第2話 どうしても、ゴブリンになるようです。

 このままじゃ終われない。こいつの話を聞いて何とかしなければ。


「何があったか詳しく聞かせてくれ、それが八つ当たりの原因なんだろ。」


「生き残るのに必死だね。わかったよ、特別におしえてあげる。......


 


 そこから聞いた話によると、コイツが管理する世界には、大まかに人族と魔族が住んでいる。

 人族は、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、などが暮らし。

 魔族はゴブリンやドラゴンなどの魔物、魔物から変異した魔人という存在がいるそうだ。他にも精霊という存在もいるらしい。本当にファンタジーなんだなぁ。

 

 そして、人族側を女神が、魔族側をコイツが管理しているという。人族と魔族はお互いの生活の為に、生きるために敵対もするし、助け合い共生したりもする。そうすることで世界のバランスを保っていた。

 

 また、バランスを調整する存在もいる、それが勇者と魔王だ。これらは複数個体存在している。絶大な力を有しているが、どちらもそれぞれの陣営が絶滅の危機に瀕しない限り力をふるうことは少ない。

 

 だが、どちらも生き物であるが故に、例外が発生してしまうことがある。

 

 そしてその例外がここ最近発生しすぎているというのだ。"人類"と"勇者"によって。

 

 まず、人がどうしようもないことで、勇者を求めるようになった。

 深刻だったのは、国家間の勢力争い。つまり戦争だ。これは勇者を保有する国が軍事力で優勢に出ることできるからだ。

 あとは、資源開拓目的。魔族の支配圏に眠る、鉱石やダンジョンを求め制圧ししはいするために。

 現地勇者もいるが、召喚勇者や転生勇者の方が扱いやすい。そりゃそうだろう、女神から呼び出されチートを貰う、かつ、誰もが残念イケメン。

 

 そう、残念なやつは扱いやすい。

 

 正義感強すぎるやつには、あの国は極悪非道だ、魔物は人類の天敵だと教え、同情を誘う。

 女にだらしない奴には、王女やメイドなど美人さえあてがえば簡単。俺もきっと引っかかるだろう。

 プライド高杉君には、褒めまくって、力を気持ちよく発揮して貰えばいい。

.......etc


 次に勇者だ、先にも言ったように、残念な中身をしているため、魔族を滅ぼしかけたり、ゲーム感覚でチート使って地形や環境を変えたり、過剰な地球の科学技術を持ち込んだり、国の政治に深く介入したり、自由にしすぎた。

 その結果、魔族も巻き込み、人族同士の世界大戦が勃発。世界の文明がかなり後退した。


 それが異世界での3000年前の出来事らしい。それを、事後対処したのが、俺をマンホールにおとしたコイツらしい。事前に対処できなかったのかと思ったが、最初は対処できていたものの、徐々に勇者が送り出されすぎて、両種族の全滅を防ぐので精一杯だったらしい。

 さらに現在に至るまで、ある程度の文明を築くのに奔走していたそうだ。


 この惨劇の原因の一つが女神にある。送り出す勇者の要望をチートという形で聞き入れ、その後の経過観察を怠ったり、人がどうして勇者を求めるのか確認しなかったり、世界大戦を起こすまで現状を理解できずにいたらしい。まさか、女神がこんながさつだと思わなかった......。コイツも苦労してたんだな、女神の尻拭いに。


 もちろん、女神はこの神に説教され、世界をあるべき姿に戻すまでの間、異世界からの呼び出しは控えられてきた。

 そのため、勇者は現地勇者しか存在しなかった。それでも、世界はバランスを保ち、両種族ともに繁栄していった。それがやはり、正しかったのだと思う。

 しかし、同時に世界は停滞しはじめた。

 

 そこで、女神が、


「最近世界がつまらないわ、異世界から勇者を呼びましょう。きっと、世界がおもしろくなるわ!」


 と言い出したそうだ。

 当然、苦労してきた神は反対した。


「勇者は確かに、新しい技術や文化をもたらすが、同時に劇薬でもある。過去を繰り返すべきじゃない!」


 女神は何も学んでいないのか、どうしてわかってくれないのか、僕がやっとの思いで、ここまで世界を育み見守ってきたのに、その世界をつまらないだと!!と激怒し、女神が変な行動をする(勇者を呼びだす)前に、勇者になりうる奴らを始末しようと、怒りのままに行動したらしい。

 

 そして、なぜか勇者は今まで、地球の日本という国の残念なイケメンのみが呼び出されきた。それを参考に、日本に降り立った神は、さっそく、その残念な奴を見つけた。


 今回のそれが、俺だった。見た目はいいが、中身はパッとしなく、おんなにだらしない。なにかあると、「また、俺何かやっちゃいました?テヘッ。」といいそうなタイプ、俺tueeeeeeって舞い上りそう。と思ったらしい。

 

 そんな偏見をもたれてたのか、心外だなぁ......。


 案の定、「きつい仕事、さらっとこなして、さらにモテる俺かっこいい。」、「女は何もしなくても寄ってくる。」、「美人とご飯。それより、お姉さんいただきます。」とでも思ってそうな言動、表情をしてた俺は、神の不興を買い、八つ当たりがてらマンホールに落とされた。


 それが、俺がマンホールに落とされた理由だ。

 

 だが、詳しい話が終わったあと、目の前の神から、とげがなくなってきたような気がする。


「正直、君に話を聞いてもらって、なんか落ち着いてきたよ。はぁ、勢いでやっちゃったから、このまま完遂するか、地球神と関係の悪化を防ぐか悩むよ。」

 

 どうやら、落ち着きを取り戻しかけている今、イケメンを虐殺し、地球の神に目を付けられるリスクと、今にも女神が勇者の呼び出しを行うのではないかという不安、怒り、で葛藤しているという。


 ここに俺は自分が生き残るチャンスを見出した。


「なあ、俺を無駄に殺したことで、どちらにせよ、地球の神に怒られんじゃないか?」


「うぅ......。」


 続けて、俺は聞く


「そういえば、転生や召喚は怒られたりしないのか?」


神は、うなだれつつ口を開いた。


「そこに関しては、問題ない。地球人の転生や召喚はいろんな世界でよくあることで、認めてくれてるから。」


 なるほど、もしかして、物語の数だけ世界があるんじゃないか?すごいな。

そんなことより、これって、俺が転生すれば丸くおさまるんじゃね?ついでに、謝罪の意味も込めてチートもらえそうじゃん!!


「なあ、俺のこと転s

「転生させるのはこの際しかたないけど、チートは認めない!!さっきの話きいてた?!」

        いさせてくれても、って最後まで言わせろよ!!」


 まあでも、転生させてくれそうだな。チートくれないのはケチだなぁ。

 あれ?神の額に青筋立ってる。なんかまずいこと言った.......?あ。


「その通り、君は忘れてたみたいだけど、僕に君の心の声は聞こえているんだよ。いいことを思いついた。そんなに転生したいなら、転生させてあげる。でも、君はやっぱり、例にもれず残念だ、愚かだ。


 だから、君を


ーーーゴブリンに転生させることにするよ。」


 人間じゃないの?よりにもよってゴブリン?魔物じゃん!!


「なんでだよ、人間に転生させてよ!!せめて魔物に転生させるなら、ほらスライムとか、ドラゴンとか、ほかにもいるじゃん。それと、ケチって言って申し訳ございません!」


 俺は全力で土下座しながらお願いしていたが、神はあきれた感じでこちらを見ている。


「忘れたの?僕は魔族を管理する神、それなら転生先も魔族に限る。それに、君はもともと人間で、手足があるのに、スライムみたいな体や、ドラゴンみたいな四足歩行できるの?できるまで待ってくれるほど魔族の環境は甘くないよ?」


 俺はなおも食い下がる、ゴブリンだけはいやだ!!


「それじゃあ、魔人っていう存在がいるんだろ。それに転生させてよ!!」


 さらにあきれた視線が強くなった。


「それって、君にチートあげるようなものじゃん。魔人になるなら自分で努力してなればいいよ。それなら僕は何も言わない。きっと時間はかかるだろうけど。」


 俺は、力なくうなだれた。だが、そもそも、記憶を消され輪廻に戻されるはずだったことを考えれば、良しとしよう。これ以上不興を買う必要はない。俺のイケメン生活も終わりかぁ。はぁ。


「転生させていただき、ありがとうございます。」


 そもそも、コイツのせいで死んだんだけどな。


「思っていることはむかつくけど、素直に礼が言えるのはいいね。あとまあ、僕の謝罪の意味を込めて、いいことを二つ教えてあげる。一つ目はね、君はゴブリンにしては多い魔力を手に入れるはずだよ。人の魂が、人より弱いゴブリンに転生するんだからね。二つ目は、魔人になる方法は複数あるからめげずにがんばって!!」


 そうか、普通のゴブリンより魔力が多いのか、それは助かる。なるべく早く魔人にならねばいけないからな。


「わかった、教えてくれて、ありがとう。」


「じゃあ、そろそろ転生してもらおうかな、僕も早く女神の監視しないといけないし。もし、世界になにかったら、よろしくね。地雷勇者が転生したり召喚されたら。」


 え、ゴブリンに転生する俺には荷が重くね?まあできることはやるか。



「ありがとう。いい、ゴブリン生を。」



 最後に神が微笑みかけてくれた気がする。マンホールに落とされたのは根に持つけど、精一杯生き残ってやる!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る