Second volcano

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「今日はなにしよっか?」


 う〜ん。

 特にこれといってしたいことはないな。

 ギルドに行って……。

 いや、アレが気になるな。


「昨日のところに行ってみようぜ」


「あの……また来るって言ったから?」


「うん、まあそうだな」


 魔王幹部だから、いつ敵になるかはわからないからできるだけ情報を集めたい。


――――――――――――――――――――


「おわ!」


「どうしたの、佐藤?」


「ほら、そこ……」

「ヤバそうなスライムが……」


 道の端に燃えるような赤色のスライムがいる。

 ダークスライムのときみたいに油断してたら殺されるから……。


「ダメっ! どうして剣出すの!」


 剣を持った右手をシャロールに掴まれる。


「どうしてって……」


 スライムは敵だから……。


「まずは話し合いが大事なんだよ!」


 シャロールは臆せずスライムに駆け寄っていく。


「おい! 危ないって!」


 慌ててシャロールを追いかける。


「アチッ!」


 突如として、スライムが火を吹いた。

 そいつの近くにいたシャロールは火を浴びたように見える。


「まずは離れるぞ!」


 僕はシャロールの服を引っ張って、スライムが見えなくなるところまで移動した。


「大丈夫か?」


「痛い……」


 ギュッと口を結んで、苦しそうだ。


「見せてみろ」


「……」


 シャロールは無言で右手を差し出す。


「これは……」


 手が赤く腫れている。


「やけどだな……」


 やっぱりスライムに攻撃されたか。


「だから、危ないって……」


「……ごめんなしゃい」


 震える声でシャロールは謝った。

 ふと顔を見ると、今にも泣きそうだ。


「僕こそ、ごめん……」


 一番辛いのはシャロールなのに。

 ついお説教しそうになってしまった。


「どうしよう……」


 やけどだよな。


 冷水……なんてここにはない。

 なにかやけど直しみたいなものが……。


 そういえば、ホロソーでいろんな薬をもらったよね。

 あの中にやけど直しがあったりして。


 やけど直し……出てこい!


 すると、手の中になにかジャムの瓶みたいなものが現れた。


 あれ?

 回復ポーションやポイズンポーションと違って、液体じゃないの?


 いや、やけどって外傷……って言うんだっけ。

 だから、飲まないんだろうな。


 フタを開けると、クリームが入っている。

 これを塗ればいいのかな。


「ちょっと我慢しろよ〜」


 僕はシャロールの手に優しくクリームを塗ってあげる。


「ん……! 痛い……!」


 そんなに辛そうな顔をされると、こっちもやりにくい……。


「よし! これでよくなるかな?」


 しばらくすると、シャロールの顔に明るさが戻る。


「うん、痛くなくなってきた!」


「よかった……」


 けど。


「辛いんなら、帰ってもいいぞ?」


 心配だ……。


「ううん、行こっ!」


「あっ、シャロール!」


 見失わないように急いでついていく。


――――――――――――――――――――


「またモンスターの鳴き声を出してみてよ」


 どうやらまた開けなきゃいけないみたい。


「わかった!」

「ポヨポヨ!」


 ポヨポヨってなんの鳴き声だっけ。


 ゴゴゴゴゴゴ。


「開いたよ!」


――――――――――――――――――――


「おーい!」


 名前なんだっけ?


「ジェクオルー!」


「それはお兄ちゃんの名前だよ!」


 昨日と同様、洞窟の奥から声が聞こえた。


「わ! 君達、また来てくれたの!?」


 モヤが話してる……。

 魔王幹部ってのは、みんなモヤなんだよな。


「遊びに来てくれてありがとう!」


「どういたしまして!」


「ねぇねぇ、何して遊ぶ?」


「う〜ん、君は何がしたいんだ?」


「……僕、初めて友達ができたからみんなでやる遊びってわからないんだ」


 そうなのか……。

 昨日も一人ぼっちって言ってたもんな。


「私ね、かくれんぼしたい!」


「お、いいな」


――――――――――――――――――――


「おーい!」


 思い出した。

 あいつの名前はファイウルだ。


「ファイウルー!」


 一向に見つからないな。

 シャロールは岩陰から見えるしっぽで簡単に見つけることができたんだが……。


「もう降参ー! 出てきてよー!」


 このまま見つからないと……。


「帰っちゃうぞー!!」


 僕がそう脅すと、だいぶ遠くから声が聞こえた。


「こっちだよー!」


「この、さらに奥か……?」


「うん、たぶんそう」


 シャロールがネコミミをピコピコ動かす。


――――――――――――――――――――


 ホ、ホントにこんなとこにいるのか?

