Fourth volcano
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「なんだか、今朝はまた熱くなってきたわね〜」
「ボルカノン火山が俺を呼んでるんだよ!」
「お前も呼ばれてるんだろ!?」
「そうねぇ、あなた達、火山に行って何してるの?」
二人が僕達を見る。
まずい、バレる。
「いや〜、いろんなモンスターがいるんだなーって思ってました」
間違ってはいない。
「あそこには、ファイウルが封印されてるって……」
ギクッ。
「そんなもん、勇者がいるから大丈夫だろ!!」
「もう、あなたったら!」
「とにかく二人とも気をつけるのよ」
「「はーい!」」
――――――――――――――――――――
「おーい!」
「遊びに来たよー!」
おかしいな……。
今日は返事がない。
「もうかくれんぼ始まってるのー!?」
そうだといいんだが……。
――――――――――――――――――――
これ以上は進めないよな。
もうすぐ崖が……。
「うう……」
ん?
どこからか唸り声が聞こえる……。
「こっちだよ、佐藤!」
シャロールはまだ行ったことのない分かれ道に入っていった。
ネコミミを頼りにファイウルを探す。
――――――――――――――――――――
「見つけた!」
やっとのことで、ファイウルを見つける。
しかし、どうして床に寝転がっているんだ?
「おい、大丈夫か?」
僕がファイウルの体に触ると、なにか妙な手触りが。
昨日触ったときは、こんなにベチャベチャしてなかったよな?
不審に思いながらよく見ると……。
「血だ!」
ファイウルの体がもとから赤かったのでなかなか気づかなかったが、全身から血を流している。
「シャロール! 気をつけろよ!」
「うん……!」
ここでなにかが起きている……。
僕があたりを警戒していると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「クックック、久しぶりだな、佐藤」
「誰だ!?」
僕はシャロールを片手で抱き寄せる。
もしものときのために。
「なんだ、忘れたのか?」
この声、どこかで……。
「我はジェクオルだ」
そうだ……!
「ジェクオルか!」
今日はいつものモヤすら見えない。
「思い出してくれたようでよかったよ」
「お前がなぜここに!?」
こいつはケスカロール近くの洞窟にいたはず。
「ふん、貴様がそれを訊くとはな」
どういうことだ?
「我は憎き勇者にたぶらかされた同胞を泣く泣く討ちに来たのだよ」
同胞? 討ちに来た?
ってことは……。
「お前がやったのか!」
「そうなの!?」
「ふむ、我が悪者のような言い方はやめたまえ」
まったく何も思ってないかのような声がしゃくにさわる。
「ファイウルを……こんなにして……」
「我が憎いか?」
「ああ!!」
当然だ……!
「その原因を作ったのは貴様らだというのにか?」
「え……?」
「どういうことだ……?」
ジェクオルの信じがたい言葉に僕達は絶句した。
「ファイウルにはまだ魔王幹部は早いと思っていた」
「だから、我は愛しのファイウルを悪しき勇者から守るためにここを出ないようにかねてから言いつけていたのだよ」
「「……」」
「しかし、先日ここに踏み入る輩が現れた」
「そいつらはファイウルを騙し、自らの手駒にしようと画策し……」
「違うよ!!」
ジェクオルを遮り、シャロールが叫ぶ。
「騙してなんかないもん!」
「シャロールの言うとおりだ」
僕達はファイウルとただ普通に話していただけだ。
「どちらにせよ、同じことよ」
「結果として、ファイウルは人間との信頼関係を築いてしまった」
「ダメ……なのか?」
「我が主の魔王様が望むのは、人類滅亡」
「ろくに人間を襲わないモンスターにも苛立っておられるのに、魔王幹部ともあろう者がよりによって勇者と手を組むなど言語道断よ」
仲良くなれてよかった、なんてのんきなことを言っている場合じゃなかったんだな。
やってはいけないことだったんだ。
「無念だが、裏切り者としてファイウルは始末されることになった」
ここまで淡々と言葉を紡ぐジェクオルに僕は問いかける。
「お前は……それでいいのかよ」
「うん?」
「仲間じゃないのかよ!?」
「魔王様の命令だ、仕方ない」
そんな簡単に……。
「佐藤……シャロール……」
傍らから消え入りそうな声が聞こえた。
「「ファイウル!?」」
「ふむ、やはりまだ生きているようだな」
「だが、時間の問題だ。直に死ぬ」
「ファイウルー!!」
シャロールがかがんで、ファイウルに手をかける。
「それではさらばだ」
「あ、てめぇ!」
ジェクオルの声がしなくなる。
あいつ、帰りやがったな。
「ファイウル……ごめんね……」
「私のせいで……」
涙をこぼしながら、シャロールはファイウルを優しくなでている。
「泣かないで……シャロールちゃん……」
「僕が悪いんだよ……」
「そんなごど……ないよ……!」
「ちょっとしか……遊べなかったけど……楽しかったよ……」
「お前……」
言葉に詰まる。
「二人にこれ……受け取ってほしいな……」
ファイウルが震えながら、何かを取り出した。
「これは……!」
「僕達の……友情の証だよ……」
昨日拾った宝石がペンダントになっている。
「こんなもの……作らなくたって……」
「私達……友達なのに……」
「ありがとう……」
感謝の言葉を残し、ファイウルの体は跡形もなく消えてしまった。
「「ファイウルー!!!」」
――――――――――――――――――――
「もう日も暮れかけてる……」
「帰ろう、シャロール……」
いつまでもここで泣き続けるわけにはいかない。
「いや……」
僕が立ち上がり、手を差し伸べてもシャロールは座り込んで動こうとしない。
「馬鹿なこと言うなって……」
「私もファイウルと一緒に……」
「なんだって……?」
まさか……。
「私もここで……」
「バカヤロー!!!」
「お前は……お前は……!!!」
「佐藤……?」
「お前がいなくなったらどうなると思ってるんだ!」
「どうなる……?」
「なんでわかんねーんだよ!」
「キャイアさんやヒュイさん、なにより……なにより……」
「……」
「僕はどうしたらいいんだよ!!!!」
いけないとわかっていたが、感情に任せたまま叫んでしまった。
「ごめん……」
「まずは……帰ろう……」
――――――――――――――――――――
「遅くなりました……」
やっとのことで、帰りついた。
「あなた達……なにかあったのね」
おばさんは何かを察したように言ってくれた。
しかし、それを語るほどまだ僕は元気ではなかった。
「……」
「辛かったら、帰ってもいいのよ」
帰る?
「佐藤! もう帰るのか!!?」
「あなたは黙ってて」
「シャロールちゃんはどうしたいの?」
僕はうつむいたままのシャロールをじっと見つめる。
「お父さんに……会いたい……」
「わかったわ」
「明日の馬車、手配してあげるわ」
馬車を?
なんて優しい人なんだ……。
「ありがとうございます」
僕は放心しているシャロールの代わりに答えた。
――――――――――――――――――――
「う〜〜ん」
なんだ?
深夜に目が覚めた。
シャロールの唸り声……?
「こわいよぉ……!」
「どうしたらいいの……!」
苦悶に満ちた顔でうなされている。
今日のことか、それとも昔のことか。
辛い思い出が蘇ってしまったのだろう。
「大丈夫……大丈夫……」
「僕がついてるからな」
そうつぶやいて、シャロールを抱きしめる。
「佐藤……?」
「お前は僕が守ってやるからな」
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