Seventh target
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「朝だ!」
「お、佐藤君、起きたのかい?」
「今、朝ですよね!?」
「そうだけど……」
「まさか……」
ヒュイさんは何かを察したような顔になった。
「そのまさかです」
「わかった。シャロールを起こしてくるから、ちょっと待っててくれ」
前もそうだったが、ヒュイさんはすごく適応能力があるようだ。
――――――――――――――――――――
「僕はそいつにナイフで刺されて殺されました」
「佐藤君は殺されたのに、大丈夫なのかい?」
「はい。ただ朝に戻ってきただけです」
「う~む」
「やっぱり信じられませんか?」
「ああ」
そうだよな。
こんな突飛な話……。
「彼がそんなことをするとは思えないね」
「え?」
「そのギルド職員のことだよ」
「彼はいつも真面目に仕事をこなしていて、そんな乱暴なことをするなんて信じられないね」
ああ、信じられないのは僕の話ではないのか。
「本当に彼なんだね?」
「はい」
「まあ、それは私が直接見て確かめようじゃないか」
「え……ということは……」
「今日も君達についていくよ」
「でも……それじゃあ……」
「私は先に洞窟に行って隠れているから、君達はそのギルド職員と一緒に来るんだ」
「なるほど」
「前回は洞窟のどの辺まで進んだんだい?」
「ええと、最初の分かれ道が見えてきたところです」
「わかった。じゃあ、私はそのすぐ先に隠れているから、そこまで来たら引き返すように言ってくれ」
「はい」
「でも、足音とかで……」
僕がそう言いかけると、ヒュイさんは猫耳を自慢げに動かした。
「私、静かに歩くのは得意なんだよ」
猫だから?
「どういうことー?」
「難しくてわかんなーい」
まだ寝ぼけているのかシャロールが目をつぶってあくびをしながら言った。
退屈なのだろう。
「シャロール、今日は佐藤君とデートができるぞ」
「本当に!?」
シャロールの目がぱっちり開いた。
ホント、シャロールは極端だなぁ。
「じゃあ、行こうか」
――――――――――――――――――――
「シャロール、迷子にならないように手をつなごうね」
僕は洞窟に入るとシャロールの手を握った。
「む! 迷子になんてならないもん!」
シャロールはちょっと怒ったように口をとがらせてこう言った。
「そうですよ、私もきちんと見てますから大丈夫ですよ」
お前がそれを言うのかよ。
誰が信用するか。
「洞窟の中は暗いし、足元が不安定だから転ぶと危ないだろ」
「僕はシャロールを心配してるんだぞ」
「う~ん、そうだね。ありがとう、佐藤!」
シャロールは僕に満面の笑顔を向けた。
とってもかわいい。
ギルド職員の方をちらりと見ると、顔が少し引きつっているように感じた。
――――――――――――――――――――
おっと、ここは。
「すみません、もう帰ろうと思います」
「そうですか? この先……」
「いえ、ちょっと用事を思い出したんです」
「えー、もっと探したいよー」
「いいや、だめだ」
なぜならここは分かれ道だから。
約束の場所だ。
「そうですか……」
「では、私はあなた方の後ろからついていきますね」
「どうしてですか?」
僕がわざとこう尋ねると、ギルド職員は若干動揺しながら答えた。
「ど、どうしてって……」
「洞窟の奥には危険なモンスターがいるからですよ」
本当か?
それならさっきどうして先に行こうとしていたんだ?
しかし、僕はあえてそれを言わない。
「わかりました」
僕達は出口に向かって歩き出した。
――――――――――――――――――――
「うわっ!」
そんな叫び声がした。
僕が後ろを振り向くと、すでに気絶しているギルド職員をヒュイさんが床に寝かしている。
「佐藤君、危なかったね」
「何があったんですか?」
「彼がナイフを出して、切りかかろうとしてたんだよ」
「えー!」
シャロールが声を出して、驚いた。
僕も全く気付かなかった。
「よし、これで大丈夫だ」
ヒュイさんはロープでそいつの手足を縛った。
「彼が起きたら、ギルドまで連れていくよ」
「君達は先に家に帰りなさい」
「え? 大丈夫なんですか?」
いくら拘束しているとはいえ……。
「私を心配しているのかい?」
「大丈夫だよ、私だってそこそこ強いんだから」
胸を張って、自信ありげにしているヒュイさんは頼もしく見える。
確かにさっきもギルド職員を一瞬で気絶させていた。
けど、本当に大丈夫かな?
「さ、暗くなる前に帰りなさい」
「じゃあ……帰ろうか、シャロール」
「うん……」
僕達は不安な気持ちのまま、家に向かった。
――――――――――――――――――――
「お父さん、戻らないね」
「そうだな……」
あれからだいぶ時間が経った。
もう僕達は夕食を食べて、布団の中だ。
「なんか、大事な話でもしてるんだろうな」
「今日はもう寝ような、シャロール」
「うん……」
シャロールの元気がない。
こういうときは……。
「大丈夫、もしものときは僕が何とかするよ」
僕はそう言って、シャロールの頭をなでる。
「ありがとう……佐藤」
しばらく僕がそうしていると、シャロールは安心して眠ってしまった。
さて、僕も寝るか。
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