Third passion Ⅱ
「……」
え……?
ファイヤーマンはなんで黙ってるの?
恥ずかしいじゃん……。
「あの……」
「俺は今猛烈に感動している……!」
「へ?」
「お前の熱意……伝わったぞ!」
よく見ると、マスクから涙が溢れている。
なんかうまくいったみたい。
「第一試練は合格だ!」
よかった……。
これでシャロールを……。
「次は第ニ試練だ!」
まだあるの!?
まあ、第一って数字が付いてるから続きがあってもおかしくはないか。
「俺に勝て!」
「……は?」
「真剣勝負だー!!!」
ファイヤーマンはどこからともなく剣を取り出して、斬りかかってきた。
不意打ちしてきて、なにが真剣勝負だ!
ガキィ!
僕も剣を出して、受け止める。
「クソっ!」
「やるじゃねぇか!」
「だが、そんなものか!?」
必死に力を込めているはずなのに、僕の剣は徐々に押されていく。
なんて馬鹿力だ……!
あのサソリより強いぞ……!
「そんなことじゃ、シャロールは守れんぞ?」
「なんだっ……うわ!」
僕はついにファイヤーマンに弾き飛ばされて、尻もちをついた。
「まだまだぁ!」
早く起き上がらないと……!
「オラァ!」
ガキッ!
間一髪のところで振り下ろされた剣を再び受け止めた。
しかし、地面に座ったままじゃうまく力が出ない。
このまま押し切られる……!
「てめぇは恋人が窮地に陥ってるときもこうやって地に這いつくばることしかできねぇ腰抜けだ!」
「なんだと!?」
「とっととくたばったらどうだ!?」
どんどん押されていく。
もうすぐ背中が地面に着いてしまう。
「シャロールは俺がかわいがってやるから、安心して死ぬんだな!!!」
シャロールを……?
こいつが……?
「お前なんかに……!」
「ああん?」
「僕のシャロールを渡してたまるかーーー!!!」
僕は最後の力を振り絞り、ファイヤーマンの剣を押し返す。
「フッ、いい根性だ」
「だが、俺もまだまだ現役よ!」
途中まで押し返していた剣が止まった。
「なに!?」
ファイヤーマンの力は底なしなのか!?
まだこんな力が……!
「てめぇの負けだ!」
「あの世で後悔するんだな!」
結局最後はシャロールを守れずに終わるのかよ!
僕は……!
なんて情けない男なんだ……!
「クソっーーーー!!!!」
僕が魂の叫びを上げたその瞬間、突然剣が光りだした。
「なんだ!?」
やがて光が止むと、手の中には真紅の剣が収まっていた。
「こ、これは……うおっ!」
ファイヤーマンが突然力を緩めたので、僕は前に倒れた。
まずい、斬られる……!
「そいつは伝説の剣パッションソードだ」
ファイヤーマンは僕を斬らずに、解説を始めた。
「どうやらお前の熱い情熱を見込んで、ボルカノン火山が力を貸してくれたようだな」
火山が?
「それじゃあ、またな」
「あ、ちょっ!」
ファイヤーマンはどこかに行ってしまった。
一体彼の目的はなんだったんだ?
――――――――――――――――――――
「ただいま……帰りました……」
ファイヤーマンが返してくれなかったシャロールを必死に探したが、日没までに見つけることができなかった。
なんで教えてくれなかったんだよ。
僕、合格したんじゃないのか?
とりあえず、明日になったら……。
「あ、佐藤! おかえりー!」
「え?」
今、シャロールの声が……。
「どうしてこんなに遅くなるまで帰ってこなかったの!」
シャロールが腰に手を当て、頬を膨らませて怒っている。
「お前を……探してたんだよ〜〜〜〜!」
「え! 佐藤!?」
僕は泣きながら、やっと出会えたシャロールを力の限り抱きしめる。
「苦しいよ〜!」
シャロールが僕の腕の中でジタバタする。
「絶対に離さないからな……」
「もう! ご飯抜きにするよ!」
「それで済むなら安いもんだよ……」
「佐藤ったら!」
シャロールは呆れ顔だ。
「大好きだよ、シャロール」
「……」
シャロールは何も言わず、頬を赤く染めた。
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