Second statue

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 朝か……。

 昨日はいろいろあったから、ぐっすり眠れてよかった。

 シャロールはまだ寝ているようだけど、起こさないでおこうかな。


「おはようございます」


 僕は寝室を出て、台所に立つヒュイさんに挨拶した。

 テーブルには一人分の朝ごはんが並べてある。

 まだ作っている途中だったのかな?


「……」


 あれ?

 返事がない。


「どうしたん……」

「うわ!」


 台所にいるヒュイさんに近づくと、信じられないことに気づいた。


「い……石だ……」


 ヒュイさんが石のように固まっている。

 いや、本当に石になっているのかもしれない。


 触ってみると、とても生きているとは思えないほどひんやりした硬い石になっている。


「ど、どういうことだ?」


 昨日までは……。


 いや、この作りかけの朝ごはんを見るに、石になったのはついさっきだろう。


 では、誰が?

 なんのために?


「あ!」

「シャロール!」


 僕は急いで、シャロールを起こすために寝室に入った。


「起きろ! シャロー……」


 冷たい……。

 布団の中のシャロールも石になっている。

 一見すると気持ちよさそうに眠っているようだ。

 とても死んで……。


「ばかやろう!」


 死んでるわけないだろ!

 ここがゲームの世界ならこれは状態異常の一種だ!

 絶対治せる……はずだ。


 けど……。


「どうすりゃいいんだよ?」


――――――――――――――――――――


「ここもか……」


 やっぱり僕だけが石になっていないみたいだ。


 通行人も、ギルド職員も、お店の店員もみんな石になっている。


 今ならやりたい放題できる。


「ははっ……」


 そんなことがしたいわけじゃない。

 僕は生きている……石になっていない誰かに会いたいんだ。


「どうして僕だけなんだよぉ……」


――――――――――――――――――――


「ん?」


 長いこと探索を続けた後、ふと空を見上げると茜色になっていた。


「……」


「そうか!」


 時間が止まっているわけじゃないんだ!

 おそらく太陽は動いている。

 思い返せば、風も吹いていた気がする。

 水なんかも……。


「あ……」


 探索に夢中で、喉が渇いているのに気づかなかった。

 今になって、水が飲みたくなってきた。


「帰るか……」


――――――――――――――――――――


「で、出た……」


 どうやら水道から水は出るらしい。

 これでしばらくは持ちそうだ。

 食べ物も……申し訳ないがお店から拝借してきた。

 ちゃんとお金は置いてきたが、ちょっと罪悪感がある。


 そして、今日は独りで夕食だ。


 今朝は夢中で家を飛び出したので、朝ごはんも食べていなかった。

 空腹のお腹に一日ぶりの食べ物が入る。


「寂しいなぁ……」


 お腹は満たされても、心は満たされない。


――――――――――――――――――――


「なんでこんなになったんだよ……」


 僕は横になって、シャロールの冷たい頬を撫でる。


「戻ってくれよ……」


 もう動かないなんてこと……ないよな……。


「……」


 自然と僕の手は頬から首へ、そして胸へ動いた。


「馬鹿……」


 こんなことしてどうするんだよ。


 なあ……。

 いつもみたいに怒ってくれよ……。


「佐藤のバカー! ってさ……」


「シャロール……」


 寂しさで、僕の目に涙が溢れてくる。


 その夜、僕は冷たい石像を抱いて眠った。

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