Third poison of Hers

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「えー! そうなんだ!」


「はい。しかし、シャロールさんみたいに我々と話せる特別な人間がいるとは思いませんでした」


「そうだよねー」

「それじゃあ、今度からはなるべく攻撃しないでくれる?」


「……はい、少なくともシャロールさんは」


 なんかちょっと怪しい返答だけど、いっか。


「それじゃあ、バイバーイ」


「あ、ちょっと待ってください」


 去っていく私をヘビさんが呼び止めた。


「な~に?」


「今日はロイエル様が勇者を探しに出るとかいううわさがあって……」


「うん」


 そういえば、佐藤って勇者だよね。


「危険ですので、今日はもう帰った方がいいですよ」


「まさか……」


「どうしたんですか?」


「用事思い出したの!」

「さよなら!」


(※以上の会話は本当はヘビ語で行われていますが、読者への配慮として日本語訳されたものです)


 私はヘビさんと別れて、少し離れた職員さんのところに駆け寄った。


「佐藤はどこですか?」


「えーと……ちょっと……」


 なんか言いにくそう。


「どこなんですか?」


「あの岩の方に行ったよ」


 ギルド職員さんがさっきまで私がいたところとは反対方向にある大きな岩を指差した。


「何をしに?」


「あー……えっと……」


 どうして答えてくれないの?


「もういいです」

「私、見てきます!」


「あ! ちょっと!」


「佐藤ー!」


 なんでこんなところにいるんだろう……。


 あれ?

 誰もいない。


「佐藤、いませんよ?」


「え? そんなはずは……」


――――――――――――――――――――


「どうしたんだい、シャロール?」


「お父さーん!」

「佐藤がいなくなっちゃったのー!」


 私はギルドでお父さんに会うと、すぐにそう言った。


「ええ!?」


 お父さんはすっごく驚いた。

 耳がピコピコ動くくらい。


「すみません、私の不注意で……」


 ギルド職員さんがお父さんに謝ると、お父さんは厳しい顔になった。


「そうだね……詳しい話は奥で」


「お父さん?」


「ちょっと待っててくれよ、シャロール」

「もうすぐお仕事が終わるからね」


 そう言って、また仕事に戻っていった。


 私はギルドの椅子に座って、お父さんを待つことにした。


 あーあ。

 佐藤、どこに行っちゃったんだろう。


 どうしていなくなっちゃったの?


 佐藤は弱いから心配だな……。


 佐藤は……私がいないと……。


「帰ってきてよ……佐藤……」


 なんだかとっても苦しくなってきちゃった。


「うぅ……」


 胸の奥から、そして目から何かが溢れてくる。


「うわ~ん!」


 私は周りに人がいるのに大声をあげて、泣いてしまった。


「佐藤が……!」


「シャロール!」


 私は誰かから名前を呼ばれて振り返った。


「お、お父さん……?」


「こんなことだろうと思ったよ」

「心配ですぐ戻ってきてよかった」


 お父さんは優しい笑顔でこう言った。


「どうして?」


「娘の考えていることくらいわかるさ」

「佐藤君が心配なんだろう?」


「うん……」


 私は涙を拭きながら答えた。


「さ、まずはお家に帰ろう」


 私はお父さんの手に引かれて、家に帰った。


――――――――――――――――――――


「そしたら、佐藤がいなかったの!」


「なるほど……」


 お父さんはうなずいた。


「佐藤は私のこと、嫌いになっちゃったのかな?」

「だから……」


「シャロール、落ち着きなさい」

「あの佐藤君がそんなこと思うわけないだろ」


「そうかな?」


「今までだって、彼はシャロールを助けてくれたんだろ?」


 私はお父さんのこの言葉を聞いて、昔のことを思い出した。


 佐藤と最初に出会ったとき……。

 私は佐藤を騙そうとしていたのに、佐藤は逆に私を助けてくれた。

 自分のことなんかちっとも考えないで、決闘するなんて言い出して……。


 私がモンスターを殺したくないって……みんなからしたら、変なことを言ったときも佐藤は受け入れてくれた……。


 この前だって、薬を作るために無理して……。


「佐藤はいつだって……私のことを思って……」


「ふふっ、シャロールもわかってるじゃないか」


 お父さんは満足そうに笑った。


「じゃあ、佐藤はどこに?」


「う〜ん、そうだな……」

「シャロールが話したバイティングスネークはロイエルが勇者を探していると言ったんだな?」


「うん」


「そのロイエルってのは、伝説によれば魔王幹部なんだ」


「魔王幹部?」


 前にもそんな人がいたような……。


「そう。佐藤君はそいつに捕まったんじゃないかと思うよ」


 捕まった……。


「佐藤は生きてるの?」


「それはわからないんだよ、シャロール」


 そんな……。


「ただ、彼は一度死んだのなら、何かしらの対策を練るはずだよ」

「しかし、彼は今日の出来事に対して何も言わなかった」


 よくわかんない……。


「どういうこと?」


「彼はまだ今日と言う日を繰り返していない、一度目だということはわかるんだけどね」


 やっぱりよくわかんない。


「じゃあ、どうしたらいいの……?」


 私が話についていけず、困惑しながら尋ねた。

 すると、お父さんはほほえみながらこう言った。


「一ついいニュースがあるよ、シャロール」


「え、なに?」


「お父さん達、ギルド職員もかつてロイエルが勇者に封印された場所を探していてね」


 封印された場所?


「最近、それがあそこの洞窟の奥深くだとわかったんだ」


 洞窟?

 まさか、あそこ?

 というか……。


「佐藤はロイエルに捕まったんでしょ?」


 ということは……。


「え! じゃあ、そこに行けば!」


「そう。佐藤君がいるかもしれない」


「やったー!」


「ちょうどギルド職員で近々調査予定だったんだが、なんとか前倒ししてもらうよ」

「なにせ、勇者救出だからね」


「わーい!」


 佐藤に……会えるかも!


「ということで、今日はもう寝なさい」

「明日は早いぞー」


「はーい」


――――――――――――――――――――


 佐藤、待っててね。

 私が助けてあげる!


 私は意気込んで、眠りについた。

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