Third poison Ⅰ
=Now Loading=
「おはようございま……す……」
あれ?
いつもは朝ごはんを用意してくれているヒュイさんがいない。
まだ帰ってないのかな。
まさか、何かあったんじゃ?
とりあえずギルドに行こう。
……シャロールを起こしてから。
「シャロール、起きろー」
「むにゃむにゃ」
「お父さんがいないんだ、ギルドに行くぞ」
「……え!」
シャロールの目がぱっちり開いた。
「よし、行くぞ」
「……待って」
シャロールが真面目な顔で僕の袖を掴んだ。
「どうした?」
「……朝ごはん」
――――――――――――――――――――
「ギルド職員のヒュイさんはいらっしゃいますか?」
僕は受付のギルド職員に尋ねた。
しかし、ギルド職員は怪訝な顔をしている。
「おりますが……」
「娘のシャロールが呼んでいる、と伝えてください」
「はぁ……」
ギルド職員は納得していないような顔だったが、呼びに行ってくれた。
――――――――――――――――――――
「いや〜、昨日はすまなかった」
ヒュイさんが出てきた。
「何かあったんですか?」
「ちょっと仕事が立て込んでいてね」
確かに、ヒュイさんの目の下にはくまがある。
徹夜で仕事をしていたのだろう。
「そうなんだ……」
「私は大丈夫だから、気にせず依頼でも受けてきなさい」
「うん……」
――――――――――――――――――――
「ポイズンポーションあるの?」
「ああ、昨日買ったじゃないか」
「ちゃんとアイテム見て!」
シャロールは僕に注意するように言った。
「わかったよ」
どうせ文字化けしててわからないんだけどね。
「うん、たぶんあるよ」
「そっか、よかった」
「あ!」
「どうしたの?」
「昨日のキノコ忘れてた!」
「ちょっと待っててくれ!」
「う、うん」
僕は薬師のところへ急ぎ、昨日渡したキノコから作ったポーションを受け取った。
実際に使うかどうかは謎だが、備えあれば憂いなしだ。
そんなことを考えながら、急いでギルドに戻る。
――――――――――――――――――――
「いいかい、気をつけるんだよ」
「はい」
「絶対に噛まれないようにするんだ」
毒があるからだよな。
「あ! いるぞ!」
目の前には、普通のヘビが……。
いや、違うな。
口から大きな牙がはみ出ている。
あんなのに噛まれたら、毒がなくても危険だ。
「来るぞ!」
しかも、素早い!
「シャロール!」
「あ、えっと……」
ヘビが僕に向かって飛びかかる。
「わっ!」
なんとかかわしたが、後ろを見ると地面に着地したヘビは再び僕に向かってきている。
今度は避けれるか?
「シャー!」
シャロールがそう叫ぶと、ヘビの動きが止まった。
「あら?」
ギルド職員が不思議そうな顔だ。
「すみません、説明してませんでしたね」
「彼女はモンスターと話せるんです」
「へ〜、そうかい」
この人、あんまり興味なさそう……。
それにしても、今日は長話だな。
さっきヘビに噛みつかれると思って、ちょっとちびっちゃったから……。
「トイレ行ってきていいですか?」
「こんなところにトイレなんて……」
「ああ、まさかそこらへんで……」
何かを察してくれたようだ。
「すぐ戻って来るんだよー」
「はーい」
――――――――――――――――――――
「ふぅ〜、スッキリ……」
ビュウ!
「うわ!」
急な突風が吹いて、おしっこがズボンにかかってしまった。
「アチャー……」
どうしよう。
「お前が勇者佐藤だな?」
誰だ?
「今取り込み中なんです!」
「待ってください!」
「勇者佐藤だな?」
あー、もう!
それどころじゃないのに!
「そうですけど!?」
「それがどうかしたんですか!?」
「お前には……」
「げ!」
「パンツも濡れてるじゃん!」
ビュウ!
再び突風が吹いた。
「うわ!」
僕は砂が目に入らないように目をつぶった。
目の前が暗くなる。
そして、そのまま僕の意識は先ほどのおしっこのように吹き飛ばされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます