第6話 失敗。
父さんが、スキルについて詳しく話してくれた。ただ、父さんも母さんも浮かない顔だったが......。
スキルというのは、基本的に一定以上の技術や経験の蓄積によって得られるものらしい。他にも生まれながらにスキルを持っている場合もある。それは、才能だったり、種族スキルだったり、様々な要因で先天的に持つ。ゴブリンにはないらしいがな!!
そしてスキルを得る前と、得た後では能力が格段に違うという。
例えば、スキル【剣術】これは、剣を扱ううえで重要なスキルだ。しかし、剣を振るだけであれば、誰だって、五歳児でも、やろうと思えばできる。
スキルをもってない、素人の子供と、同じく素人の大人が、剣で戦えば、だいたい大人が勝つ。
だが、スキル【剣術】を持った子供と、素人の大人が剣で戦えば、立場は逆転する。もちろん、そのほかの要因で勝敗が変わることはあり得るが。
そして、同じ体格のスキル持ち同士が戦った場合、だいたいは練度の高いほうが勝つ。
ちなみに、俺が持つ言語スキル【魔族言語:ゴブリン】は、経験の蓄積によるものだ。父さん、母さんの会話。中身が元人間のためある程度の知能、言語を話した経験が赤子の状態でそなわっていたためスキル化し話せるようになった。
主に後者の要因が大きかったらしい。だから、この世界では、ほかの言語の取得も地球に比べて容易だ。もちろん、言語によって覚えやすさは異なる。母さん曰く、ゴブリンは生活や文明の水準が低く、覚えることも少ないので、取得しやすいらしい。
ちなみにこの村の村長は、【魔族言語:全】という統合スキルもいっている!!すごい!!
コボルトや、オークなどほかの言葉を持つ種族の言語をいくつか覚えたら統合したらしい。周辺に、ゴブリン以外の種族が存在しているってことだよな!!
しかも統合スキルのすごいところは、統合前に、取得できていないスキルがあっても、統合され、【魔族言語:全】になれば、魔族の言葉なら会話できるようになる。便利だなし、俺も頑張って覚えようかな。
ちなみに、【魔族言語:全】は上位スキルと呼ばれる。スキルは、通常のスキルの他に、上位スキル、最上位スキル、ユニークスキルがある。種族スキルは、ユニーク以外のどこかに振り分けられている。ユニークスキルは、その個体独自のスキルで、ユニークスキルのほとんどは、かなり強力らしい。
聞けば聞くほど、俺には才能がなく、ユニークスキルというチートもなく、種族スキルのないただのゴブリンなのだと思いらされた。まあ、スキルを育てれば、強力になるのがわかったし、諦めず頑張ろう。
これで、スキルについてわかった。他にもきになることはいっぱいある。
「スキルについてはわかったよ!!ありがとう!次は魔力について教えてほしい。」
「魔力のこともわからないのか?」
父さんも母さんも、また、浮かない顔をしている。
「え、うん。教えてほしいな。まだ生まれて1か月だよ?」
「ごめんね、あなたをちゃんと生んであげられなくて......。」
母さんが訳の分からないことを言っている。
「え、どういうこと?」
「私たち魔族はね、スキルのことも魔力のことも生まれながらに知識をもってうまれてくるの。本能のようなものね。そういう風に魔神様がお創りになられたの。」
「え?それじゃあ、どうして。」
「それはな、我が息子よ、そうしなければ人間によって滅ぼされたり、魔族の性質上、魔族同士で争うからだ。弱肉強食というやつだな。外敵から身を守るために、生まれながらに知っている。」
なるほどね。
ただ、これってもしかして、ピンチじゃね。生まれながらに無知って、魔族からしたら、無能というか異常だよな。父さんも母さんも、つらそうな顔してる。もしかして、地球のライオンみたいに、異常児を殺すなんてことしないよなあ。というか、魔神、頼むよ、最初に全部教えてくれよ!!
