第8話 ライバル。

 翁と出会って3か月がたった。毎日魔力の運用方法について学び、ゴブリンが本能で出来ること以上のことができるようになった。まあ、単純に、他より魔力量が多いからなんだけど。

 これが成長した俺だ。


 

個体名:なし

種族 :ゴブリン

年齢 :0歳


<スキル>

【魔族言語:ゴブリン】【身体強化】


<上位スキル>

【魔力操作】


<称号>

【異世界からの転生者】【元人間】


 


 この3か月でスキルを二つ覚えたそれは【身体強化】、【魔力操作】のこの二つ。

 【身体強化】は、初めて魔力循環したときに体が熱くなったことがあった。あの経験から、ただの魔力循環で力が上がるなら、あの熱い状態ではどうだと思い。何度も繰り返した結果、スキルの獲得に成功し、効果も格段によくなった。

 最初は体が茹で上がってしぬかとおもったけどね!!


 【魔力操作】これこそが、一番の成果だ、何を隠そう上位スキルなのだ、これは【魔力循環】【魔力固定】【魔力放出】が複合してできた、複合スキルで、ただのゴブリンが持つ可能性は極めて少ないという。

 

 【魔力循環】は単純にスキル化するまで頑張った、【身体強化】の練習もどうやら、うまく作用したらしい。

 

 【魔力固定】は循環の逆をしただけ、体内の一部に魔力をとどまらせることができる。最初は拳にとどまらせることしかできず、練習していたが、固定していた魔力にせき止められていた魔力が、腕に集まりすぎて破裂するかと思った。骨もミシミシ音なってたし。

 

 【魔力放出】は【魔力固定】で腕を失わないために、頑張って覚えた。せき止められた魔力をそのまま、循環させると体全体が悲鳴上げるし、魔力がたまりすぎないようにチョクチョク外に逃がしてた。


 以上。

 結構スキル獲得するのもリスクがあるだよなぁ。

 まあ、本能だけでは【魔力循環】のスキル化はできないし、スキル化してしまえば、他の同世代に追いつくどころか追い越せたと思う。


 スキル、魔力の鍛錬、筋トレの疲労で毎日翁の家の前でぶっ倒れまくってたな。よく頑張った。


 ちなみに、翁はやっぱり【魔力操作】をもってた、他の魔力関係のスキルも持っているようだが、今の俺の種族はただのゴブリンなので、習得は危険だという。逆に言えば、翁は上位種族だということだ。よぼよぼ過ぎて、わからん。


 そして今日も、いつものように魔力の鍛錬をする。まだ魔法を使わないのかって?アハハハハ、俺の種族じゃ魔法は使えないのさ!!練習とかそういう問題じゃないらしい、適性がないんだ。でも、進化すれば、使えるようになるって。翁もたまに使ってるし。ここまでくると、翁が何者か気になってくるよね。


「翁、今日は何するの?」


「ホッホッホ。今日はの、わしの孫を紹介するぞい。」


 孫?そんなのいたんだ初耳。どんな子だろう?男かな女かな?というか、同世代なのかな?


「ホッホ。じゃあ、こっちにいらっしゃい!!」


「おう。」

「わかった。」

「はーい。」


 ん?声が複数聞こえたんだが......。

 最初に出てきたのは、俺よりも大きい男。ガチムチっぽいので、きっと大人だろう。

 次に出てきたのは、最初の男に比べひょろっとしているが、俺より身長はでかい。おい、なんかゴブリンのくせにイケメンだぞどういうことだ。

 最後に出てきたのは、


「女......。(かわいい、ほんとにゴブリンなのか?)」


 俺は一瞬言葉を失った。


「おいお前、何妹をじろじろ見てる?」


 あ、でかいやつがこっち睨んでなんか言ってやがる。父さんより怖くないから平気だもんね!


「兄さん、顔が怖いよ。第一印象はちゃんと笑顔にしなくちゃ。」


 おい、てめえ、どういう要件だ。イケメンが、こっちみてキラキラしてる。腹立つな。


 というか、お前兄弟で瞳の色全員違うんだな。信号みたい。デカいのが青で、優男っぽいのが黄色、見た目かわいい女が赤。おまけに、瞳の色と髪の色もそろってる!!前世の信号機を思い出したよ。緑じゃなくて青だけど......。


「ねえ、ねえ。あなたが、じいの言ってた。面白いゴブリン?いつ生まれたの。」


 面白い?爺さんそんなこと思ってたのか。


「面白いかどうかは知らないが、生まれたのは、4か月前くらいだ。」


 そういうと、女はこっちをキラキラした赤い目でみてきて。


「そう、じゃあ私のほうがお姉さんね!!もう生まれて、9か月。そろそろ成人よ!!」


 なるほどね、意外と年近いんだな。というか、よく俺はこの狭い村で誰とも会ってなかったな。いや違うか、家と爺さんところを往復してただけか。毎日......。というか、成人ってなんだ。


「あ、それと私たち、三つ子よ!!」


 は?三つ子?誰も似てないじゃんか!!俺って、こんな目立つ奴らのこと知らなかったのか?


「なあ、あんたら、三つ子なんだろ。しかも全員、なんか結構目立つ。爺さンの家にいたなら俺が、今まで気づかないことないと思うが。」


 そういうと、優男ゴブリンが、教えてくれた。


「君とはこの家の前ですれ違ってるよ。一方的にだけど。」


 意味が分かんない。デカいやつが、続けて言う。


「お前は毎日ぶっ倒れてて気付かなかったんだよ。俺らが家出たりしているの。まあ、妹も足下で倒れてるお前に気付いてなかったけどな。」


 なるほど、こいつらが外出できるころには、俺は翁の床に入り浸り始めてたからな。そろそろ、積極的に村のゴブリンたちと関わったほうがいいかもしれない。


「ありがとう、理解した。それと、成人ってなんだ。」


 翁がはっとなった。


「ホッホッホ......。成人はな、生まれて1年たったら、家を出なければならんのだ。村に残って、生活するもよし、旅に出るのもよし、好きに生きていいのじゃ。」


 おい、それって重要な話じゃね。なんで、両親も、翁もいってくれなかったんだ?


「聞いてないけど。」


「だって言っておらんもん。」


「なんでだ?」


「ホッホッホ。単純に、お主まだ生まれて四か月、普通なら、やっと今ぐらいから話し始める時期じゃろ。後、忘れてた。」


 多分、後者が九割だと思う。今ばかりは、鍛錬の恩を忘れそう。


「細かいことは気にしないほうがいいわよ!!私たち兄妹は、旅に出るんだ!!私たちって寿命が7年って短いし、進化すれば伸びるからね!!そのためにもいっぱい、戦うんだ!!」


 この子のセリフさっきから、重要な情報ばっかりじゃないか?ゴブリンの寿命短くね?小学校二年生で死ぬやん。しかも、寿命伸ばすために進化を目指せば基本的に戦闘は避けられない。寿命で死ぬか、戦って死ぬか。どっちにしろ、短い命って地雷種族すぎだろ!!


「そ、そうなんだ。早く進化できるといいね!!」


「うん、だから私たち三人と戦って?」





 え?どういうこと?





 

 

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