Seventh statue Ⅱ
「貴様ら……姑息なことを……」
しばらく洞窟を進むと、そんな唸り声が聞こえた。
「かくなるうえは……」
視界の端に見覚えのあるもやが映る。
「危ない!」
僕はシャロールをかばうように抱きつく。
「へ?」
シャロールの困惑気味の声と同時に何者かの舌打ちが聞こえる。
「チッ」
おそらくあいつだ。
「二度も同じ手を食うかよ!」
しかし、アイツを倒さないと……。
「こいつじゃな!」
ヒュン!
振り向くと、ノーチルさんの剣が空を切るのが見えた。
「おりょ?」
「ここです!」
ヒュン!
オリーブさんも剣を外す。
「ムダなんだよな〜」
どこか余裕そうな声が聞こえる。
「どういうことだ!?」
「ここではスキルを使えないって前に言ったよな〜」
そうだった……。
「だから調子が出ないんじゃな」
「お父さん、私達は歯が立たなさそうですね」
ノーチル親子は諦め気味だ。
「スキルが使えないなら好都合だわ」
しかし、なぜかキャイアさんは嬉しそうだ。
「くらいなさい!」
パパパン!
突然爆竹くらいの爆発がおこって、ただでさえ暗くてランプの灯りを頼りにしている洞窟内に煙が立ち込める。
「ゴホッゴホッ」
けむい!
「懐かしいわねー、昔を思い出すわ」
「言ってる場合ですか!」
「今の内に逃げますよ!」
トワイルさんの声が聞こえた。
僕はシャロールの手を引っ張って、その声の方に走った。
「また来いよ〜」
後ろからは呑気な声が聞こえる。
「ま、何回来ても無駄だけどな」
「はっはっはっ!」
――――――――――――――――――――
「あの強さ、厄介ですね」
「スキルが使えないんじゃ、どうしようもないわね」
「それに、やつには攻撃が通らないしのう」
みんな困っている。
「しかし、やつを放っておくわけにはいきませんよ」
トワイルさんが苦しそうに告げた。
「どうして?」
「石化していないから……?」
あいつが石化魔法を使ったのなら、石化していないのも納得だ。
それに、もしそうならあいつを倒せばみんなの石化が解ける。
「それも気になりますし……」
他にも?
「伝説通りなら、魔王幹部はやつらの主である魔王復活を企んでいるはずです」
「見過ごせませんよ」
ああ、そっか。
ありがちな展開だな。
「とりあえず、今日のところは帰って各自作戦を考えてください」
――――――――――――――――――――
「あ、思い出したわ」
キャイアさんが家の前で突然そう言った。
「何をですか?」
「ちょっと買い物してくるわ」
「あんた達は家で待ってなさい」
「え……! お母さん?」
買い物ってなんだ?
――――――――――――――――――――
「あー、おいしかった〜」
ご飯を作ってくれる人が来てくれて、本当によかった。
これで買い物に行かなくて済むので、問題が一つ解決されたわけだ。
そういえば、キャイアさんの買い物って何だったんだ?
「今日はあなた達にプレゼントがあるわ」
ご飯が終わると、キャイアさんはおもむろにこう切り出した。
「え! なになに〜」
シャロールは目を輝かせいる。
プレゼント……。
僕も気になる。
「じゃ〜ん!」
キャイアさんが取り出したのは……。
なんか……。
「これって……」
「箱……だよね?」
声色からだけでもシャロールががっかりしているのが伝わってくる。
「ただの箱じゃないわよ、クロイムのベッドよ」
「「ベッド……?」」
「今日からクロイムはここで寝なさい」
「え〜そんな〜」
クロイムも激しく動いて、抗議しているようだ。
「い・い・わ・ね?」
キャイアさんはゴリ押そうとしている。
そのあまりの圧に背後から火花があがっているように見える。
「熱っ!」
いや、これホントに火が出てる!
「シャロール!」
このままじゃ、家が火事になる。
「……わかったよ、お母さん」
シャロールがなんとか認めた。
いつの間にかクロイムもおとなしくなっている。
――――――――――――――――――――
「それじゃあ、おやすみクロイム」
シャロールはクロイムを箱……もといベッドに寝かせる。
これで布団に入ってくることはなさそうだ。
安心して眠れる。
……シャロールが。
「よかったな……ってもう寝てるのか」
「おやすみ、シャロール」
――――――――――――――――――――
「ん?」
なんだ?
この身動きがとれない感じ……。
まさか……かなしばりか……!?
ファンタジーならモンスターの類か?
今僕は横を向いている。
そして、目の前には何もいない。
いるとしたら、背後に……。
「んへへ〜クロイム〜」
シャロールの寝言が聞こえる。
「ぎゅ〜ってしてほしいの〜?」
どうやらシャロールはクロイムの夢を見ているらしい。
ということは……。
かなしばりの犯人はシャロー……。
「ぎゅ〜っ……」
「ちょっ、シャロール……!」
それはまずい!
あの……あれ!
あれがあたってる!
すっごくやわらかい……じゃなくて!
どうにかしなきゃ!
けど動けないから、どうしようもできない。
そのとき、僕の中の悪魔がこうささやいた。
「ここは甘んじて受け入れようぜ?」
うん……まあ……仕方ないよね。
「僕は」何もしてないし、できないし……。
「クロイムって佐藤みたいな匂いだね〜」
そりゃあ、佐藤だから当然だ。
というか、なんで僕の匂いを知ってるの?
僕はそのまま眠れぬ夜を過ごした。
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