Second end Ⅱ
「管理人!?」
壊れていく魔王城に現れたのは、ジェクオルに殺されたはずの管理人。
「生きていたのか!?」
「あのときはめんどくさかったから退場しただけだよ」
そうだったのか。
いやそんなことより。
「どういうことだよ!?」
魔王城だけじゃない、何もかもが崩れていく。
空には亀裂が走る。
「どうもこうもないよ」
「君がゲームをクリアしたから、この世界は消えてなくなるのさ」
「は!?」
クリア……したから!?
「そもそもここは不安定な世界」
「僕が管理して、やっと成立しているんだよ」
「それなら、これからも……」
「やなこった」
「魔王と仲良くなってハッピーエンド……それでいいじゃないか」
「この世界はそこまでだ」
「僕は疲れた」
「そんな……」
「イヤ!」
シャロールが勢いよく管理人の前に躍り出る。
「私は佐藤とあなたがなんの話をしてるかなんて全くわかんない」
「けど!」
「佐藤と離れるのだけはイヤ!!!」
「シャロール……」
彼女の想いに涙が出そうになる。
すると、熱い想いが通じたのか管理人はおどけてこう言った。
「話術ねぇ……僕にも効果あるのかな」
「なーんちゃって、わかったよ」
わかった?
「僕もこの世界をたくましく生き抜いて、ここまでたどり着いた君達に愛着が湧いてしまった」
「完結祝いに君達の願いをなんでも三つ叶えてあげるよ」
「ホントに!?」
「なんでも?」
うまくいけば……。
「僕の気が変わらないうちに早く言ってくれ」
管理人が急かすように言う。
ええと、まずは……。
「この世界の崩壊が止まる」
「はいよ」
不快な音が鳴り止む。
そして、あちこちにできたひび割れもふさがっていく。
「これからも管理人が世界を管理してくれる」
「はいはい……」
いかにもめんどくさそうだが、了承してくれた。
最後は……どうしよう。
悩む僕にシャロールが語りかける。
「佐藤、元の世界に帰らなくていいの?」
「あ」
そういえば、それを訊いてなかったな。
「元の世界に帰れたりしないのか?」
すると、この質問に管理人は予想外の返答をした。
「そうか、知らないのか」
納得するようにうなずいている。
「なにをだ?」
「君は異世界人じゃないよ」
衝撃の事実が伝えられる。
「ええ!?」
「でも、最初……!」
確かに転移して……。
「あれはこのゲームの設定だよ」
「転移するところもゲームのイベントなの」
「その証拠に君は元の世界のことをはっきり覚えてないだろ?」
「……」
「それはそこまで設定が作られてないからだよ」
作られてない……。
「そうだったのか……」
「これでも一応知識は詰め込んどいたけどね」
知識は……。
それが勘違いの元だったのか。
ということは、僕は元の世界に関する知識を持っていたから、自分のことを異世界人だと思っていたが、僕も元からゲームの住人だったわけだ。
「どういうこと?」
シャロールは頭を抱えている。
「僕は異世界から来てないってこと」
「じゃあ……」
シャロールの顔がパッと明るくなる。
「ずっとシャロールと一緒だ!」
「わーい!」
しかし、喜ぶのもつかの間。
管理人が声をかける。
「あの〜、早くしてくれるかな」
「僕、帰りたいんだけど」
「すまん」
ええと、他には……。
「ねぇ、佐藤」
「どうやって帰るの?」
ホントだな。
「町に帰してくれ」
「あ〜、それは自分でできるからもったいないんじゃないか?」
「自分で?」
どういうことだ?
「君の能力に口出しはもうしないから、なんでもできるよ」
「そうか……」
つまり、僕のスキルで帰れってことか。
「今のは聞かなかったことにしてあげる」
「で、最後は?」
もう思いつかないな……。
ぶっちゃけ別になんでもいい。
「シャロール、好きなこと言ってくれ」
じっと話を聞いていたシャロールを見て、語りかける。
シャロールは再び笑顔になった。
なにか叶えたい願いが……。
「とっても豪華な結婚式場ー!」
「……」
そうきたか……。
「あはは、わかったよ」
「お幸せに」
それだけ告げると、管理人は消えてしまった。
――――――――――――――――――――
なにもお城でやらなくってもよかったのに。
知り合いなんてほとんどいないんだしさ。
寂しいのは嫌だからってシャロールが誰でも参加できるようにしたから、お祭り騒ぎになっちゃったし……。
ま、にぎやかだからいっか。
「佐藤! 聞いてる!?」
「へ?」
「あなたは誓いますか?」
若干イラついてる牧師さんが僕を睨んでいる。
「あ、すみません!」
「誓います!!!」
=The end=
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