Battle in Cave (洞窟での決闘)
First battle
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「佐藤さん、こんなものが届いてるわよ」
寝室を出ると、キャイアさんが一枚の紙を僕に渡した。
小さな紙に大きな文字で
「佐藤へ」
と書かれている。
ラブレターか?
「今日の朝、誰か来たみたいで物音がしたの。玄関に出るとこれが」
そこにはこう書かれている。
「果たし状」
嫌な予感がする。
「明日の朝、コモサ洞窟にて待つ」
話し合いならうれしいのだが、果たし状だもんな……。
「真剣勝負につき、一人で来い」
一人か~。
最後には名前が書かれている。
「ドラム」
奴には恨まれる心当たりがありすぎる。
「なんだか面倒なことになったようだね」
「そうですね……」
まずいのは一人で行かなければならないことだ。
前回のようにシャロールの力を借りることができない。
「どうするんだい? 佐藤さん」
「行きます」
「そんな……」
「奴は僕たちが寝ているときに襲うことだってできたはずです」
「それなのに、わざわざ真剣勝負を申し込んできた」
「そうね……」
「一見すると、というか事実悪い奴ですが、まだ彼も完全に悪に染まりきっていないと僕は信じています」
「……わかったわ」
「あなたのしたいようにしなさい」
キャイアさんは諦めたような顔になった。
「ありがとうございます」
「ただ、無理はしないでちょうだい」
「わかってます」
「でも、これ明日でしょ?」
「今日は何をするんだい?」
それならもう考えている。
「今日は……」
「お母さん、おはよー」
シャロールが起きてきた。
「シャロール、おはよう」
「佐藤、今日は何をするの?」
改めて……。
「今日はオリーブさんのところに行って、剣の練習をしに行くんだが……」
「シャロールもどうだ?」
「えー、またー!?」
「それにノーブはノーチルさんに謝りに行かなきゃいけないだろ」
「うーん、そうだね」
「オリーブさんに今日の予定を聞いてくるから、その間にあいつを起こしてきてくれ」
「わかったよー」
さて、オリーブさんは暇だろうか。
<今日は暇ですか? by佐藤>
なんだかナンパをしている気分だ。
<今日は仕事です。 何か用ですか? byオリーブ>
<はい。また剣について教えてほしくて by佐藤>
<わかりました。昼からは空いているので、大丈夫です byオリーブ>
よかった。
「じゃあ、行くぞー」
僕は声をかけた。
「早く起きて!」
「うう、俺はまだ眠い。シャロール」
大丈夫かな?
寝室からいち早く出てきたのはホープだった。
「私も行く」
「ホープも行くのか?」
それは想定外だった。
「うん」
なんだか思っていたより大人数になっちゃうな。
「それならあたしも行こうかしら。久々にあいつの顔も見たいしね」
「キャイアさんも!?」
「あら、あたしだけ留守番してろって言うの?」
「い、いえ」
「じゃ、みんなお泊り会の荷物をまとめなさい」
「泊るんですか!?」
「だめなのかい?」
「それは向こうに聞いてみないと……」
「あたしとノーチルの仲さ。きっと大丈夫だよ」
僕たちはみんなでオリーブさんのところに行くことになった。
――――――――――――――――――――
「こんにちわー」
「あ、佐藤さん。と、シャロールさんにキャイアさん」
そして彼女はノーブとホープを見た。
「えっと、あなた方は?」
「ノーブだ」
「ホープです」
「ちょっと事情があって、一緒に住んでるんです」
「はあ……」
オリーブさんはあまりわかってなさそうな適当な返事をした。
「オリーブさん、お仕事はもう大丈夫ですか?」
「ああ、はい。もう終わりました」
「さっそく外に行きましょうか」
オリーブさんは外に向かって、歩き出した。
「じゃあ、その間あたし達はノーチルに会いたいんだが……あいつはどこだい?」
「父は今出かけてまして……」
オリーブさんは困った顔だ。
「よければどこに行っているか教えてくれるかい?」
「ええっと……なんでもコモサ洞窟に得体の知れない魔物が出るという噂があるようで……。それを調査してくると言って、今朝早くに家を出ました」
「それっきりまだ戻らないと」
「はい。困った父です」
「はっはっは。あいつは昔っからそんな奴だったよ」
「そうなんですか?」
「そうさ。あいつに何回困らされたことか」
「まあ、そういうことならしばらく会えないだろうから、そこの客間で休憩でもしていていいかい?」
「はい」
そして、オリーブさんは僕達の方を向いた。
「では、行きましょうか」
――――――――――――――――――――
「なるほど、ドラムと対決ですか」
僕が事情を説明するとオリーブさんはこう言った。
「はい。どうにか勝てないかと思って」
「う~ん。今の佐藤さんの実力だと難しいでしょうね」
え!
