第5話 頭に響く謎の声。

 

《スキル【魔族言語:ゴブリン】を取得しました。》



"ふぁー"

 ん?なんだろう。なんか、声が聞こえた気がして起きたが、父さんも母さんも寝ている。てか、まだ外は薄暗いなぁ。まあ、せっかく早起きしたし、少し早いけど、ランニングいくかぁ。


 そう、おれはもう歩けるのだ。それだけじゃなく走れるのだ!!ハッハッハッハー。ちなみに、動けるようになって最初に確認しに行ったのは、自分の姿さ!!

 

 村の水くみ場に行って、水面に映る自分の姿をみたら、かなり安心した。父さんみたいな怖い顔じゃなくて、子供らしい顔だったよ!!髪の毛は銀?というか白くて、瞳も白っぽい?感じで母さんと一緒だった。


 歩けるようになったのはうまれてから約二週間たった日のこと。あ、ちなみに今は生後一か月たったんだぞ!一か月もたつと、身長は父さんより低いが母さんと同じくらいは成長した。ただ、一か月毎日魔力の感知に挑戦してたが、何も進展はなかった。悲しい。才能ないのかな。

 

 まあ、でも、一か月たったと思うと感慨深いな。ん?そんなことより、詳細を教えろって?


===生後二週間===



 初めて立ったのは突然の出来事だった。いつものように、日課の寝返りと手足をばたつかせようとしたら、足に力が入り勢い余って、体が起き上がったのだ。

 最初はようやく、座れたっておもったんだが、なぜかまだ、自分には余力があると確信し立ち上がることに挑戦した。

 結果、俺は、壁に手をついた状態なら立てたのだ。その立った瞬間に、俺実は父さんと目があったんだけど、父さんは、俺を見てフリーズしたかと思ったら、


「我が息子ぉおおおお。」


 前にも聞いたような言葉をはっしてな、俺に抱き着こうと突進してきたんだよね。そん時の顔も、あまりに、怖くてよけたんだけど、それが正解だったみたいで、父さん壁に穴開けたんだよ。かわさなきゃ死んでたわ。


 そのうえ、穴に上半身ががはまったみたいで、俺の前には体を抜けずにもがいている、父さんのかわいそうな姿がね......。さすがに、助けてあげようと思ったら恐ろしい気配を感じたのさ。


「あなた、何やってるの?」


 母さんや、おでこに血管浮き出てるで。ミチミチ言ってるけど、大丈夫なのか?

 父さんが、いっそうもがいた。きっと壁の内側の母さんの怒気を感じ取ったのだろう。


「うがあああがががが......。違うんだ!!ママ!!」


父さんが壁の外で騒いでいる。


「何が、違うの?私には、あなたが何をしているのか理解できないのだけれども。」


「誰か、た、助けてくれ!!」


 母さんが、ゆっくりと家の外に歩いて行った。まさか、このまま放置でもするのかな?


 父さんの動きが止まった。どうやら、母さんは父さんの頭があるほうに行ったらしい。


"パシンッ、パシンパシンパシン"


 なんか、起きてるみたいだね、音がするたびに、父さんの体が揺れてるし。母さんって怒ったら怖いタイプなのかもしれない。逆らわないようにしよう。


 俺は心に固く誓った。


"ドゴンッ"


 母さんに忠誠を誓っていたその時、壁から父さんが吹っ飛んでいった。


「どうしてこんなことになったのかしら?」


 壁の向こうにいる、母さんの顔は笑っていた。あり得ない、オーラを出しながら。怖い、オトンの顔よりも。


 父さんが必死になって事情を説明すると。母さんが、こっちを向いた。


「ヒッ!!」


「私のかわいい息子、もう立てるようになって、そのうえ歩けるなんて!!言葉を話すのもきっと早いわ!!」


 一瞬おどろいたものの、こちらを向いた母さんの顔は慈愛にあふれていた。


「さあ、こちらへ、おいで。」


 母さんが、手を広げてこっちに来る。何を言っているか、わからんが、きっと抱きしめてくれるのだろう。


「あなた、壁は今日中になおすのよ。」


 父さんが全力でうなづきながら、家を出る。


 そしてその日から五日後、俺は走れるようになった。




 とまあ、これが立った日の出来事なんだが、俺に起きたことより、母さんのあの顔のほうが驚きだった。それ以来、母さんに忠誠を誓っている。


 って誰に対して教えているんだこんなこと。恥ずかしい。


 走りながら村?を回っていると、村は、中央の広場を中心にできている。そして広場のさらに中央には、小屋があり、バナナもどき、リンゴもどきの果物や、イノシシのような生物の死体。ウサギっぽい死体もある。イノシシの死体に限って言えば皮しかないが。恐らく、食糧庫なのだろう、屋根しかないし、不衛生すぎないか?


