第10話 ゴブリンの現実。

「それで、戦いは俺が勝ったけど、爺さんは何がしたかったの?」


「ホッホッホ。どうして今回お主が勝ったと思う?」


 ゲッ、質問に質問で返された。でも、まあ答えは戦闘中に思ったことだよな。


「身体能力の差だと思う。武器の扱いは多分俺のほうが素人だけど、この三人はまだ、スキルまで昇華できていない。だから、【身体強化】を使って、基礎能力を上げた。」


 俺がそう言うと、爺さんは嬉しそうに言った。


「ホッホッホ。その通りじゃ、つまり、いくら武器をもっていようと、人数が多かろうと。生物としての格、身体能力の差が大きく差がついてるときは勝てないものは勝てない。わしら、ゴブリンが、ドラゴンに数千で挑んだとしても、恐らく勝つのはドラゴンじゃ。お主らが三人がかりで負けた、こ奴でさえ、ワイルドボアに一対一で挑めば勝てはしても大けがする可能性のほうが高い。」


 え、まじか。俺、ギリギリ勝てそうなんだ。やっぱワイルドボアって強いんだな。てことは、倒した父さんも強いってことか。


「それに、旅にでたゴブリンの命は短いのじゃ。」


 旅に出て戦いの経験を多く積めば、進化して、寿命が延びるんじゃ?


「それは、なんでだ?」


「それはのう、旅に出たゴブリンのほとんどが、人間の冒険者に簡単にやられてしまうのだよ。人間の冒険者にはのドラゴンを単独で倒してしまうものや、たった数名で、ゴブリンの村を壊滅させれる存在がいるのじゃ。」


 やはり、人間には冒険者というものがあるのか。はあ、テンプレに逆に駆られる存在になっちまったってことだよなあ。


「人間とゴブリンでは、武器や知識、魔法においても比べ物にならないくらい差がある。そのおかげで、わしらは簡単にやられてしまう。だから、ゴブリンは、人に比べて成長が早く、お主らのように複数で生まれてくる。種を守るためにな。」


 へえ、ゴブリンって多産なんだ。俺、一人っ子だけど。


「翁、ちなみに、俺って人族からするとどれくらいの脅威なのかわかるか?」


「ホッホッホ。確か、ワイルドボアが低級の冒険者たちが複数で挑むのが適正って言ってたの。」


 なるほど、ワイルドボアに接戦して勝つくらいの俺では中位以上の冒険者と戦えば、負ける確率が高いというわけか。


「ちなみに戦闘スキルを一つでも習得できればどうなる。」


「ホホ、お主であれば、上位スキルも持って居るし、ワイルドボアくらいなら簡単かのぉ。」


 俺が、上位スキルを持っているということに、3人組が驚いたような顔をしている。いや、戦闘中に使ってたろ俺。


「なら、俺たちがそれぞれ、戦闘のスキルを身に着けたらワイルドボアを倒せるのか?じいよ。」


 青い目の長兄が、俺を見ながら言った。なんでこっち見るんだよ。


「ホッホッホ。そうじゃのう、一人一つ以上必ず【剣術】などの戦闘スキルを得て三人で挑めば、そう苦労せず倒せるじゃろうな。」


「じい、どうすれば、そのスキルを手に入れられる!!」


 赤い目の女が、食い気味できく。


「そうじゃのぉ、自己流で鍛錬してもいいがそれだと時間がかかるしのう。かといって、儂も年だし、激しい動きはちょっとのぅ。」


 そんなこと言って、戦闘系の上位スキル持ってそう。この爺さん。


「何とかならないのかな。じい。このまま、こいつに負けたままじゃ悔しいんだ。弓を上手く使いたい!!」

 

 優男......。俺に負けたのが悔しかったのか。降参したの自分だけだったしなぁ。


「ならば、戦士ウォーリアーのところにでも、修行を頼んでみるかのぅ。」


 え、それって......。


「ホッホッホ。お主の父じゃ。」



 うわ、また三人組が驚いた顔でこっち見てる。


「ねえ、君のお父様って戦士ウォーリアー様だったの?」


 赤い目の女が目を輝かせてこっちを見ている。


「ま、まあな......知らなかったのか?」


「子供ができたのは知っていたけど、まさか君とはね。なんで自己紹介の時に行ってくれなかったのよ!」


「そうだぞ、もっと早く言ってくれれば、もっと仲良くなれたのにな。ハハハハハ。」


「兄さんと、妹は君のお父様に憧れているのさ!!」


 なんて、現金な奴らだ、父さんの息子と分かったとたんに馴れ馴れしくしやがって。


「でも、なんで、父さんなんだ?ただの、脳みそ筋肉だぞ?」


「そんな失礼な!!君のお父様は、成人してたった一人で旅にでられて、上位種族に進化し帰ってきただけではなく、村を襲ってきた、フォレストベアーという、ワイルドボアの数倍デカい魔物を倒したんだぞ!!熊殺しの英雄で、それに、次の進化も近いといわれてるくらいだ。」


 青い目の長兄君、君キャラ変わった??まるで、ヒーローに憧れる少年みたいだよ!!あ、少年か。


「そ、そうなんだねぇ。知らなかったよ。」


 今度直接聞いてみようっと。



「ホッホッホ。それじゃあ、そろそろ村に戻るかの。明日から、こ奴の家に行くようにな。話は通しておくからのぅ。」





 家に帰って。


「ただいまー。」


「おかえりなさい。」「お帰り、我が息子よ。」


「ねえ、父さん。父さんってすごいんだね。」


 俺の言葉に、父さんが驚きつつ照れてる。


「な、何がだ?父さんがすごいのはもとからだろ!!」


「そうだよね、さすが熊殺しの英雄さん!!みんな、憧れてるって!!」


 いやぁ、熊殺しの英雄ってなんか、カッコイイんだか悪いんだか微妙だよなぁ。しかも、なんか恥ずかしいし。


「ハッハッハッハ、照れるなぁ。いやぁ、父さんはすごいかぁ。そうかそうか。」


 あれ、思った反応と違う!!これはこまった。あ、そうだ。


「ただの筋肉バカなんかじゃないんだね!!」


「き、筋肉バカ......息子に馬鹿って言われた.......。」


 父さんが、部屋の隅っこに行って、肩を震わせてた。今度は言い過ぎたかな?しょうがないなぁ


「父さん、明日から修行よろしくお願いします!!」


 父さんが、勢いよく振り返り、顔をパァっとほころばせて、


「おう、もちろんだ。父さんにまかせておけ!!息子よ!!よし、がんばるぞおおおお!!」


 たった、一言で、感情が振り切りすぎな。それと、顔怖いし。



 じゃあ、また明日も頑張りますか!!しばらくの目標は、戦闘スキルの獲得だな!!



 


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