゃ算出できない。頭がこんがらがってきた。

 でも、きっと俺の魔力量は人間で見ると大したことないのかもしれない。


「そうなのか、俺は命を懸けてたのか......。(なんか、魔力のこと面倒だし、話合わせておこう。)」


「ちなみに、【魔力循環】はそもそも、体内の魔力を循環させるだけだ、消費する魔力量はかなり少ない。それに、我々魔族は、生まれた時から【魔力循環】を本能で行っている。もちろんスキル化したほうが、効果は絶大だ。」


「ということは、当面の目標は【魔力循環】のスキルを獲得することですね?」


 優男がそういうと。父さんは、


「もちろんスキル化を目指す。それと同時進行で肉体改造を行う!!」


 そういって、腕立てをし始めた。全部説明してからしてほしい。そう思い、父さんを見ると、ハッとした表情で、


「【魔力循環】と筋トレは相性がいいのだ。疲労が回復しやすいし、何より、基礎能力が高いほうが【魔力循環】を使った時の効果がかなり大きくなる。今回、息子が【身体強化】を使って俺に【魔力循環】で負けたのは、やっぱり肉体の差だな。」


「なるほど、師匠。じゃあ私は、筋肉ムキムキのレディになればいいいのですね!!」


 何てこというんだ。お前顔がいいのに、筋肉ムキムキの女ゴブリンとか勘弁してくれよ!!


「君の戦闘スタイルは、一撃必殺のパワーより、スピードを活かした、戦闘スタイルだろ?筋肉の付けすぎはよくない。重さが増え、スピードを殺しかねない。」


 父さんが、まともなことを言ってくれたありがとう!!


「じゃあ、僕も、弓を扱ううえで機動力は必要ですから、ほどほどですね。」


 優男、お前逃げようとしているな?


「いや、弓は結構力がいるんだ、弓の威力を増すためには上半身の筋肉が不可欠だし、どんな悪環境でも、例えば木の上とかでも、体をどっしりさせてくれる、筋肉が必要だ。弓は、パワーに比例して、威力も距離も変わってくる。それなら、鍛えないなんて選択肢はないんだよ。」


「わ、わかりました。」


 残念でした!!今はすらっとしたイケメンだがいずれ、父さんみたいなガチムチの体にお前の顔がチョコンとのってアンバランスな残念イケメンになるのさ!!ハハハハハ!!


「それと、我が息子よ。お前はもうすでに、複合スキルの【魔力操作】を持っている。すごいな、俺も持ってないのに。だから、他の三人より厳しくなるが頑張って、ついてこいよ!!」



 え?



 そうして地獄の修行の日々が始まった。

 


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