Third poison Ⅱ

 ここは……洞窟?


「目が覚めたか」


 暗闇の中から声がする。


「うー、うー」


 口が塞がれてしゃべれない。

 手足も縛られている。


「お前にはここでおとなしくしてもらいたい」


「うーうう?」


「ふん、なぜか知りたいようだな」


 教えてくれる?


「だが、勇者に自分の企みを教えるほどこのロイエルは馬鹿じゃない」


 まあ、素直に教えてくれるわけないか。

 ていうか、ロイエル?

 どこかで聞いたような。


「勇者は殺しても、巻き戻って蘇るのだろう?」


「う!」


 なぜ知っている?


「その顔、図星のようだな」


「だから、俺はあえてお前を殺さない」


 それはまずいな……。

 しゃべれないんじゃ、スキルも使えない。

 どうやってこの窮地を突破する?


「それじゃあ、またな!」


 それを最後に洞窟に沈黙が訪れた。


――――――――――――――――――――


 お腹が減った……。

 このままでは、餓死してしまう。

 ……いや、その方が好都合か?


「うーうー!」


 僕は暗闇に向かって叫んだ。

 当然誰も……。


「何か言いたいことがあるのか?」


 お?

 先ほどの声が反応してくれた。


「ううううっう!」


「なんだって?」


「うーうーうーう!」


「……どうせ腹が減ったとかだろ」


 わかったのか?


 僕がしばらく待っていると、目の前にサンドイッチが現れた。

 これ、宙に浮いてる……。

 まあ、この際細かいことはどうでもいい。

 早く食べたいなー。


「ほら、外してやるから口を開けろ」


 お、口を塞いでいた何かが消えた。

 これで食べれるってわけだ。


「あ~ん」


 サンドイッチがこちらに飛んでくる。

 なんでこいつにこんな風に食べ物をもらわなきゃならないんだ。

 シャロールに「あ~ん」ってしてもらいたいなーと思いながら、サンドイッチを口に入れる。


 う〜ん、久しぶりの食べ物はおいしい!

 「空腹は最高の調味料」だからね。

 しびれるようなおいしさだ。

 ……何が入ってるんだ?

 ちょっと不思議に思ったが、この際そんなことを考えても仕方ない。

 とりあえず空腹を満たそう。

 そう思い、サンドイッチを飲み込む。


「う!」


 痛い!

 のどが焼けるように痛い!


「はっはっはっ!」

「勇者に素直に食べ物を渡す魔王軍がどこにいるかよ!」


 なに!?


「それには、毒が入ってるんだよ」

「せいぜい苦しむんだな」


 だからこんなにヒリヒリするのか……!

 胃が痛い……。


 クソー!

 悪魔め!

 まあ、ホントに悪魔なんだろうな。


 あれ?

 そういえば、ポイズンポーション買ったんだから……。


 いや、ステータス画面を開かないとアイテムは見れない……。


 いやいや、ステータス画面を開かなくてもアイテムを収納することができるんだ。

 出すことだって……!


 出ろ!

 ポイズンポーション!

 このままじゃ飲めないから、口の中に中身だけ出てこい!

 容器はいらないぞ!


 僕がそう念じると、口の中に何か液体が出てきた。

 成功か?


 飲み込んでみると、とりあえず痛みが消えた。

 解毒成功だ!


――――――――――――――――――――


 食べ物は大丈夫そうだな。

 けど、これからどうしたらいいんだ?


 ずっとこのまま?

 僕一人じゃどうしようもない。


 でも、誰かここまで僕を助けに来れる人がいるか?

 そもそも、ここがどこかもわからない。


 やっぱり、自分でなんとかするしか……。


 う〜ん、何かいい手はないか……。


 僕はかすかに水の音がする暗闇の中で一人静かに考える。

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