Second poison

 =Now Loading=


「まだ行ってない依頼にはどんなものが?」


「え~と」


 ヒュイさんは一瞬考え込んで、何かを思い出したような顔になった。


「あ! しまったな……」


「どうしたんですか?」


「今日は昨日の薬師のところにポイズンポーションを買いに行きなさい」


「なんでー?」


「残りのモンスターはね……」

「毒を持ってる危ないモンスターなんだよ」


「なるほど」


 だから、ポイズンポーションが……。

 採取依頼のキノコもそれに使うものだったのかな?


「じゃあ、今日はお買い物か……」


「やったー!」


 シャロールは無邪気に喜んでいる。


「それで、その薬師はどこに?」


「あの薬師はギルドの裏の……」


 僕達はヒュイさんから道案内を聞き、家を出た。


――――――――――――――――――――


「なんだか佐藤と二人きりになるの、久しぶりだね!」


「そうだな〜」


 依頼を受けるときはいつもギルド職員がいたからな。

 しかも、そのギルド職員のせいでとんでもない目にあった。


「ねぇねぇ、佐藤」


「なんだ?」


「今日は体が軽いでしょ?」


 言われてみれば……。


「昨日、佐藤が寝たあとにマッサージしてあげたんだよ♪」


 昨日寝る前にそんなことを言っていた気がする。


「ありがとう、シャロール」


「えへへ、どういたしまして」


「それで、お父さんが『佐藤君には優しいんだな』ってヤキモチ妬いてたの」


「お父さんもきっと寂しいんだよ」


「う〜ん、そうかな〜」


「優しくしてやらないとダメだぞ」


「え〜」

「だって、私は佐藤の方が好きなんだもん」


「……」


 僕が好き……か。

 そんなこと今まで聞いたことがないから、不思議な気分だ。


「どうしたの?」


「いや、なんでもない」

「シャロールがそんなに僕が好きだなんて……」


「うん!」

「私佐藤のこと、大好き!!!」


 シャロールは笑顔で宣言して、僕の腕に抱きついた。


「まあ……大胆ね」


「こんな人目につくところでよくあんなことが言えるな」


「若いっていいわねぇ」


 周りからの視線が突き刺さる。


「シャ、シャロール」

「早く行こうか」


 僕はシャロールの手を取って、逃げるように走り出した。


――――――――――――――――――――


「すみません、毒消しをください」


「毒消しじゃな、ちょっと待っておれ」


 そう言って、おじいさんは奥に入っていった。

 暇になった僕はカウンターに置いてある薬のカタログを見る。


「見ろよ、シャロール」

「ポイズンポーションにもいっぱい種類があるぞ」


「わー、ホントだ」


「どのポイズンポーションか言わなかったけど大丈夫かな?」


「そうだね……」


 そんなことを話していると、おじいさんが戻ってきた。


「おまたせ」


「あの、すみません」

「ポイズンポーションに種類があるなんて知りませんでした」


「そうじゃろうと思って、いろいろ持ってきたので安心せい」


 おじいさんはカウンターに何個かの瓶を並べ始めた。


「まずこれが普通のポイズンポーションじゃ」

「まだこの町の周囲のモンスターの毒なら、これだけでも十分じゃ」

「……あいつを除いてな」


 ……あいつ?


「そして、これがハイポイズンポーションじゃ」

「別の町に行くと、さらに強い毒を持ったモンスターがいるんじゃよ」

「そいつらと戦うならこのハイポイズンポーションじゃ」


「なぜです?」


「そりゃあ、普通のポイズンポーションをいくつも使わなきゃならんほど強力な毒を持っておるからだ」

「それより、このハイポイズンポーションを一個使う方が効率的にもコスト的にもいいんじゃよ」


 なるほど。


「ここまで紹介したポイズンポーションは体を蝕む毒にだけ効くんじゃよ」

「そして、これがパラライズポーションじゃ」


 パラライズ?


