Second day

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「今日はどのモンスターを?」


「今日はイビルバットよ」

「奴らは素早いからちゃんと狙いを定めて剣を振るのよ」


「はい、わかりました」


「で、シャロールは……」


 キャイアさんが寝室の方を見る。


「起きてきませんね……」


 というか起こしたが、布団をかぶって出てきてくれなかった。


「昨日のことがあったから、いろいろ考えちゃったのね」


 僕もそうだった。

 モンスターをむやみに狩るのはやめたほうがいいんじゃないかと考えた。

 彼らにも命がある。


「ま、今日はノーブとホープの二人は行く気みたいよ」


「おう」


「うん」


「じゃ、行くか」


――――――――――――――――――――


「イビルバットはこの洞窟の中によくいるんだ」


 そう言って、ギルド職員のお兄さんは暗い洞窟の中に入った。

 ここではそれぞれが手に持っている、ギルドが貸し出してくれたランプの明かりが頼りだ。


「奴らは非常に攻撃的だから気を付けるんだよ」


「はい」


「ここの洞窟で採掘をしていた作業員が襲われた事例が過去に何度かあったから、討伐対象になっているんだよ」


 そうなのか。

 これはワイルドウルフみたいに、実はさほど危険なモンスターじゃなかったというオチはないだろう。


「気を付けろ! 来るぞ!」


「キー! キキー!」


「うわ!」


 いつの間にか近くに何匹かいたようで、囲まれてしまった。

 サイズは普通のコウモリより少し大きい。

 そして、よく見ると牙がある。

 もたもたしていると、この牙が突き立てられるだろう。


「ノーブ!」


「わかったぜ」


 僕も何もせずにわたわたしているわけにはいかない。

 かといって、こんな狭いところで剣を振るわけにもいかないので、手を振り回してみた。

 すると、運よく僕のこぶしが一匹に当たった。

 そいつは墜落して、消えてしまった。


「おめでとうございます。一匹ですね」


「俺も二匹倒すぜ」


 ノーブがそう言うや否や、僕の周りを飛んでいた二匹が急に弱って、地に落ちた。


「はい。二匹ですね」


 そんなこんなで、僕達はイビルバットを計十匹倒し、洞窟を出た。


――――――――――――――――――――


「今日は十匹倒したので、120ピロー稼いできました」


「まあまあね」


「まあまあ……」


 この世界のお金の価値が未だにわからないが、これでまあまあなのか。

 まあ、あんなに簡単に倒せるのだからそこまで高い報酬は出ないのだろう。


「佐藤は何も感じないの?」


 さすがにもう昼なので起きていたシャロールが僕に尋ねた。


「何の話だ?」


 僕はシャロールの言葉の真意を図りかねた。


「モンスターを殺して」


「それは……」


「シャロール。その話はやめなさいって言ったでしょう」


 お母さんがなだめるようにシャロールに言った。

 しかし、シャロールは興奮して叫んだ。


「だって! イチローみたいなモンスターもいるかもしれないんだよ!」

「なのに殺しちゃうなんて!」


 シャロールが体を震わせ、目にはうっすらと涙をにじませている。


「シャ、シャロール、落ち着いてくれよ」

「僕だって殺すのは悪いと思ってるよ」


「そんなことない!」


「いいや、そんなことある」


「じゃあ、なんで殺したの!?」


 シャロールが僕をにらんだ。


「それは……」

「依頼を達成しないと……」


「そんなこと知ってるよ!」


「じゃあなんで殺すななんて言うんだよ!」


 僕はシャロールのむちゃくちゃな言葉についかっとなって怒鳴り返してしまった。


「うううう……」


 シャロールの顔がみるみる曇っていく。


「佐藤のバカー!!!」


 シャロールはそう言って、寝室に引っ込んでしまった。


「傷つけるつもりじゃ……」


「あーあ、泣かしちゃったな。佐藤」


「泣かした」


「……」


 キャイアさんは何も言わずに、寝室へと入っていった。


――――――――――――――――――――


 僕はきまずくて寝室に入ることができなかった。

 今日は椅子に座って眠ろうかな。


 明日、シャロールに謝ろう……。

 ごめんよ、シャロール……。

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