Having Poison (毒がある)

First poison

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「さ、シャロール。これを飲んで」


 僕は今日の朝、薬師のおじいさんが届けてくれたスキルポーションをシャロールに渡す。


「うぐっ」


「まずい……」


 シャロールはちょっと飲んで、顔をしかめた。


「良薬は口に苦し、だぞ」

「ほら、飲んで飲んで」


「……」


 シャロールは苦い顔で、同じく苦い薬を見つめる。


「それを飲んで、元気になったら楽しいところに連れて行ってやるぞ」


 ヒュイさんが子供を甘やかすように言った。


「お父さん、本当!?」


 どこに行くんだろ?


「ごくごく」


 シャロールが豪快な一気飲みを披露する。


「あ! 体が軽くなってきた!」


 そんなすぐに効くのか?

 まあ、ゲームだからか。


「よかった」


「これで一安心だ」


 ヒュイさんもほっとしている。


「これからは体調が悪くなったらすぐ言うんだぞ」


「は~い」


「で、どこに行くの?」


 シャロールが期待のまなざしでヒュイさんを見つめる。


「今日は、父さんは仕事が休みだから……」

「テンテンに会いに行こうか」


「「テンテン?」」


――――――――――――――――――――


「さあ、着いたぞ」


 ここは……小さな島?

 途中から思っていたのだが、やっぱりここが目的地のようだ。

 こんな小さな島にボートを漕いでまで、何をしに来たのだろう。


「さ、シャロールは向こうの小屋でこの水着に着替えてきなさい」

「私達はこっちで着替えるから」


 ヒュイさんは水着(かな?)をシャロールに手渡してこう言った。


「「?」」


 なんで水着なの?


 そんな疑問を抱きながら、僕はヒュイさんが用意してくれた水着を着る。


――――――――――――――――――――


「シャロール、遅いですね」


 僕達はとっくに着替え終わったのだが……。


「そうだな〜」

「佐藤君、見てきてくれないか?」


 そう言われて、僕はシャロールが先ほど入っていった小屋の戸をノックする。


 コンコン。


「……こんなサイズで」


 シャロールが何やら独り言を言っている。


「シャロール〜」

「大丈夫か〜」


「さ、佐藤!?」


 シャロールが素っ頓狂な声を出した。


「何かあったのか?」


「ううん!」

「もう終わったから!」


 シャロールはなぜか早口になっている。


「それなら、早く出てきてくれー」


「え!」

「う〜ん!」


「もう置いて……」


「待って!」


 バン!


 勢いよく戸が開き、シャロールが出てきた。


 そして、念願のシャロールのみず……ぎ……が……。


 なんでスク水なの?


 もっといろいろあるじゃん!

 そりゃあ、僕だって女の子の水着なんて詳しくないけどさ。

 でも、スク水はおかしいって!

 ここ異世界だよ?

 どうして?


 ……まあ、この世界について文句を言っても仕方ないか。


 それにスク水だって悪くはない。


 ぴっちりとしまったスク水はシャロールの華奢なボディーラインを強調している。

 さらに、上半身にある二つの膨らみ……。

 普段はあまり気にすることはないが、こう見るとそこそこあるな。

 そして、普段はなかなか見れないシャロールのおみ足も美しい。

 シャロールの肌って白くてきれいだよな〜。

 というか、この水着、サイズが小さいんじゃないか?

 結構際どいことになってる気がする。

 どこがとは言わないが……。


「もう!」

「ジロジロ見ないで!」


 シャロールが手で自分の体を隠す。


「ごめん、ごめん」

「すっごくきれいだったから」


「……」


 出てきたときから、赤かった顔がさらに赤みを増していく。


「お、シャロール似合ってるじゃないか」

「じゃあ、行くぞ」


 ヒュイさんは海岸の桟橋に向かった。


――――――――――――――――――――


「ここで呼ぶと出てきてくれるんだよ」


「そのテンテンがですか?」


「そう」

「テンダーテンタクル、通称テンテンがね」


「おーい!」


「……」


「何も出てこないじゃ……」


「いや、水面をよく見てごらん」


 ん?

 波が激しくなっている。

 まるで何かが近づいて来ているような。


 ザバァ!


 水面から何かが顔を出した。


 イカだ!


 しかし、大きさが普通のイカの比じゃない。

 いわゆるクラーケンってやつかな?


「彼はね……」


 ヒュイさんが説明し始めると、イカは見かけによらず素早く触手をこちらに伸ばした。


「きゃー!」


 その触手がシャロールに巻きつく。

 そして、海に連れて行かれる。


「シャロール、大丈夫か!?」


 助けに行こうとする僕をヒュイさんは制した。


「大丈夫だよ」

「見ていなさい」


 本当かな?

 僕は心配しながら、いくつもの触手に巻きつかれているシャロールを見つめる。

 幸い、海中には連れ込まれていないので溺れることはなさそうだ。

 それぞれの触手がなめらかにシャロールの体の上で動いている。


「あ!」

「だめ!」


 お腹を撫でられたシャロールが叫び声をあげる。


「ヒュイさん!」

「やっぱり危ないんじゃ!」


「いや!」

「そんなに動いちゃ!」


 シャロールがどんなに抵抗しても、触手は止まる気配がない。


「あれはマッサージをしてるだけだから」


「え?」


「今まで、彼に攻撃された人なんて一人もいないよ」

「ほら、触手を動かしてるだけだろ?」


 そうだけど……。


「ああん!」

「そこ、気持ちいいの!」


 今度は触手が脇の下を通って、肩に触れる。


「ああやって、体のこりをほぐしてるんだよ」


 なんか……その……。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫、大丈夫」

「ケガなんてしないって」


「いや、そうじゃなくって……」


「にゃあん! しっぽはだめぇ!」


 シャロールが気持ちよさそうによがる。


 僕は気まずくなって、シャロールから目を離した。


――――――――――――――――――――


「私、疲れちゃった……」


 あんなに激しくされたら逆に疲れそうだと思っていたが、やはりそうだったか。


「でも、すっきりしたんだろ?」


「うん」


「佐藤はどうだったの?」


「僕は……」


 結局あのイカはシャロールしかマッサージしてくれなかったし……。

 しかも、その間ヒュイさんから特訓だとか言って、しごかれたし……。


「いろいろやったから疲れたよ」


「そっか……」


「今日は眠い……」

「シャロール、もう寝よう?」


 今にも寝てしまいそうだ。


「じゃあ、私が寝るまでマッサージしてあげるよ」


「そうか、ありが……と……う」


――――――――――――――――――――


「あーあ、佐藤寝ちゃった……」


「……でも、疲れてるだろうしマッサージしてあげるね」


「いつもありがとう、佐藤」

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