Volcano (火山)
First volcano
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「なあ、シャロール」
僕はボルカノンに向かう馬車の中で、シャロールに話しかける。
「なあに、佐藤?」
「ボルカノンに着いたら、火山に行ってみないか?」
「どうして?」
「なんかボルカノンの火山が関係してると思うんだよね」
「なにと?」
なにとって……。
シャロール、もう忘れたのか?
「ボルカノンが暑くなったのと」
「ふ〜ん」
「パッションソードも火山と関係してたし……」
「ボルカノンの気温上昇も関係してたりして」
「そうかもね」
シャロールは興味なさげに答えた。
どうしてこんなにそっけないの?
「一緒に来てくれるか?」
「うん……」
やはりシャロールはどこか上の空だ。
どうしてだろう。
不思議に思ったが、ここで会話は終わってしまったので聞けずじまいになった。
――――――――――――――――――――
「またお世話になります!」
一旦ガドーさんの家に荷物を下ろしに立ち寄って、あいさつをする。
「またしごいてやるよ!」
「覚悟しな!」
「ははは……」
もっと強くなるかもな〜……。
ただ、その前に……。
「ごめんなさい!」
「ちょっと今からボルカノン火山にいってきます!」
「どうして火山に行く!」
「用事がありまして……」
「用事ってなんだ!」
このままだと、日が暮れちゃう。
「後で話しまーす!」
僕はシャロールの手を引っ張って、走り出した。
――――――――――――――――――――
「うへー……暑いね……」
「もうだいぶ火山に近づいたからね」
狼が場所を変えるのもわかる暑さだ。
「わ! これきれいだよ!」
後ろを歩いているシャロールが突然こんなことを言った。
「ん?」
僕は気になったので、シャロールの方を……。
純白のパンツが……!
「きゃ!」
見えた気がする。
「さ、ささ、佐藤!?」
シャロールがスカートを押さえ、顔を真っ赤にしてしゃがみこんでいる。
「こ、この石!! 赤くてきれいだね!」
シャロールの顔も同じくらい赤いよ。
……なんて言えない。
「これ、ルビーみたいなものかな?」
地面には赤く輝く小さな石が。
火山地帯だから、宝石もあるのかも。
「きれいだし、持って帰るか」
「うん!」
――――――――――――――――――――
「この先行き止まり?」
そんな看板が建っている。
この火山、整備された道があったので登ってみたがここまでのようだ。
「でもでも!」
「あの洞窟気にならない?」
「うん……」
行き止まりとは言うものの、看板の後ろには洞窟がある。
「行ってみよ!」
なんか気になるし……。
「行くか!」
「わーい!」
「でも、気をつけるんだぞ」
僕は念の為シャロールの手を握る。
洞窟には嫌な思い出しかない。
また、あんなことになったら……。
「あ、佐藤……痛いよ……」
シャロールが遠慮がちにこう言った。
「え? あ、ああ、ごめん!」
回想するうちに、つい手に力を込めてしまっていたようだ。
「ホント、ごめんね……」
「いいよ!」
「それより早く行こっ!」
――――――――――――――――――――
「暑い……!」
火山の中心に近づいてるからか。
それとも洞窟という密閉空間だからか。
暑くてたまらない。
「あれ?」
「どうした、シャロール?」
「やっぱり行き止まりみたいだよ」
「ホントだな……」
道が途切れて、岩壁しかない。
「……どうする?」
「帰ろっか」
う〜ん、でもなにか引っかかる。
そうだ!
「シャロール、ちょっとモンスターの鳴き声言ってみてよ」
「え?」
「早く!」
シャロールは困惑しながらも声を絞り出す。
「うう……」
「ガオー!」
ゴゴゴゴゴゴ。
シャロールが叫ぶと、壁が動いて道が現れた。
「……やっぱりそうか」
「あー! あそこと同じなんだ!」
ジェクオルのすみかがそうだったらしいからな。
ということは、この奥にいるのは?
「シャロール、手を離すなよ」
小さな手をきつく握る。
「うん……!」
――――――――――――――――――――
「あ、暑すぎる……」
ここはまともな人間が来るところじゃないな。
「ふぇ〜、目の前がゆらゆらしてる〜」
大丈夫かな、シャロール。
熱中症とか怖いからな。
「そろそろ帰……」
「あれれ〜? 君達、誰?」
洞窟の奥からそんな声が聞こえた。
「誰だ!?」
「僕の名前はファイウル」
モヤが飛んでくる。
「魔王幹部の一員なんだ♪」
魔王幹部!?
まずい、逃げなくては。
「君達の名前を教えてよ♪」
ちょうどいい、時間稼ぎになる。
僕達は後ずさりを始める。
「僕は佐藤」
「私はシャロール」
さて、こいつは何をする気だ?
依然として警戒態勢を維持する。
「僕、ずっとここで一人ぼっちなんだ……」
姿かたちは見えないが、なんだか声色が寂しそうだな。
「友達になってくれないかい?」
「友達……?」
思わぬ問いかけに戸惑う。
だが、こういうときは従うに越したことはない。
「わかった。僕達は友達だ」
「な、シャロール」
「う、うん……」
シャロールも流れに乗って、うなずいてくれた。
「わー! ありがとうー!」
「それじゃあ、今日は……」
「すまん! ちょっと用事があるんだ!」
「帰っていいか?」
まだこいつが安全だとは言えない。
「……そっか」
再び声が寂しそうになった。
しかし、次のシャロールの一言で三度変わる。
「また来るね!」
「また……来る?」
「来てくれるかな!?」
すごく嬉しそうだ。
「ああ、必ず来るよ!」
そう言い残して、僕達は出口へと一目散に走った。
――――――――――――――――――――
「今日はなにしてきたんだ、お前ら!」
帰ると、ガドーさんは開口一番こう言った。
「ボルカノン火山を散歩してました」
「な、シャロール」
「う、うん」
流石にあんなことがあったとは言えない。
「まあいい、飯だ!」
――――――――――――――――――――
「う〜ん」
結局アイツは何だったんだ?
友達?
魔王幹部がか?
わからん……。
とりあえず、寝るか。
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