Third statue

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「朝か……」


 やはり日は動いているようだ。


「おはよう、シャロール」


 返事はない。

 なぜなら石だから。


 昨日の出来事は夢じゃなかったようだ。


 いっそのことこの石像を割ったら……。

 実はドッキリでしたーって……。

 ホントのシャロールが……。

 出てきて……。

 くれ……。

 よ……。


――――――――――――――――――――


 いつまでも落ち込んでいても仕方ない。

 解決策を見つけなくては。


 でも、頼りになる人は誰もいない……。


 だって、みんな石に……。


 そうだ!


 管理人なら……。


 いや、でも……どうせゲームのイベントだからって手を貸してくれないだろうなぁ。


 じゃあ、やっぱり一人でなんとかするしかないか……。


 一人で……か。


「誰か助けてくれないかな……」


「うわ!」


 僕は突然目の前に現れたウィンドウに驚いた。

 これは……ヘルプだな。

 でも、なんで開いたんだ?

 まさか、「助けてくれ」って言ったからか?


 そうだ!


 せっかく開いたんだから、石化について調べてみるか。

 状態異常の項目にある……はず……。


――――――――――――――――――――


 これだ!


 なになに?


「石化はモンスターの石化魔法によって起こる状態異常です。この状態に陥った場合、石のように固まり、身動きがとれなくなります」


 まあ、そうだな。


「石化状態から回復するには、石化回復ポーションが必要です」


 え!

 やっぱりあるんだ!

 それさえ手に入れれば、戻せる!


 そう考え、僕は家を飛び出した。


――――――――――――――――――――


「あ……あった……!」


 どうせここにもないんじゃないかと諦めていたが、最後に寄ったこの店にあってよかった……!

 一個しかないが、ないよりはましだ。

 お代は……わからないけどもらっていくね。

 緊急事態だから許してくれ……!


 それにしても、このポーションを誰に使おう。

 一つしかないから慎重に選ばないと。


 例えば、頭がキレるヒュイさんとか?

 ヒュイさんなら、きっとすごい作戦を提案してみんなを戻してくれるかもしれない。


 それとも強いトルさん?

 もしモンスターに襲われても、あの人がいれば安心だ。

 この前みたいに、励ましてくれたりもしてくれるかもしれない。


 あとは……薬師の誰かとか?

 この薬を増産してもらえるかも。


 ううむ……。

 迷うな……。


 でも、やっぱり……。


――――――――――――――――――――


「シャロール!」


「わ! 佐藤!?」


 シャロールが驚いているが、僕はお構いなしに彼女の体を抱き続ける。


「本当に……本当に……」


「どうしたの?」


「よかった……」


 涙が止まらない。

 シャロールが動いて、しゃべっているだけで泣いてしまう。


「……」


「シャロール……シャロール……」


「佐藤……」


 シャロールはしばらく何も言わず、泣いている僕の頭を優しくなでてくれた。


――――――――――――――――――――


「あのな……聞いて驚くなよ……」


 しばらく経ち、涙も落ち着いた僕は話し始めた。


「うん」


 シャロールも真剣な顔でうなずく。


「みんな石になったんだよ」


「え……!」


 シャロールは驚愕した。


「台所に行って、お父さんを見てこようか」


 僕はそう言って、シャロールと共に寝室を出る。


「ほら」


「うわ!」

「ホントだ……」


 シャロールはお父さんの体をペタペタ触って確かめている。


「みんなこんな感じなんだ」


「……佐藤はどうしてこうなってないの?」


 それは……僕も……。


「わからない……」


「じゃあ、私は?」


「シャロールは……僕がポーションを使ったんだよ」


「そのポーション、他にないの?」


「いや、町中探してこれ一個だったよ」


 たぶん……。


「それを私に?」


「ああ」


「どうして?」


 うっ。

 シャロールの視線が突き刺さる。


 それは……。


「シャロールに……会いたかったから……」


 今思えば、理由なんてなかった。

 気づいたら、シャロールに使っていた。


 するとシャロールは呆れ顔で


「バカな佐藤……」


 と言った。


 そりゃそうだ。

 もっといい使い道があったはずだ。


 嫌われたかな?


「ごめんな、シャロール」

「でも、そんな佐藤が好きだよ」


「え?」


 かぶって、よく聞こえなかった。


「落ち込んでる暇があったら作戦を考えようよ」


「作戦?」


「みんながどうやったら戻るかを考えなきゃいけないでしょ!」


 そうだな……。


「う〜ん、そのためにはポーションを……もっと……」


――――――――――――――――――――


「佐藤?」


 どうして黙って……。


「あ……」


 座ったまま寝ちゃってる。

 よっぽど疲れてたんだろうな。

 外はもう真っ暗だし、一日中頑張ってたのかも。


「しょうがないなー……」


 私は佐藤を引きずって、布団に寝かせた。


「……」


 お父さんがいないから、ベッドに寝れる……。


 でも……。


「佐藤、一緒に寝よ♪」


 私は佐藤にかぶせた布団に潜り込む。


「うう〜ん、シャロールが……」


 佐藤、うなされてる……。


「心配しなくていいんだよ」

「私がついてるからね」


 私が佐藤の頭を撫でると、静かになった。

 やっぱり佐藤には私がいてあげないとダメだな〜。


「今日はお疲れ様、佐藤」

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