第十二章 幽世
第十二章
目を覚ますと温かい布団の中にいた。傍らには
「気が付いたか?」
「どうした?まだ傷が痛むのか?全部治してやったはずだが。どれ、見せてみろ。」
横たわる私に
「
そう呼びかけると、
「また会えた。」
「当たり前だろ。」
長い爪と鋭い牙を持った
「尼寺はどうなったの?」
気になって仕方がなかった。
「俺が行った時には尼寺に火が放たれていて、
「そう。」
これ以上聞いても仕方のないことだと分かっていた。起きてしまったことは変えられないし、私には何もできない。
「
今度は
「覚えてる。確か・・・」
そうだ。意識を失う前に、
「あの壺には
鬼女と聞いて背筋が凍った。
「安心しろ。
「確かに声が聞こえた。封印を解いてって。でも何もできなくて、気が付いたらここに・・・。」
「そうか。」
そう言って
「子がいる。」
「え?」
「まだ分からないだろうが、
「本当!?」
嬉しさと驚きで布団から飛び起きた。
「どうやら、俺たちの子はまだ生まれてもいないのに術を使うらしい。俺が
「すごい。
「そうかもな。俺も子ができるのは初めてだからよく分からん。ただ今言えるのは、いずれ腹の子を追って
「なぜ追って来るの?」
「子を取り上げるつもりだ。」
「どうして!?私たちの子供なのに!?」
「
それを聞いて泣き出さずにはいられなかった。
「大丈夫だ。
新緑の季節が終わり、草花が生い茂る夏が過ぎ、紅葉が紅に染まり、真っ白な冬が訪れた。
私のお腹も大きくなり、この身に宿るのが
そんなことを日々の出来事として
「
玄関の方から申し訳なさそうに呼びかけて来た。聞き覚えのある
私は返事をすることができなかった。
「
「・・・お久しぶりです。」
歓迎されていないことを察しながらも、
「
「はい。呼んで来ます。どうぞ中でお待ち下さい。」
そう言うと、
「驚かないのね。」
私は
「産み月が近づいて子の
「どうなるの?」
「・・・俺に任せておけ。」
客間に行くと
「待たせたな。」
「
「まずは私から話させてくれ。」
そう言って鬼の女が割って入った。
「私は
「もう千年以上前の話になる。
そこまで話したところで
「はずだったとは?」
「
「私と一緒に同じく
「それで、お前は
「首。」
「その首はどこにある?」
「
「大変なことになったな。」
「
「
「嫌です!」
思わず叫んでいた。私が興奮すると、
「
「いいえ、分かりません。」
「
「そんな!」
「だからその子が生まれたら、僕に引き渡して欲しい。」
「・・・生まれてくる子をどうするつもりですか?」
「僕が守る。僕が最強の
「・・・私は両親とは
「生まれた時から、僕が家族だ。親子の情は僕が与える。決して寂しい思いはさせない。」
「
「分かった。でも道は一つしかない。
「
すがるように隣にいる
「話は分かった。貴人、お前の本当の目的もな。お前も俺と同じだったのだな。」
「
「
「話を聞いていたでしょう?
「ああ。」
「鬼も人間も一斉に襲いかかって来るのですよ?」
「ああ。」
「随分と余裕ですね。」
「俺はそんなに弱そうに見えるのか?」
「いいえ。千年以上生きて来た僕でさえ、正直、お前に勝てるとは思わない。だが、お前は子を守れない。いずれ放り出して敵の餌食にしてしまう。」
「
私は何も言い返せなかった。
「こちらから条件をつける。」
「今何と?」
「子が生まれたら、俺たちの手元で育てる。ただし、十二歳の誕生日までだ。十二歳になったら成人したと見なす。そこからはお前の好きにしろ。子はお前のものだ。お前が命がけで守れ。」
「
「・・・・」
「どういうこと?」
私は尋ねた。
「人間は生まれ変わる。そして俺たちの寿命は長い。長く生きればもう一度同じ魂を持った人間に巡り合うこともある。それを信じてずっと待っていたのだ。この
すべてを見透かされてしまった。
「とうとう勘づかれてしまったか。そうとも。お腹の子は僕が千年以上待ちに待った
「いや、そうじゃないな。ただ待っていただけじゃないな。実のところ、そう仕組んだとも言える。」
「
そう言って
「
「余計なお世話というものだ。」
私は何も思わなかった。
「
私はそう言った。
「では十二年後だな。」
「
「もちろん。千年以上待ったんだ。あと十二年くらいなんてことはない。その代わりこの十二年、必ず守りと通してくれ、
「無論。我が子だ。お前こそ言葉を違えるなよ。」
「もちろん。十二年後、僕はその子を迎えに来る。そしてその子を守り抜いて最強の
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