Second end Ⅰ
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「お前が勇者佐藤だな……」
気づくと、チュートリアルのときと同じような広い部屋にいた。そして、奥には玉座に座る人影が見える。
はっきりとした容姿はわからない。
なぜなら、真っ黒なオーラで覆われているから。
しかし、直感でわかる。
「お前が魔王だな……!」
「そうだ、私が魔王だ」
こいつを倒せば、全てが終わる。
「おりゃー!」
僕は魔王に向かって、走り出す。
魔王も全く避ける気がないようで、身じろぎ一つしない。
僕をナメてるのか?
そんなことは、この際どうだっていい。
こいつを倒せるなら……。
「そんな攻撃……」
魔王がなにかつぶやいて、片手を振り上げる。
すると、黒いバリアが魔王の前に展開された。
「うおっ!」
激突して、コケそうになる。
「そんなものか、勇者よ」
「なんだと!?」
こんなもの……この剣で……!
ガァン!
僕は剣にありったけの力を込めて、バリアにぶつける。
バリアと剣の接点で激しい火花が散る。
「いっけー!!!」
その瞬間、バリアが割れた。
それと同時に剣から黒いオーラがにじみ出て、僕を包む。
なんだこれ?
わからない。
けど、強くなった気がする。
「これでどうだー!」
「ふんっ!」
魔王は再びバリアを出したが、そんなものはもう僕には効かない。
粉々にぶち破り、魔王に近づく。
「勇者、貴様……!」
ふふふ、これで終わりだ。
「待て、止まれ!」
こいつを殺して、シャロールと……。
「ダメー!」
聞き覚えのある声が聞こえて、魔王の眼前で僕の手が止まってしまった。
どうして再びシャロールの声が?
幻聴にしては、はっきりと……。
「まずは話し合いって言ってるでしょ!」
誰かに肩を掴まれた。
仕方なく後ろを向くと……。
「シャロール!?」
「どうして……ここに……?」
「そんなことより!」
「なんで仲良くなろうとしないの!?」
なんでって……。
「だって……魔王だぜ?」
「そういう決めつけで、モンスターがかわいそうな目にあってたの忘れたの!?」
確かに……。
シャロールの言うとおりだ。
僕は落ち着きを取り戻す。
すると、先ほどまで僕を包んでいた黒いオーラが消え去った。
これもシャロールの話術のおかげか?
「魔王さん、友達になりましょ!」
シャロールが魔王に歩み寄り、手を差し出す。
そんなこと聞いてくれるか……?
「むっ、私と友達になってくれるのか?」
おっ?
案外イケるか?
「うんっ!」
「だが、そこの勇者は……」
戸惑い気味に魔王が僕を指差す。
「ほら、佐藤!」
「仲直りして!」
「あ、ああ」
「ごめんな、魔王」
「うむ」
僕は魔王と握手する。
<コデヒューズとのフレンド登録が完了しました>
「ええ!?」
「わーい!」
シャロールは無邪気に喜んでいるが、そんな場合じゃないだろ……。
「人間とは……邪悪な種族だと聞いておったが違うのか?」
魔王はまだ困惑している。
「う〜ん」
「みんながそうってわけじゃないな」
一部の人間は、モンスターを倒すことになんの躊躇もないからそう見えるだろう。
僕も最初は……というか今も魔王を倒そうとしていた悪い人間だ。
「私は違うよ!」
戦わずして平和へ導くシャロールこそが、真の勇者だったりして。
「そうか……」
「これからよろしくな、勇者と親切なネコミミ娘よ」
「佐藤だ」
「シャロールだよ!」
「佐藤とシャロール……」
見えないけれど、魔王が笑ったような気がする。
僕達の冒険はこうして幕を……。
ザザザ……ガガーガーザリザリ……。
「な、なんだ!?」
ついさっき洞窟で聞いたものよりも何倍も大きな音が聞こえた。
空間全体を揺らすような音。
そんな中で、声が聞こえる。
「残念だけど、ここまでだよ」
この声は……。
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