Second passion

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「佐藤、朝ごはんできたって!」


 ん?


「早くしないと怒られちゃうよ」


「う〜ん、わかった……」


 シャロールが僕を起こすなんて珍しい。


「てめぇ! 早く起きやがれ!」


「ヒィ……!」


 ガドーさんの声がする。


 僕は急いでご飯を食べに向かう。


――――――――――――――――――――


「今日は俺と模擬戦だ!」


 模擬戦?

 道場に入るとガドーさんが……。


「隙あり!」


 ガドーさんが突然竹刀を振る。


 バシィ!


「痛っ!」


 そんな……不意打ちありかよ!


「俺から一本でも取ることができれば合格だ!」


 取れるかな……?

 ていうか、合格って?


「さもなきゃ、飯抜きだ!」


 あ、あんまりだ〜!


――――――――――――――――――――


「お昼よ〜」


 もうそんな時間か……。

 結局一本も取れなかった……。


「佐藤〜ご飯だよ〜」


「わかっ……」


 ビュン!


「うぉっ!」


 僕はまたしても不意打ちをもらうところだったが、すんでのところで避けた。


「少しは強くなったみてぇだな」


「はい……!」


 ガドーさんが出す殺気をなんとなく感じることができる……気がする。


「だが、てめぇに食わせる飯はねぇ!」


「え!」


 まだ一本取ってないから……。


「ここで素振りでもしてろ!」


 バーン!


 この……道場? の扉を思いっきり閉めて、ガドーさんは去っていった。


「お腹減った……」


 実は冗談でご飯もらえたりして……?


 いや、今顔を出すと何されるかわかったもんじゃない。

 あの人はそういう人だ。


 でも、お腹……。


「そうだ、抜け出すか……」


 僕は入口のドアを見る。


 大丈夫、すぐ帰ってくればいい。


――――――――――――――――――――


 ヤバいヤバい!


 ガドーさん、絶対もう昼飯から戻ってきてるよ!

 バレてるよ!


 だってギルドの食堂でラーメン頼んだら、めっちゃ熱かったんだもん。

 僕、猫舌だからさ〜。


 なんて言ってる場合じゃない!


 なんて謝ろう。


 とりあえず、もう着いたから入ってすぐに謝ろう。

 そんなことを考えながら僕はドアを開けた。


「勝手に抜け出して……」


「てめぇ、どこ行ってた!」


 やっぱり怒ってる!


「あの……お昼……」


「大変なことになったんだぞ!」


「修行をサボるなんて大変な……」


「違う!!!」


「へ?」


「これを見ろ!」


 ガドーさんが何か汚い字が書かれた紙を僕に見せた。

 そこにはこう書かれている。


「勇者佐藤!」

「お前の愛人シャロールはいただいた!」

「返してほしければ、明日の昼にボルカノン火山の麓で待つ!」


「え!?」


 シャロールが……?

 返して……?


「これ、なんですか!?」


「ここにあった!」


 ガドーさんは床を指差す。


 あれ?

 僕がここを出たときはそんなもの見なかったけど……?

 誰が置いていったんだ?


 ていうか……。


「シャロールはご飯を食べてたんじゃないんですか!?」


「そうだ」

「しかし、お前が心配だから見てくると言っていた」


「……」


 シャロール……。

 心配してくれてたんだ……。

 ありがとう……。


「だが、いつまで待っても戻ってこないから来てみると、シャロールはいなくなっていた」

「そして、代わりにこの紙だ」


 一体シャロールに何があったんだ……!


「どうする?」


 ガドーさんが僕に選択を迫る。


 どうするもこうするもない。


「助けます!」


「よく言った!!」


「え?」


 ガドーさんはなぜか笑顔だ。

 なんでこの非常事態にこんなに楽しそうなんだ?


「それでこそ男だ!」

「がんばれよ!」


 肩を強く叩かれる。


「は、はい!」


 なにか……違和感が……。


「そのためにも今から修行だ!」


 やっぱり修行するんだ……!


――――――――――――――――――――


「シャロール……」


 シャロールのいない夜は寂しくてたまらない。


 今までだってこんなことはあった。

 なのに、僕はまたシャロールを守れなかった……。


「クソ!」


 僕はつい気持ちを抑えきれずに叫んだ。


「おい!」


 すると、ガドーさんに声をかけられた。

 まずい。

 こんな夜中に大きな声出しちゃったから、怒られる……。


「お前もそんなに熱くなるんだな」 


「え?」


「明日はもっと熱くなれよ」


 これは……励まし?


「はい!」


「いい返事だ」


 僕はシャロール救出へと燃える気持ちのまま眠りについた。

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