 家の数は、10戸程。やはりそんなに大きい村じゃない。かがり火もないし、普段の様子から火もないのだろう。村は周囲を森に囲まれている。よく外敵に襲われないな......。

 話すことができるようになったら、いろいろと村を改善していこう。


 あれこれ、考えているうちに、日が昇り、周囲が明るくなった。そして家に帰ると、


「お帰りなさい。今日も走ってきたのね。」


「ただいま、早く大人になりたいからね。」


「そう、あなたはいい子ねぇ。おめでとう。あなたは十分大人よ!!」


 母さんがそう言って家から出ていく。


 ん?あれ?何か違和感が。おめでとう?いつもランニングから帰ってきて、母さんに挨拶を......。


 それだ!!しゃべった!!母さんが何言ってるか分かった!!でもなんでなんだ?それにおめでとう??しかも、母さんは慌てたそぶりもなかった。


 母さんがかえってきた。手ぶらで。


「ねえ、さっき私と会話したわよね。」


「うん。それでききt「あなた起きてぇええええ。」いことがあるんだけど。」


 母さんが今度は大声で父さんを起こし始めた。

 

 なかなか起きない。


"バチンッ"

「起きてください!!あなた!!」


 今たたいてたよな?


"ガツッ、ドゴッ"

「起きて!!私たちの子供が"もう"しゃべったのよ!!」


 殴ってるけど大丈夫なのか?父さん顔が腫れてるよ。


「ふぁ~、ん?何?喋っただと!!息子よぉおおおおお!!」


 父さんが腫れた顔で突っ込んできた、ただでさえ怖い顔なのにもっと怖い。普通によけてしまった。なんか、既視感デジャヴ、前にもあったよな?


「二人とも落ち着いてくれよ、パパ...父さん、母さん。俺も驚いているんだ、何か知っているなら教えてくれ!!」


「息子よ!!もう一度、父さん、いや、パパといってくれ!!」


「パパだけずるいわ、さあ、ママよ!!」


「頼むから落ち着いてくれないか、俺も突然話せるようになって混乱しているんだから。」


 俺がそう言うと、両親共に「?」を顔に浮かべていた。


「混乱?成長しスキルを得れば、話せるようになるのはあたりまえだろう?」


 ん?スキル?


「え、あたりまえ?じゃあなぜ、二人は驚いているんだ?」


「それは、息子のお前が、生後一か月で話したからだ。お前の場合、歩くのも早かったな。普通は、今くらいになって初めて立ち上がれるくらいなんだぞ。それに、魔神さまから、言語スキルを授かるのはもっと先なのになぁ。」


「えぇ、だからあなたはすごいのよ!!せっかくだし朝ごはん食べながら話しましょう。」


 んー、俺は成長が早かったのか。それでもやはり、ゴブリンの成長は元から早いらしいな。まず、言語スキルって何だ?そもそも、スキルなんていつもらった?魔神は恐らくアイツだろう。ゴブリンにとって突然話せるようになるのはあたり前なのか?まあ、気になることは全部聞けばわかることだ。


「じゃあ、さっそくいただきましょう。」


「「「いただきます。」」」





「父さん、母さん、言語スキルってなんなんだ?」


 またも、二人はぽかんとしている。そして慌てる。


「息子よ、スキルを授かったのではないのか?」


「え?もらった記憶はないよ。父さん。どうすれば、スキルを持ってるってわかる?」


「心の中で念じれば、わかる。」


 どうやら、スキルを確認できるらしい。さっそくやってみよう。


"俺の取得スキルは?"



個体名:なし

種族 :ゴブリン

年齢 :0歳


<スキル>

【魔族言語:ゴブリン】


<称号>

【異世界からの転生者】【元人間】



 うわっ、いろんなことが頭に浮かんだ。気持ちわるいな。って、薄々思ってたけど名前ないんかい!!それに、スキルあったし。称号なんてものもあるし。



「ごめんなさい。スキルありました。でも、いつスキルなんて貰ったんだろう?」


「覚えてないのか?すべての意志あるものは、スキルを得たり、称号が付いたりすると、頭の中で《福音ふくいん》と呼ばれる世界の声が聞こえるんだが......。」


 なるほど、そういえば、朝目覚めるとき頭の中で何か声が聞こえた気がする。普通に聞き逃したのか。


「たぶん、寝起きに聞き逃しました。」


「そうか、タイミングが悪かったな?(頭の中に響くから、聞き逃すこと何てあったか?まあいいか。)」


「あなた、きっと寝起きは弱いのよ、パパと一緒で!!(成長が早かった分ちょっと抜けちゃったのかな?)」


 そういえば、称号についても聞いてみよう。いや、なぜ生後一か月で初号を得ているか怪しまれそうだな。なんとなく、称号を得るのは難しい気もするし。別の質問をしよう。


「スキルについて、もっと詳しく教えてほしい。」


 父さんと、母さんはまたまた、ポカンとしていた。


「わからないのか......?」


 ん?どういうことだ。


「え、あたりまえじゃないか!」


「そ、そうだな...スキルは......



 



 


 

 

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