「だけど、安心して欲しいの。私たちが責任もって教えるから!!といっても、スキルについて話したし魔力についてくらしかないのだけれども。」
よかった、考えすぎだったみたいだ。恐らくアホの子とでも思われたのだろう。ほんとに不安になったわ。
でも、迂闊だった。まさか、そんな裏事情があったなんてなぁ。生まれながらに呼吸のやり方を知っているみたいなものだよな。生きるのに必要だから。
俺だって、突然子供に呼吸のやり方教えてって言われたら、ショックだもんな。ごめんよ、父さん、母さん。
「じゃあ、魔力について教えるわね。」
母さん曰く、魔力は特定のスキルを使ったり、魔法を使うのに使用するらしい。そして魔力は、どんな生物でも持っており、特に魔族は体内もしくは体表に魔石などの魔力の貯蓄、増幅できる器官が備わっているらしい。魔石は、色が濃かったり、サイズが大きかったりするほうが、より魔力の量が多い。
ちなみにゴブリンの魔石は、小さいし色も薄いのがほとんどらしい。それでも、個体差はあるし上位種になっていけば変わるという。
ということはつまり、"魔石"を意識しなければ、魔力を扱うことができないということか。それは盲点だった。この後、やってみよう。
魔力の増やし方は、単純な成長や進化、他の生物を倒すことによって増えていく。また、魔族は魔力をすべて失うと死ぬ。だが、なぜか魔力を限界まで使い果たし、死力を尽くし、生き残ったとき、魔力は増大する。
そう考えると、魔力の大量消費の成長チートは死ぬ可能性が高く分が悪いということだ。これは、まいったな。敵を倒そうにも、ゴブリンって最弱の部類だし......。
そういえばさっき、上位種とか話にでてきたな。まずは、そこを目指すしかなさそうだ。
「上位種になるにはどうしたらいいの?」
「それはね、魔力を増やし、進化のきっかけが必要なの。」
「きっかけ?魔力が多いだけじゃダメなの。」
「そう、戦いの中で得た経験だったり、感情の高ぶりだったり、名前をえたり、いろいろよ。」
なるほど、魔力量で進化できるなら、今頃俺は進化しててもおかしくないもんな。ゴブリンの中では魔力多いらしいし。ただ、きっかけなぁ。名前を単純につけてもらうだけじゃダメなのかな?
「そういえば、なんで、名前がきっかけになるの?」
「魔族にとって名を得るのは特別なことなの、上位の存在である、魔人や
そういえば、神と話していた時、魔人がいるって言ってたな。誰かに忠誠を誓うってのはなぁ。使いつぶされたら堪ったもんじゃないな。ブラック企業以上の地獄が待ってそう。
「あとは、多くの存在に畏怖され命名されること。あとは、膨大な魔力を持つものが自称することによって、名を得ることができる。この二つは、自分が系譜の最上位になれる。ただ、名を得るということは名を与えた側がかなり魔力を消費するの。」
なるほどなあ、そんな簡単じゃないってことか。どれくらい消費するかわからないし、安易に自分で名前つけて死にたくないな。上位存在からの名づけも、可能性は低いな。大量の魔力を使って名を授ける価値が、系譜に加える価値が、ゴブリンにあると思えない。まず、系譜がよくわからん。
「系譜ってつながり以外にどんな影響があるの?」
「んー、ごめんね。そこに関しての詳しいことは、系譜に加わらないとわからないわ。」
系譜については、名前を得てからってことかぁ。
畏怖によって、多くの存在に命名されるっていうのがあるが、これも難しい。ようは、人やほかの魔物を襲い恐怖によってあだ名をつけらるってことだろ。敵をたくさん作りかねないし、変な名前を付けられても困る。名前変えれればいいけどな。
「名前を捨てたり、変えることってできるの?」
「できるわよ、名を得るとき以上の魔力を使えばね。だから、捨てる魔族は少ないわ。名前を変えるも同じよ。」
はあ、しばらくは名無しかあ。不便だなぁ。まず、上位種に進化するにも、魔力を増やすにも、他の生物を倒すしかないか。でも、人間を殺すのはなぁ。無理っぽそう。
「ありがとう母さん。俺、進化目指してがんばるよ!!」
「ですって、あなた。」
「そうか、じゃあ、俺も頑張ないとな!!抜かされないように!!」
「抜かす?お父さんも、普通のゴブリンじゃないの?」
「普通のゴブリン......。」
あ、やべ、なんか父さん落ち込んでるよ。もしかして、進化してたの?
「父さんってまさか上位種?」
「聞くがいい我が息子よ!!私の種族はゴブリンウォーリアーだ!!」
あぁ、通りで顔怖いしガチムチなんだ。なんかうざいし、無視しておこう。
じゃあ、まさか母さんも?
「フフフ、私は普通のゴブリンよ。」
聞く前にこたえられたし。ほんとに普通のゴブリンなのかな?
「おい、なんで俺の話を聞いていない?泣くぞ?」
「へエー、ソウナンダートウサンスゴイネー。」
"シクシク"
部屋の隅っこで本当に泣いてるよ。母さん何とかしてくれ。
「あなた、しょうがないじゃない。あなたは、筋肉がついた普通のゴブリンなんだから。」
あ、とどめ刺した。父さん待って、外に泣きながらでていかないで!!
「いいの?母さん?」
「いいのよ。たまには、こういうのも面白いじゃない。」
ゴメンね父さん、いやー今日は失敗続きだな!!
よし、きりかえて魔力の鍛錬でもやってみるか。
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