Second mystery
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まぶしい朝日……。
昨日と同じような一日の始まりだ。
いや、同じ「ような」ではなく、同じ日だ。
ここがセーブ地点だから戻ってきたのだろう。
寝ぼけた頭を必死に動かして、考える。
僕は今日、シャロールとスライム討伐に行って謎の男達に殺される。
もっとも、前回と同じことをすればだが。
ピコン!
<メッセージを受信しました>
おそらくシャロールからだ。
しかし、前回と同じことをするわけにはいかないのですぐに返事はできない。
ここは慎重に考えて返事をしなければ。
僕は彼女の誘いに乗って、スライム討伐に行った。
しかし、そこで謎の男達に襲われる。
彼らは通りすがりの盗賊かもしれない。
しかし、なぜ奴らはシャロールに知り合いかのように話しかけていたんだ? シャロールに盗賊の知り合いがいたのか?
その可能性はあるが真相はわからない。
しかし、気になるのは奴らの発言だ。
僕が「だまされたことに気づいていない」と言っていた。
奴らとは初対面だし、出会ってすぐに襲ってきたのでそれをだますとは普通言わないだろう。
奴らが僕をだましたわけではない。
じゃあ、誰が……。
ピコン!
<メッセージを受信しました>
おっと、またシャロールからか?
<あの~、迷惑でしたか? すみません、どうしてもスライム討伐に行きたくって誘ってしまいました。だめですか? byシャロール>
彼女はよっぽどスライム討伐に行きたいようだ。
しかし、スライム討伐に行くと殺されかねない。
別の依頼を提案してみる。
<依頼を受けるのはいいのですが、スライム以外のモンスターにしませんか? by佐藤>
すると、すぐに返事が来た。
<スライムは一番簡単に倒せるモンスターなので初心者が最初にやるべき依頼だって聞いたことがあります。私もあなたも初心者で一度もモンスターを倒したことがありませんし、まずはスライム討伐に行きませんか? byシャロール>
やたらスライムにこだわるな。
思えば前回スライム討伐に行ったときも彼女は森に入ってまでスライムを狩ろうとしていた。
初心者なので、まずは安全なスライムを倒したいのだろうか。
そういえば……。
森に入る前にギルドのおじさんが何か言っていたよな。
森にはスライムよりも強いモンスターがいると……。
しかし、それを聞いても彼女は森に入ろうとした。
スライム討伐以外の依頼は受けないと言いながらも、スライム以外のモンスターもいる森になぜ入ったんだ?
まさか……。
僕は考えをまとめると彼女に返事を送り、部屋を出た。
彼女から来た返事は前回と同じだった。
ギルドの入口に行くと、すでに彼女はそこにいた。
彼女に声をかけ、ギルドに入る。
しかし、今度はすぐに依頼を受けるわけにはいかない。
僕は近くにある椅子に腰かけ、彼女を呼び止めた。
「ちょっと、話をしない?」
彼女は少し怪訝な顔をした。
「どうしてですか? 早く依頼を受けましょうよ」
「まだ起きたばっかりで頭がボーっとしてるんだ。このままスライム討伐に行くと危険だからね」
「何か目が覚めるような話をしようよ」
彼女は依然として椅子から動かない僕を見て諦めたようで、不満そうな顔で僕の向かいの椅子に座った。
「ちょっとだけですよ?」
「他の冒険者がスライム討伐に行く前に早く行きたいんですから」
「それで、目が覚めるような話って例えば何を話すんですか?」
僕は少し考えるふりをしたのちに
「うーん」
「例えば君が僕をだまして、殺そうとしていることとかかな?」
と言った。
その瞬間彼女の顔がこわばった。
しかし、すぐに表情を戻し、焦りながら反論した。
「な、何を言ってるんですか!?」
「そんなことあるわけないじゃないですか!」
彼女はそう叫んで立ちあがった。
そして、そのまま依頼板の方に行ってしまった。
「はっはっは、目が覚めたのは君の方だったみたいだね」
僕は適当にごまかした。
彼女の動揺の仕方から考えて、どうやら図星だったようだ。
しかし、どうしたものか。
いくら彼女の計画がわかっていても、それを止めることができなければ意味がない。
彼女はどうしてもスライム討伐に行きたいようだし、別の依頼を提案しても無駄だろう。
では、彼女がスライム討伐に行くのを妨害するのはどうだろうか。
例えば、僕が彼女についていくことを拒否すればどうなるだろうか。
とりあえず奴らに殺されることはないだろう。
やってみる価値はありそうだ。
「いたたたた! おなかが痛い!」
僕がそう叫ぶと、受付で依頼を受ける手続きをしていた彼女が振り向いた。
「大丈夫ですか?」
彼女は心配そうに尋ねた。
「ここでじっとしていれば治りそう……」
「けど、スライム討伐には行けそうにはないよ……」
僕がそう言うと彼女は困惑した顔をしている。
「どうしても……無理ですか……?」
「ごめんね……」
しかし、彼女は食い下がった。
「しばらく休憩したら行きませんか?」
「私、ここで待ってます」
しかし、行くわけにはいかない。
なにしろ殺されるのだから。
「いや……しばらく治りそうもないよ」
「今日は……」
「おいおいおいおい、シャロールちゃんよ~」
「約束はどうしたんだあ?」
僕の言葉はギルドに入ってきた何者かに遮られた。
人相の悪いそいつはシャロールに語りかける。
「俺たちは朝早くからスライム狩って、暗い森の中でずっと待ってたってのに、シャロールちゃんはのんきにおしゃべりしてるとは思わなかったぜ」
「どいうことだ!?」
そいつは大きな声で叫んだ。
「それは……彼が……」
彼女はおびえながら僕を指さした。
「そいつが今日の獲物なのか?」
そいつはじろりと僕を見た。
「ここじゃ人目に付く、表に出な」
嫌な予感がした僕はそう言われても動かなかった。
「お前、このドラム様に逆らうとはいい度胸じゃねえか」
「お前ら、こいつを町の外まで連れていけ!」
そう目の前の男が叫ぶと、何人もの男共がギルドに入ってきて僕を取り囲んだ。
そして、そのままギルドの外に連れていかれた。
シャロールの方を見ると、彼女は複雑な表情をしている。
「ごめんなさい!!!」
ギルドから出たとき、後ろから彼女の声が聞こえた。
――――――――――――――――――――
彼らは町の外に出ると、僕を森まで連れて行った。
死を覚悟した僕は質問をしてみた。
「お前らの目的はなんなんだ?」
「目的? そんなの金に決まってるだろ」
「どうして森に来たんだ?」
「森じゃないとばれるだろ」
僕は最後にこう尋ねた。
「シャロールとお前達はどういった関係だ?」
「はっはっは、そんなことが知りたいのか? これから死ぬってのに」
「いいだろう、冥途の土産に教えてやる」
「あいつは俺たちの大事な収入源だ」
「収入源? どういう……」
グサッ。
「おしゃべりはここまでだ。あばよ」
目の前がだんだん暗くなっていく。
次こそはシャロールの謎を完全に解き明かす……。
そう心に決めたと同時に僕は意識を失った。
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