「彼とてそこらのチンピラよりは強いですからね。私もギリギリ勝てたくらいですから」
そうなのか。
「一応彼の剣術には癖があるので、対抗策を考えてみましょうか」
なるほど、それはありがたい。
「ありがとうございます」
「では、今日はドラムのように重い一撃を放つ敵の対処法です」
「シャロールさんにも無関係じゃないので、まじめに聴いてくださいね」
オリーブさんはボーっとしているシャロールを見て、言った。
「は、はーい」
シャロールの耳が注意されて、ピーンと立った。
――――――――――――――――――――
「おっ」
「あら」
「キャイアじゃないか」
「久しぶりね、ノーチル」
「どうだったの? コモサ洞窟は」
「オリーブから聞いたのか?」
「まあ……確証はないが、何かがいることは確かだな」
「ずいぶん曖昧ね」
「奴め、わしが強いと判断して、気配を隠しおったんじゃ」
「あらあら」
「とにかくあそこは並の冒険者が行くのは危険じゃ」
「それは困ったわね」
「ん? どうしてだ?」
「あんな場所行くやつ、めったにおらんじゃろ」
「それが……」
――――――――――――――――――――
「ごはん……」
「疲れたよ……」
「お疲れ様でした。お二人とも頑張りましたね」
「「あ、ありがとうございました」」
僕たちはふらふらしながら、ご飯のにおいのする方向に向かって歩いていく。
「あら、ちょうどよかった。今呼びに行こうと思っていたのよ」
オリーブさんのお母さんがそう言った。
食卓にはみんなついている。
僕達も椅子に座った。
「いただきまーす」
おなかが減った僕はご飯をがつがつ食べ始めた。
「佐藤君」
ノーチルさんが僕の名前を呼んだ。
「はい?」
僕、何かした?
「コモサ洞窟に行ってはいけないよ」
突然そんなことを言われて僕があっけにとられているとノーチルさんは続けた。
「あそこには名状しがたき何かが潜んでいる」
「決して軽い気持ちで行ってはいけないぞ」
ノーチルさんはものすごく真剣な顔だ。
「は、はい。わかりました」
僕はその気迫に押されて、つい適当な返事をしてしまった。
そして、ノーチルさんはすぐに顔を穏やかにして別の話を始めた。
「しっかし、わしを動けなくしたのがこの小僧だとは思わんかったわ」
「小僧じゃない! ノーブだって言ってるだろ!」
「すまん、すまん。またわしに黒魔術をかけてもいいぞ」
「何の話ですか?」
オリーブさんはわけがわからないといった顔だ。
「僕が説明しますよ」
「実はノーブが……」
――――――――――――――――――――
「ごめんなさいね。ここしか使える部屋がなくって」
「おかまいなく。布団も持ってきたわ」
「あらそうなんですか?」
運んだのは僕なんだけどね。すごく重かった。
……いつぞやのシャロールを運んだ時の方がもっと苦労したけど。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「はーい」
僕たちは二枚の布団に詰めて眠った。
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