Eighth statue
=Now Loading=
「うーん……」
もう朝か?
そろそろ起きるか……。
って、まだ僕にくっついてるの!?
困った……どうする?
「シャロール……」
「むにゃむにゃ……」
起きない……。
「起きてくれ……」
「……………………」
まだ起きない……。
「シャロール!」
「……むにゃ?」
起きてくれたかな?
「起きたんなら、離れてくれ」
「…………」
あ、あれ?
まだ寝てるのか?
こうなったら自力で出るしかないか……。
「よっ、あれ?」
案外簡単に抜けることができた。
さっきまでは出られそうにないくらい強く掴まれていた気がするんだけどな……。
疑問に思いながら、寝室を出る。
「おはようございます」
「あら、もう起きてきたのね」
「え?」
「もっとくっついててもよかったのよ」
「あはは……」
恥ずかしい……。
「お母さん、おはよう」
シャロールも起きたようだ。
キャイアさんはシャロールに近づいてなにかささやいた。
「……もっと大胆にやらないと彼は気づかないわよ」
――――――――――――――――――――
「ホロソーのギルドマスター、トルさんの机に日報がありました」
トワイルさんがギルドに集まった僕達に話しながら、手に持った日報のページをめくり始めた。
「このページをご覧ください」
トワイルさんが机に開いて置いた日報を覗き込む。
そこにはトルさんの字……かはわからないがこう書かれていた。
「やはりあそこにはロイエルが住んでいる」
「だが、今の勇者には倒せそうにない」
失礼な。
「彼には、近々パッションソードを手に入れる旅に出てもらいたい」
「パッションソード? なんですか?」
エクスカリバー的な?
「ボルカノンの勇者の剣です」
ボルカノン?
ますますわからない。
とりあえず。
「どこにあるかは……」
「伝説では戦いを終えた勇者は剣を元の場所に戻したそうです」
元の場所って……?
「それがどこかは……わかりません」
「とりあえずボルカノンのどこかにとしか言えません」
そうか……。
「佐藤さんにはぜひともこの剣を手に入れてもらいたいのです」
わからないのに手に入れろなんて無茶苦茶な……。
まあ、つまり……。
「ここを離れなければならないと……」
「はい」
まだヒュイさん達戻してないのに。
「いつですか?」
「できるだけ早くがいいですね」
これまた無茶なことを。
「明日とかですか……?」
「準備ができ次第……」
トワイルさんは申し訳無さそうな顔だ。
その割には、無理難題を押し付けてくる。
そんなに荷物もないし、いっか。
あれ?
そういえば……。
「僕以外には誰が行くんですか?」
僕は周りを見渡す。
「私はそろそろケスカロールに戻って仕事をしなければ……」
トワイルさんはギルドマスターだから仕方ないか。
「儂達もリンゴの世話をな……」
ノーチルさんがそう言って、オリーブさんはうなずいた。
果樹園の営業があるしね。
「私もノーブとホープの面倒を見なきゃいけないわ」
そうだった。
あいつら元気かなー?
……と、いうことは?
「僕だけ?」
「何言ってんのよ!」
キャイアさんが僕の背中を思いっきり叩いた。
「イテテテ……」
「隣を見なさい」
隣?
「あ……」
一番大切な人を忘れていた。
「ごめん……」
「一緒に来てくれるか、シャロール?」
「もっちろん!」
――――――――――――――――――――
「オリーブさん!」
僕はギルドから出ていく彼女を呼び止めた。
「なんですか?」
「別れる前に、もう一度剣の修行をお願いします!」
ゲーム的には次が三つ目の町だ。
モンスターも手強くなってくるだろう。
僕も強くならなくては……!
「私も!」
「わかりました」
「それでは、そこの広場で……」
いや、待て。
「……シャロールもやるのか?」
僕がシャロールの顔を見つめると、シャロールは真面目な顔で
「うん、佐藤を守るんだ!」
と言った。
そんなかっこ悪いこと……。
……でも、まあ。
「ありがとな、シャロール」
――――――――――――――――――――
「疲れた〜……」
「そうだね……」
やっぱりオリーブさんは鬼だ。
超スパルタ……。
ピコン!
ん?
<スキル:剣術(初級)を獲得しました>
「剣術を……獲得……?」
なんだろう。
「佐藤さん、剣術スキルを獲得したんですね!?」
オリーブさんが興奮して尋ねた。
「はい」
何かすごいこと……なのか?
「そのスキルを使えば、剣を使った攻撃の威力と速度が上がるんですよ!」
なるほど……。
「おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます……」
「いいなー……私はまだだよー……」
どうしてだろう……。
「佐藤さんの方が剣をよく使ってるからじゃないですか?」
確かにそうかもしれない。
心当たりがある。
「これでシャロールを守れるな!」
僕はにっこり笑ってシャロールにそう言った。
シャロールはてっきり「佐藤に守られるなんて……」と言うかと思ったのだが……。
「う、うん。ありがとう……」
うつむいて、小さな声でお礼を言った。
まさか、照れてるのか?
「シャロール、帰るぞ」
僕はさりげなくシャロールの手を握る。
「さ……とう……?」
へへへ……照れてる、照れてる。
この前のお返しだ。
――――――――――――――――――――
「これがお小遣いだよ」
キャイアさんは僕達にお金をくれた。
「これで必要なものは揃えるんだ」
「わかった!」
「私はあんた達が向こうでうまくやっていけるか」
今度は本当に僕達二人だけだからな。
「……だから、仕方なくあいつに頼んだわけだけど」
え?
「何か言いました?」
「何も言ってないわ!」
「明日は早いんだから、早く寝なさい!」
怪しい……。
――――――――――――――――――――
「なあ、クロイムも連れて行くのか?」
「うん、大事な友達だもん」
友達か……。
「じゃあ、僕は?」
クロイムに対する嫉妬からか、ついこんなことを訊いてしまった。
「佐藤も連れて行く……よ?」
シャロールはキョトンとしている。
そうじゃなくて……。
「まあ、いっか」
「?」
シャロールは困惑している。
「ごめん、なんでもないよ」
「そう?」
僕は変なことを訊いてしまった羞恥心から布団をかぶった。
「あ……」
眠る直前に、隣からシャロールの声が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます