第十四章 魔鏡
第十四章
十二の誕生日、私は
エネルギーが溢れていると言えば聞こえがいいが、狭くて息苦しい。
母さんと父さんに付き添われて行った
ここは好きになれそうだ。
「おーい、
「
「ありがとう。」
私までウキウキしてきた。
「
「久しぶりに
母さんが目を細めて言った。
母さんは
だが父さんは大反対だ。母さんを一生自分の
「私に会いにまたここに来てよ。」
私は母さんにそう言った。
「うん。」
母さんは頷いた。横にいる父さんが
「来てくれ。広間で
「ここだ。どうぞ中へ。」
「お久しぶりです。」
広間に入ると母がそう挨拶をした。これが貴人。昔から話には聞いていた。
「
「
そう言って
「初めまして。
私も頭を下げて挨拶した。
「礼儀正しいね。それならここでも上手くやっていけるよ。」
「ありがとうございます。」
「緊張しているの?」
「ちょっと。」
そう答えるとふふふと声を立てて笑った。
「じゃあまずは
「実は
「これなんだけど。」
「ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「どうぞ。」
「これは
私はそう言った。言葉の選び方を間違えたらしい。遺品という言葉が
「そうだよ。これは
「そんな貴重な物を戴いていいんですか?」
私の横に座っていた母さんが心配して貴人に尋ねた。
「僕と
「母さん、貰ってもいい?」
「大切にしなさいね。」
母さんはそう言って念を押して許可した。
「大切にします。
私がそうお礼を言うと、二人共満足そうな顔をした。
「おい、
父さんが
「実は僕たちも知らないんです。ただ、
「いわくつきではないか。」
父さんが文句を言った。
「
「普通の鏡みたいだね。」
私が母さんに言った。
「そうね。」
母さんもそう言った。同じように見えているようだ。
「失礼します。」
そう言って、後ろの襖≪ふすま≫を開けて誰かが広間に入って来た。男の声だ。
「あっ」
母さんが小さな声を上げた。知っている人のようだ。父さんも神経を逆なでされたような顔をしていた。
そしてふと
「お茶をお持ちしました。」
そう言った男は真っ黒な服を着て、もう春なのに手袋をつけていた。その出で立ちも目を引いたが、何より金髪と緑色の瞳が人目を引いた。外国人だ。
「ノーマン、ありがとう。君も座って。」
「
「英語の?」
「いやいや。
私が尋ねると、貴人が可笑しそうに笑って言った。
「初めまして、
「あ、初めまして。
ノーマンが私の性別を誤解しているようだったので、敢えてそう言った。私も誤解を受けるような名前と出で立ちだから仕方ない。この名前でショートカットは良くない。
「えっ、あ、すみません。てっきり・・・」
ノーマンはそう言いながら
「ごめん。言い忘れていた。」
「あの、
ノーマンが言った。
「
私はそう言った。
「あ、ええ。分かりました。」
先生はそう言った。私に気おされている感じがした。気弱そうな男という印象を持った。
「
横から父さんが水を差すように嫌味を言った。何かあるとは思ったが、先生は人間ではないらしい。しかも父さんは先生のことが嫌いと来ている。
「長年、
先生は言い返した。こちらが本性か。
「お前は
父さんがまた嫌味を言った。
「
「ああ、そうだったな。
父さんが投げやりに言った。そしてふて
「お茶を頂いたら帰ろうかしら。トシ子さんも待っているだろうし。」
母さんが場の雰囲気が悪くなったのを察してそう言った。そう。こういう時は逃げるに限る。私も母さんも出されたお茶をぐびぐび飲んだ。
「詳しいことはまた明日にでも
「はい。」
私は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます