第六十一章 鬼の里
第六十一章 鬼の里
「
「
「当たり前だ。それがどうした?」
「
「心配するな
俺がそう言うと
「心配性だな。いいものをやろう。」
「いいもの?」
「もういい!」
俺を睨みつけながら
「
俺が
「行くぞ。」
俺は
山に着くや否や、
「
「
「はい。
「
「はい、そうです。
「私は
「それは失礼いたしました。
「そちらは?」
「
俺が一言そう言うと、
「あの
「そう毛を逆立てるな。今は
俺は
「しかし、こやつは
「いい。昔のことだ。」
「
「トシ子の旅館はどうなっている?」
俺は
「トシ子が死んで管理する者がいなくなり、すっかり
旅館の玄関の前に立つと
「おーい、客人を連れて参った。」
「シスルナ!」
「おや、
シスルナは落ち着き払った調子で言った。攻撃はおろか逃げる
「シスルナは訳あって
「もしお暇なら中で昔話でもお聞かせいたしましょうかえ?
シスルナが上品な笑みをたたえて言った。攻撃態勢に入った俺たちを前にしても動じないとはなかなか食えない奴だ。
「どうする
「聞いてみたい。
旅館の中に一歩足を踏み入れると、昔と変わらず食堂があった。当時から古い古いと思っていたが、椅子や机はますます
「トシ子は百まで生きましたが、死ぬまでピンシャンしておりました。」
「そうか。あの女らしいな。」
俺は一言だけそう言って、それ以上トシ子のことに触れなかった。
「
そう言ってシスルナが茶を出した。全員古びた食堂の椅子に座り、シスルナが話し出すのを待った。
「はて、どこから話したら良いものか。」
シスルナは
「なぜ
「それはひとえに
シスルナは迷うことなくそう言った。
「矛盾しているじゃないか!お前は
「
シスルナは淡々とそう言った。始終薄気味悪い笑みを浮かべているが、腹の内に何か隠しているようには見えなかった。こういう顔なのだろう。
「
「
シスルナはそう答えた。
「シスルナ、さっき、ハテルナが妹だと言ったな。シスルナも鬼の里の場所を知っているのか?」
「ああ、知っている。」
シスルナは
「シスルナ、鬼の里まで案内してくれないか?
「ダメだ。」
シスルナは短くそう言った。
「なぜだ!?」
控えていた
「人間を連れて行く訳にはいかない。鬼の里なのだから。」
シスルナが
「鬼ならばいいのだな?」
「ああ。良い。」
シスルナが首を
「
「えっ。」
「でも
「私にはもともと
「分かった。
「シスルナ、鬼の里にはいつ行ける?」
「いつでも。今から行こうかい?」
シスルナが冗談のつもりで言った。
「それは助かる。」
「ずいぶんせっかちな人間だね。」
シスルナが笑いをかみ殺しながら言った。
「
「う、うん。」
「先に言っておくが、私が案内できるのは鬼の里の入り口まで。そこから先は一人で行っておくれ。」
シスルナはそう言った。
「入り口までって、どうして?」
「目的がどうであれ、私は
シスルナが悲し気にそう言った。故郷に帰れず彷徨うしかないのだ。当然の処遇と理解しながらも
「そうか。分かった。」
「では、行くのだろう?すぐに?」
シスルナが気を取り直すように言って立ち上がった。
「うん。」
「じゃあ、行って来るね、
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