第四十六章 猛る妖狐

  第四十六章 たけ妖狐ようこ


 花嵐はなあらし。花のさかりに強い風が吹き、一晩ひとばんってしまうと風情ふぜいがなくて興醒きょうざめする。この土地の桜は春の海風うみかぜを受けて、今夜にもろうとしていた。


 「光輝こうき、何を見ているの?」

 風呂ふろから上がって部屋に戻って来た小子しょうこが俺に尋ねた。箱の中にいるあやかし退治たいじするため、小子しょうこはしばらく古賀徳治こがとくじ屋敷やしき滞在たいざいすることになった。

 「桜を見ていた。今夜にも散りそうだ。」

 「わあ、桜吹雪さくらふぶき綺麗きれい。」

 小子しょうこ無邪気むじゃきに喜んだ。湯上ゆあがりの体からはくちなしの花の香りがした。

 「湯につかかって軟膏なんこうが洗い流されたようだ。あやかしに狙われるといけない。なおしてやろう。」

 白木しらき小子しょうこりをして、この土地のあやかしを殺し回っているものだから、小子しょうこは人間の女であることをかくすためにおのれにおいをさなければならなかった。

 俺がそう言うと小子しょうこは素直に軟膏なんこうが詰まった貝を持って来た。湯上ゆあがりの体に満遍まんべんなくってやった。


 「光輝こうき、ありがとう。」

 そう言った小子しょうこの目はうるんでいた。浴衣ゆかたすそからはむっちりとした太ももがのぞき、胸元むなもとはだけていた。れる果実がさそっていた。


 口づけをして押し倒すと、小子しょうこはすぐに足をひらいた。熱いみつしたたっていた。軟膏なんこうるため、肌の上に手をすべらせただけなのに官能かんのうに火がついたようだ。


 小子しょうこ官能かんのうに火がつくと、じっとはしていられない。もだえるようにこしをくねらせ、背中をらせる。俺がその体を指でなぞり、手をわせると、さらに動きを激しくする。優しく緩慢かんまん愛撫あいぶを続ければ、じれったそうにうなり、自分から手足をからめてこしを押し付けて来る。

 小子しょうこの動きに合わせて激しく刺激的な愛撫あいぶをすれば可愛かわいらしい声でき始める。まるでけもののようだ。


 小子しょうこに合わせて緩慢かんまんな優しい愛撫あいぶから始めて、ゆっくりと全身に手をわせた。心地良ここちよさに小子しょうこをよじり始めたところで、ふくらんだ胸をみ、舌をわせた。小子しょうこは『もっと』とでもねだるように背をらせ、大きくこしをくねらせた。


 指でなぞりながら小子しょうこ首筋くびすじからはらまで舌をわせた。舌がはらまで辿たどり着き、指が次の行先ゆきさきを示すと、訪れる快楽かいらくを予感して、小子しょうこ恍惚こうこつとした笑みを浮かべた。期待にこたえてやると、何ともうれしそうにき、一層大きく足をひらいた。


 何度も快楽かいらくを刺激し、快感かいかん味合あじあわせてやると、体の深部しんぶからあつみつき出して来た。そろそろ頃合ころあいだ。


 人の言葉を忘れて、気持ちよさそうにき続ける小子しょうこの奥深くに突き立てると、完熟かんじゅくした甘い果実の香りが広がった。この香りは絶頂ぜっちょうを味わっている時にかおるのだと知っていた。むさぼるように甘い果実をかじった。したたみつとどまることを知らない。小子しょうこなやましい姿態したいあやしいこしつきでさそい続けた。俺もくるおしい程の快楽かいらくの中でたけり、くるった。


 「いやっ」

 と叫ぶ声が聞こえた気がしたが、よく聞こえない。小子しょうこならけもののようにくはずだ。

 「光輝こうき。」

 小子しょうこの呼びかける声が聞こえた。

 「お願いここまでにして。これ以上は・・・」

 確かに小子しょうこはそう言った。

 「まだだ。まだ終わっていない。」

 そう言って、口づけをして続けようとしたが、小子しょうこ大胆だいたんひらいていた足をじた。


 外の桜は散っていた。春は過ぎ去ってしまったようだ。


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