 暑くてクラクラしてくる。

 足を踏みしめ、こけないように気をつける。


「うわっ!」


「どうし……うわーっ!」


 突然道が途切れて、崖になっている。

 その下には、真っ赤なマグマがグツグツと煮えたぎっている。

 落ちてしまったら、死んでしまう。

 僕は死んでもいいけど、シャロールは守らなきゃ。


「お〜い! ここだよ〜!」


 そんな声が真下から聞こえた。

 おそるおそるはるか下のマグマの中を覗いてみると、そこからなにかが飛び出してきた。


「えへへ〜、僕強いでしょ?」


 綿あめのようなモフモフの体のこいつが……ファイウルの正体なのか?


「僕の体と同じ色だったから難しかったかな?」


 確かにファイウルは真っ赤だ。

 さっきのスライム同様に。

 だが……。


「あんなところにいたら見つけられないよー!」


「そうそう」


 色とかそういう問題じゃない。


「え、そうなの!?」

「ごめんー!」


 なんだ、こいつ素直でいいやつなんじゃないか?


「ここ、暑いから早く向こう行こっ!」


 シャロールは出口に向かう。

 僕もついてい……こうとしたんだが。


「どうした、ファイウル?」


 立ち止まって。


「君達は、暑いの嫌?」


 思いの外神妙にファイウルは尋ねてきた。


「う〜ん……暑いと元気がなくなっちゃうから嫌かな」


 でも、ここは火山なんだから仕方ない。


「そうなんだ……」

「それじゃあ……」


 突然ファイウルの体が光りだした。

 何をしてるんだ?


「うん、これでいいかな?」


 いいかなってどういう……。


「あれ? 少し涼しくなった?」


「うん♪ ちょっと緩めてみたの」


 緩めた?


「お兄ちゃんに怒られちゃうかもしれないけど……君達はこの方がいいでしょ?」


 この方がいいって気温のことか?


「……そうだな」


 これくらいの暑さならギリギリ耐えられる。


「早く続きやろっ!」


 僕はファイウルに押されて、シャロールを探しに行く。


――――――――――――――――――――


「ふふふ、とっても楽しかったね」


「うん、そうだな」


 この世界に来てからは忙しくてこんなに遊んだことはなかったから、童心に帰れて楽しかった。


「また来てね!」


 一日中遊んだ僕達は入り口で手を振るファイウルと別れた。


「もちろん!」


「わーい!」


――――――――――――――――――――


「今日は前みたいに涼しかったわね」


「おう、そうだな!」


 夕食の時、そんな話になった。


「火山が噴火してからは気温が上がる一方でしたからね~」


「俺はあれくらい暑いほうが気持ちいがな!」

「そうだよな、佐藤!!!」


「あー、ははは……」


 暑いに気持ちいいとか……ある?


「今くらいがちょうどいいわよね、シャロールちゃん」


「う~ん、そうですね」


 てか、ボルカノンを涼しくしないとワイルドウルフに怒られるんでしょ?

 じゃあ、今のままがいいな。


――――――――――――――――――――


「明日は何をしよっかな~」


「洞窟の外に出るのもいいんじゃないか?」


「そうだね!」


「ただ、今日のスライムみたいに危険なモンスターもいるんだから気を付けるんだぞ」


「はーい」


 あ、それで思い出した。


「今日やけどしたとこ見せてくれよ」


「うん……」


 僕はシャロールが出した手を両手で慎重になでる。


「跡もないし、痛くないんだよな?」


「全然」


 笑顔で答えるシャロールに安心する。


「よかった」


 そのままなで続けていると、なぜか胸が苦しくなってきた。


「シャロールに……なにかあったら……僕……」


 おかしいな……。

 どうして涙が溢れてくるんだ?


「わ、わ、わ!」

「佐藤、泣かないで!」


「もう危険なことはしないでくれ……」


 シャロールの苦しむ姿は見たくない。


「わかったから! 涙拭いて!」


 僕はシャロールに慰められながら眠りにつく。

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