Third mystery
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あいかわらずまぶしいな、この部屋は。
さて、どうしようか。
僕はベッドから体を起こし、考える。
シャロールが奴らと知り合いなのは間違いないだろう。
そして、さっき僕を殺した奴らは森で出会った奴らと同じはずだ。
つまり、スライム討伐に行かなくても殺される。しかし、行ってももちろん殺される。
このままでは、僕の人生は詰んでいる。
なんとかしなくては。
まず、シャロールと奴らの関係について知りたい。
前回の最後に奴らはシャロールのことを「収入源」と言っていた。
この言葉の意味することとは…。
ピコン!
<メッセージを受信しました>
シャロールからだろう。
とりあえずスライム討伐に行くと返信を送る。
彼女の誘いに乗ってみないと話が進まない。
誘い?
誘い……。
彼女の誘いに乗って……。
まさか……わかったぞ!
まず、シャロールが僕のような冒険者をだまして、彼らのもとに連れていく。
そして、彼らはだました冒険者を殺して、金目の物を奪う。
だから、冒険者を連れてくるシャロールを収入源と呼んでいる……のだろう。
しかし、なぜシャロールはあんな奴らに協力しているんだ?
あんな普通の女の子が盗賊まがいの奴らと知り合いだなんて何か引っかかる。
シャロールと彼らの関係を調べれば何かわかるかもしれない。
僕が殺されずに済む方法が。
そこまで考えると、僕は部屋を出た。
ギルドの入口にはシャロールがもう立っていた。
「おはよう」
「おはようございます!」
彼女は元気にあいさつをした。が、よく見ると彼女の顔はどこか不安げだ。
これから彼女が行うことを考えるとそんな顔になるのも納得できる。
このままギルドに入って、悠長にしゃべっていると奴らがやってきて殺されてしまう。
そこで僕はこんなことを提案した。
「シャロールちゃん、スライム討伐に行く前に朝ごはんが食べたいんだ。おなかが減っていると力がでないからね」
彼女は少し驚いた。
しかし、黙って聞いてくれている。
なので、僕は話を続ける。
「けど、ギルドの食堂は安いんだけどあんまりおいしくなくてさ……。どこかおいしいレストラン知らない? 僕、この町に来たばっかりであんまり知らないんだよね」
「どうしても、朝ごはん食べたいんですか?」
「早く行かないと……」
彼女は焦っているような、困っているような顔でこう言った。
しかし、僕はそれでも朝ごはんにこだわるふりをした。
「どうしても何か食べたいんだ。どこかこの近くでおいしいお店知らない?」
「う~ん」
彼女は悩んでいるようで、かわいい唸り声をあげた。
しかし、何かを決めたように僕の顔を見て
「もう、仕方ないですね。すぐ帰ってきますからね」
と言った。
そして、突然ギルドを出て走り出した。
「早く来てください!」
「時間がないんですから!」
僕はあわてて、彼女についていく。
どれくらい近くにあるお店なんだろうか。
「着きました、入ってください」
え! 近い!
まだギルドを出たばっかりなのに。
しかも、ここお店というより普通の家じゃないか……?
「ここはなんていうお店なの?」
「ここは私のおうちです。お店じゃありません」
「え……」
僕が驚きで言葉に詰まっていると彼女は
「私のおうちでご飯を食べるのが一番早いと思ったんです。早くご飯を食べて依頼を受けに行きましょう」
と言って、キッチンで何か作り始めた。
昨日知り合ったばかりの僕を家に入れて、しかも手料理まで……。
シャロール、もしかして僕のこと好きなんじゃ……いや、これはきっとゲームのイベントだろう。おそらく彼女にその気はない。
家に招き入れるのは驚いたが、このイベントに何か重要な意味があるのだろうか。
この彼女の家で手がかりを見つけないと、イベントが進まない気がする。
そう思い、あたりを見渡していると……。
「できましたよ~。召し上がれ」
彼女が料理を運んできてくれた。
「さあ、早く椅子に座って、食べちゃってください」
僕は言われた通り椅子に座る。
「いただきます」
そして、料理を食べ始めた。
彼女は自信ありげな顔で僕に話しかけた。
「どうですか? 私の……」
「ゴホッゴホッ! シャロールや……!」
しかし、奥の部屋から声が聞こえて、シャロールの声が遮られる。
「はーい!」
シャロールはそれを聞くや、奥の部屋に急いで向かった。
僕は気になったのでその部屋に行ってみようかと思ったが、すぐにシャロールが戻ってきた。
しかし、顔に先ほどの元気がない。
「どうしたの?」
僕は尋ねたが、彼女は答えない。
しばらくの沈黙の後彼女は話し始めた。
「私のお母さん、病気なんです」
「それを治すにはとても高いお薬が必要なんです……。でも、家にはそんなお金がなくて……」
「だから冒険者になってお金を……」
「ああ、いえ、違、でも、そうか……。はい、そんな感じです」
妙に言葉がしどろもどろだな。何か隠し事がありそうだ。
「シャロールちゃん、何か隠し事してない?」
僕は思い切って聞いてみた。
「え……!」
彼女の顔が驚きに変わった。
「それは……」
バンッ!
彼女の答えを聞く前に家の扉が勢いよく開いた。
「おいおい、シャロールちゃん。逃げても無駄だぜ~」
「ヒィッ」
奴だ。
「お前の大事なお母さんの病気を治すにはお金が必要だよな~。そのために俺らに協力するって言ったよな~」
協力する?
やはりシャロールちゃんは奴らとつながっているのか?
いや、それよりこのままではまた僕は彼らに殺されてしまうだろう。かといって、抵抗しても奴らを全員倒せるとは思えない。
シャロールと奴らが話している間に何かできないか……。
そうだ、スキルは使えないのか?
「ステータス、オープン……」
小声でステータスを開き、スキルを見る。
やはり、「なし」と表示されている。
スキルを選択してみるが、何も起きない。
本当に使えているのか?
「おい、お前。早く来い!」
「うるさい! 時間がないんだよ!」
焦った僕は声を荒げて、言い返した。
すると、目の前が突然暗くなり始めた。
それと同時にこんなメッセージが表示された。
フォン。
<スキルが使用されました>
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