第十三章 輝明
第十三章
私は
ずっと
そんなある日、
「ごめん下さい。」
昼下がりの温かい午後だった。
「はーい。」
玄関に行くと二つの影法師が並んでいた。
大きな大人の影法師と同い年くらいの小さなか影法師。大きい方は人間で、小さい方は鬼だ。こんなところに人間の子供を連れてくる訳がない。
「何か御用ですか?」
戸を開けずに尋ねた。
「
男は扉越しにそう言った。母さんの名前だ。
「少々お待ち下さい。」
私は玄関の外に客を待たせたまま母さんを呼びに行った。
「母さん、今
そう言いながら寝室の
「勝手に開けるな。」
父さんが不機嫌そうに立ちはだかった。着物がはだけていた。取り繕うつもりはないらしい。
「物投げることないじゃん。」
枕を拾いながらそう抗議したが、無視された。
「誰が来たって?」
父さんはまた不機嫌そうに尋ねた。
「
そう言うと、父さんも知っている人なのか、
「
服を着た母が父の横に立った。取り繕っても無駄だ。何をしていたかは明らかだ。昼間っから何してんだか。
「
何事もなかった振りをして母さんが言った。
「うん。分かった。」
私はそう言って台所に向かった。
お湯を沸かしている間に母さんが二人を客間に通した。不機嫌そうな父さんも客間に入ったようだ。人間の男、父さんに喰われたりしないだろうな。早くお茶持って行こう。そんなことを考えていた。
客間にお茶を持って行くと、最初に同い年くらいの少年と目が合った。やっぱり鬼だ。私の顔を正面から見つめるその目は隣にいる
嫌な視線を感じながらも客人にお茶を出した。
「これが
母さんの
「女ですけど。」
そう私がポツリと言うと、
「え?」
「女です。」
「え?」
「性別は女です。」
「・・・何で?」
「何でって・・・」
その質問には上手く答えられなかった。
「魔除けのために男の子の名前をつけたんです。」
母が言った。
「いや、魔除けって半分自分が魔でしょ?」
「その子は人間だよ。」
「半分でも人間の血が入っていたら人間だよ。」
鬼が
「へえ、そう言うもんなのか。」
「うん。朽ちる肉体を持っているからね。」
鬼はそう続けた。賢そうな奴だと思った。
「名前、何て言うんですか?」
私は鬼に尋ねた。淡々とした私の口調が不自然に感じられたのだろうか?鬼は私を意味ありげに見つめた。
「僕は
「
「そうです。何で分かったんですか?」
「僕のことを欲しそうな目で見てたから。」
「ダメだよ。
「なぜ
母さんが
「ああ、じゃあ、そろそろ本題に入ろうか。」
「実は俺、
「今は
「
母さんが
「
母さんは
「今日ここに来たのは
「実は俺の甥っ子も今年から
「悪いが、
父さんは相変わらず
「もうちょっと話聞いてもらえませんか?もしかしたら、
「
父さんがそう続けると
「
聞いたことがないという口ぶりだった。
「
母さんが説明した。
「へえ。」
「何?輝明?僕の顔に何かついてる?」
ジロジロと私が見ているのを不快に思った
「目と鼻がついてる。」
私がそう言うと、
「
「うーん、そうだな。」
「旦那さん、
「お見送りします。」
母さんが言った。母さんが見送るならと父さんも当然立ち上がった。警戒心の強い父さんは決して知らない奴らと母さんだけにはしておかなかった。こうなったら家族三人でお見送りだ。
玄関で
「
私がそう声を上げると同時に
「ごめん下さーい。」
やっぱり
「おっ、またお客さんか。賑やかだね。」
開かれた扉の向こうで
「どうも。」
「どうも。」
「
「ああ。そうですか。」
「
気を遣う母さんに
「やれやれ、帰ったな。」
父さんが疲れたように言った。
「客人がいたのか。間が悪かったかな。」
そう言いながら
「気にするな。もう帰った。上がれ。」
父さんが太陰に言った。
「いらっしゃい。寒いから早く中に入って。」
母さんが言った。
「
私も言った。私も
いつものように
「すぐにお茶を持って来きますね。」
母さんが
「ねえねえ、さっき来たの母さんのお客さんだったんだ。
「ああ。知っているよ。私は好かないね。あの連中。好戦的過ぎる。」
「そうなの?」
「そうだよ。戦闘能力が高い分、自信過剰で、すぐ挑んで来る。私も絡まれたことがあんだ。」
「私、
「そうだよ。
「そう言えば、
「父さんなら
「それは光栄だな。」
二人で話しているところに父さんと母さんが入って来た。父さんはやっぱり、みかんが入った籠を抱えていた。
「お茶が入りました。みかんもありますよ。」
母さんがそう言って太陰にお茶を差し出した。お茶とみかんが行き渡ると、
「今日はどうして訪ねて来てくれたの?」
母さんが嬉しそうに尋ねた。
「もうじき
「春にはこの屋敷を出るのね。」
母さんが感慨深そうに言った。
「住むところは
早速
「いや、
父さんが言った。
「こちらとしては
太陰がそう言いかけたところでまた父さんが口を開いた。
「小子が
「体裁かあ。私にはよく分からないな。」
「トシ子さんのところには
母さんが言った。私は
「まあ、それもいいか。しばらくは
「え、どうして?」
思わず私はそう口にした。
「まだ話していなかったな。」
真剣な表情をして
「私は平安時代、
「
私は言った。
「
「ある程度の力をつけるまでは
「分かった。」
私のその一言で
「本当か?
「うん。」
「ならばお前が最強の
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