成長
第3話 初めての食事。
ゴブリン転生してから、一日たった。どうやら、俺が最初に見たゴブリンは、俺の父さんだった。よ、よく見ればイケメンな気がする......ううん、嘘。野性味あふれてるよ。
父さんに抱かれたときは怖すぎて、漏らしまくった。まあ、ゴブリンとはいえ赤子だから仕方がない。何よりゴブリンの小柄な体格なのに、筋肉モリモリで、圧力を感じちゃうから。父さんのせいだ。
そして俺の母さんは......ゴブリンだった。
この世界のゴブリンは他種族を孕ませ、数を増やす、前世の物語でよく見るタイプの奴ではなかった。それだけでも安心だ。
生まれてすぐ、やさしそうに微笑んでくれる母さんの姿を見て。なぜか、安心し、眠ってしまった。どの世界でも、母の存在は安らぎを与えてくれるらしい。
母さんは美人ではないが、おっとりしているのも、一層安らぎを与えてくれるのだろう。それに、神の色はきれいな銀髪?白っぽい色だった、目の色もどっちかというと、白に近いような?そんな感じだ。
正直、生まれた最初の一日は寝て過ごしてしまった。眠気には赤子の体では勝てん。まず、赤子でできることは少ない。家の中を観察していると、天井は藁のような植物、壁は土のようなものだった。のざらしよりはましだったが、少しげんなりした。成長したら、まず住環境とか整えよう。
そんなことを考えていると。無性におなかがすいてきた。
近くに母さんは......いない。
これはやるしかないのか。
よし気合を入れて、
「グギャア、グギャア、グギャア~~~~。(おなかすいたぁ~~~。)」
泣き叫んでいるうちに、足音が聞こえてきた。しかも駆け足。扉があき、母さんが来たかと思ったが、ただでさえ怖い顔をした父さんが、眉間にしわを寄せ、近寄ってきた。こ、怖い。
「グギャア~~~~~~(ムリムリムリ)!!」
そうすると、父さんは慌てふためき
「ど、どうした!!なんで、俺が近づくとさらに大きな声で泣くんだ!?」
何言ってるかわからないが、怖い。そう思って泣き続けていると、
「お腹すいてたから泣いてたのよねえ、さらに泣いたのはあなたがが怖かったから。きっとご飯を食べさせたら泣き止みますよ。ほら、ごはんですよ~~~~。」
「え?そうなんの?」
父さんは、部屋の端っこに行きしくしく泣いていた。どうしたんだろ。
やっぱり、何言ってるのかわからなかったが、母さんが赤いバナナのような果物を口に近づけてきた。
え?これ、食べろってこと?母乳じゃないの?いや、母乳でも困るけど!!
あれこれ考え様子を見るも、母さんは、一向に手を下げない。やはり、食えってことか。
恐る恐る、咥えてみると、食べることができた。そして驚くべきことに、俺には歯があった。今のいままで、気づかなかった、人間とはやっぱ違うんだなぁ。
それに、この果物、味もそのままバナナだ美味しい。まだまだいけそうだ。
「グギャ、グギャ。」
バナナっぽい奴に向かって、まだ食べれるアピールをする。
「あら、足りなかったのかしら?たんとお食べ。他にもまだあるわよ。」
赤いバナナの他に、色は青いがリンゴの形のした果物がありそれも食べさせてもらった。あじは、甘酸っぱく個人的にはリンゴもどきのほうが好みかもしれない。
父さんがこっちをじ~っとみている。
「なんか俺も、おなかすいてきたな。ママ、そろそろ食事にしないか?外に今朝とってきた、獲物があるからそれを持ってきてくれ。」
「わかりました。準備してきますね。」
「その間、俺が息子にご飯あげてるからな!!優しい顔をしたパパがな!!」
父さんと母さんが何かを話していたが、母さんが外に出た。すると、父さんが、今にも俺を食べそうな顔をして近づいてきた。
"二ィ"
「息子よ、ナバナの実だぞぉ。ほらお食べぇ。」
なんか、よくない笑みの効果音とともに、バナナもどきを突き付けてきた。顔近いマジで怖い。てか、リンゴもどきがいい!!
「え?なんで?」
俺が、バナナもどきを突き返すと。父さんがまたも部屋の隅でしくしく泣いていた。
「息子に嫌われたぁあ......。もう終わりだ。」
そんな父さんを放置していると、母さんが何やら、肉の塊のようなものが二つ.....持ってきたんだが。しかも血が滴っている。グロイ。
母さんはその肉塊を葉っぱの上におくと、
「今日はかなりの大物を仕留めてきたんですね!!久しぶりのご馳走はやくたべましょう。」
父さんが落ち込んでいることを全く気にせず、母さんは上機嫌に何かを話し、よだれを垂らしている。まさか、食事か?生で食べるわけじゃないよな?いや、ゴブリンだしありえる......。
「あ、あぁ......。ワイルドボアが群れをはぐれて一匹でいたから、なんとか仕留めることができた。息子も生まれたし、頑張ってみた。その息子には......ハァ。」
「せっかくのご馳走なんですよ、何落ち込んでるんですか、情けない。それより、たべますよ!!」
母さんがせかし、父さんは肩をがっくりさせながら口元に肉片を運ぶ。
あぁ、やっぱり生で食べ始めた。うぇ、生臭そう。チラチラとみていると、父さんとめがあった。ううぇ......。
「せ、せっかくだ、俺が仕留めた肉を息子にも食べてもらおうかな。」
何か言って、肉片をもって近づいてきた。しかも、目がキラキラしてる。怖い顔なのに。まさかねぇ、食べさせようとしてないよねぇ。
「おいしいぞぉ~~。」
怖い顔でニヤッと笑い、肉片を俺の口元に持ってくる。怖いよ!!あ、でも、匂いがしてきた。
"クンクン"
あれ、なんかいい匂いする。しかも、血がキラキラしてておいしそうだ。
「パクッ、グギャ(うまい!!)」
「おぉおおお、息子よおいしいか!」
父さんのテンションがぶちあがったみたいだ。
それにしても、俺はどうやらゴブリンに適応してるみたいだ。でも、調理した肉も食べたいから、いずれ、そこも充実させていこう!!
さらに、食べさせてこようとする父さんはうざかったが、ありがたくいただいた。
きっと、さっきのような驚きがいまからたくさんあるのだろう。楽しみだ。
まあ、何をするにも行動範囲を広げなきゃいけないと思うがな。
まずは、早く家の外に出てみたい。ぼろぼろの家、文化レベルを見れば予想はつくが......。
というか、いつ歩けるよう、話せるようになるんだろうか。人間ならば通常3歳くらいから、しっかり会話できるようになるが......。なんせ俺はゴブリンだしね。
明日から、少しずつ鍛えていこう。
肉も食べ、腹を満たされた俺に待ち受けているのはそう、睡眠欲だ。湧き上がる欲求に身を任せ俺は、2日目を終えた。
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