「通称麻痺治しじゃな」


 あ~、パラライズって麻痺か。


「毒は毒でも、体の自由を奪う毒にはこれじゃ」

「ただ、この辺にはその毒を使うモンスターはおらんがの」


「ほかにも……」


「あの!」

「今日はポイズンポーションを買いにきたので、他のものはまたの機会に……」


「おお、そうかい」


「では、会計を済ませようかの」


「どれくらいポイズンポーションを買っておいた方がいいですか?」


「う~む、使わないときもあるからの~」

「あくまでもしものときのためのポーションじゃからな~」


「じゃあ、とりあえず五個ください」


「わかった」


「それと、念のためにこのパラライズポーションを二個ください」


「そうかい」


「え~、会計は100ピローじゃ」


 そこそこ……いや、かなりあるな。

 モンスターを狩っていないので金欠気味だが……この前のキノコ狩りでそこそこ稼いだから足りそうだな。

 そういえば、キノコと言えば……。

 僕はお金を支払った後で聞いてみた。


「ここで、キノコを渡せばポーションを作ってくださったり……」


「ああ、できるが……」


 フォン。

 〈どのキノコを渡しますか?〉


 そんなメッセージが出ると同時にアイテム欄が表示された。

 相変わらずバグってるけど、キノコは装備品じゃないから黄色で表示されているはず。

 うん、確かに黄色のアイテムがいっぱいある。

 そして、一番上が幸運の女神。

 二番目がジェクオルの指輪だったから、三番目からはキノコだろう。

 これとこれとこれと……。

 全部選び終わると次のメッセージが出た。


 〈本当に渡しますか? はい/いいえ〉


 もちろん、はいだ。


「おお、これだけあればそれぞれ二個ぐらいは作れそうじゃな」


 よかった、問題ないみたいだ。


「作ったポーションはのちのち君が買いに来るのかい?」


「はい」


「では、とっておくよ」

「割引もしてあげようかの」


「ありがとうございます」


 こうして、僕は買い物を終えて……。


 あれ?

 シャロール?


 僕が後ろを振り向くと、シャロールは魂が抜けたようにぼーっとしていた。


「おーい、大丈夫か?」


「……」


 うん。

 どうやらシャロールには難しかったのかもしれない。


「早く帰るぞ」


 僕がシャロールの手を握って、引っ張るとシャロールの魂は戻ってきた。


「……私、ギルドに行きたい」


「え?」


――――――――――――――――――――


「これかな?」

「うん、そうだね」


<依頼:バイティングスネーク討伐 報酬:25ピロー/匹 おすすめレベル:7~ 概要:牙に毒を持っていますので、ポイズンポーションをお忘れなく>


 ふむふむ。

 バイティングスネークってモンスターは毒を持ってるんだな。

 まあ、ヘビが毒を持っているのはなんらおかしくはないか。

 オススメレベルは七か。

 まあ、いけるでしょ。


「わー! これすごーい!」

「ん?」


 僕がシャロールの指さす依頼を見るとこう書かれている。


<依頼:スロウタースコーピオン討伐 報酬:50ピロー/匹 おすすめレベル:15~ 概要:大変危険な毒を持っていて危険ですので、オススメレベル未満の冒険者はこの依頼を受けることはできません>


「……これは、もっと強くなってからだな」


「……そうだね」


 報酬もかなりあるし、相当強いモンスターなのだろう。

 できれば、戦いたくない。


「明日はこのバイディングスネークだな」


「うん!」


――――――――――――――――――――


「ただいまー!」

「あれ?」


「どうした?」


「お父さんがいないよ」


 確かに家の中に人の気配がない。


「それは……まだ仕事してるんだろ」


「そっか、そうだよね」


「さっき聞いてくればよかったな」


「うん、そうだね~」


 まだ夕食まで時間もあるし……。


「暇だし、明日の作戦でも考えるか」


「あ、それいいかも!」

「……じゃあ、バイティングスネークの鳴き声は?」


 スネークだから、蛇なんだろ?


「……シャーかな」


「シャー?」


「試しに言ってみてよ」


「シャー!」


 シャロールが口を目いっぱい広げる。

 かわいいなぁ。


――――――――――――――――――――


「お父さん、遅いね」


 シャロールは心配そうに言った。

 前にもこんなことがあった。


「そうだな……」


 また面倒ごとでもあったのかな?


「もう寝よっか、シャロール」


「うん……」

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