Sixth target

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「今日は昨日見つけた洞窟に行くんだー」


 シャロールがウキウキしている。

 今日はやはりあそこに行きたいようだ。


「きれいな石が採れるあそこかい?」

「いいんじゃないか?」


 ヒュイさんは知ってるのか。

 石ってことは……。


「ケスカロールで言うところの、鉱石採取みたいな依頼なんですか?」


「ああ、そうさ」

「いっぱい採れるといいな」


「うん!」


――――――――――――――――――――


「えーと、あれです」

「海のきれいな石の……」


「つまり、ピリオン採取ですね」


「たぶんそれ!」


「それでは、少々お待ちを……」


 そして、しばらく待つと見覚えのあるギルド職員が出てきた。


「こんにちは!」

「君達がピリオン採取に行くパーティーだね」


「はい」


 ええと、この人どこかで……。


――――――――――――――――――――


 思い出した!

 キノコ狩りのときに一緒に来たギルド職員だ。

 シャロールが行方不明になったときは見てなかったとか……。


「痛!」


 僕の声を聞いて、前を歩いていたシャロールとギルド職員が振り返る。


「だから言ったじゃないですか、狭い洞窟では頭上注意って」


「あはは! 佐藤ってドジだねー」


「なんだと~」


 考え事をしながら歩いていたので頭をぶつけてしまった。

 しかし、あのギルド職員は信用できないことを思い出せてよかった。

 今度はシャロールを見失わないように僕がしっかり見ておかなきゃ。


「あ! これですよ!」


「わー! きれーい!」


 僕は二人の足元を見る。


「ホントだ……」


 目の前にはきれいな青い石がある。

 洞窟の中に点在する水たまりの中で小さいながらも光を出して、目立っている。


「一度採っても数日したらまた出てくるんです」


 え……こわ……。

 なんで?


「へー! すごーい!」


 そりゃすごいけど……。


「それじゃあ、もうちょっと奥に行ってみましょうか」


――――――――――――――――――――


「いっぱい採れたー!」


 シャロールは満足げだ。


「これはかなりの報酬金になりますよ」


「わーい!」


 こんな会話をしながら洞窟の入口を目指す。

 来たときは僕が最後尾だったので、今度は僕が先頭だ。


「これでヒュイさんも喜ぶな、シャロール」


「……」


 返事がない。

 疲れたのかな?

 ここまでずっと作業しっぱなしだったからな~。


「大丈夫か? シャロール?」


 おかしいな。

 また前みたいに寝てたりして……。

 いや、だとしてもギルド職員が……。


「きゃー!」


 シャロールの叫びが洞窟にこだまする。


「まずい!」


 嫌な想像が脳裏をよぎる。

 後ろを振り返ると、ついてきていたと思ったシャロールとギルド職員がいない。


「クソ!」


 湿っている洞窟の中を転ばないように慎重に走る。


「あ!」


 しばらく進むと目の前にギルド職員が現れた。


「シャロールは!?」


「わ、わかりません」


 ギルド職員はそう言っておろたえている。

 けど……。


「そんなわけないだろ!」

「あなたは最後尾にいたから、シャロールが目の前にいたはずだ!」


「えっと……」


「どうして見失った!?」


「ちっ」


 ギルド職員が舌打ちをした。

 その顔はいかにも面倒くさそうだった。


「そのまま帰ればよかったのにね」


 ギルド職員はそう言って、どこからともなくナイフを取り出した。

 僕もそのまま殺されるわけにはいかないので、攻撃を避ける……つもりだったが……。

 さすがギルド職員、動きが違う。

 僕なんかでは到底勝ち目がない。


 グサッ。


「じゃあね~」


 こいつ、一体何者なん……だ……。

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