第十一章 太古の鬼
第十一章
尼寺に向かいながら昔のことを思い出していた。遠い昔のことだ。まだ俺が
人里に下りて
『今生ではお前が私の
何とも身勝手で都合のいい約束だと思った。人間の
女の式神となった俺は『
毎日二人で
『
後を追いたい気持ちになったが、耐えて待った。長く生きればもう一度会えると信じて。そうしてようやく現れたのが小子だった。
何も知らず、御神木の根元で
火柱の上がる尼寺に到着すると、蔵の方で悲鳴が聞こえた。行ってみると、白い頭巾を被った尼たちと
「おい、
俺は
「
「分かっているはずだ。俺の妻はどこだ?」
「さあ、知らないよ?」
もう自分を抑えられなかった。
「やめろ・・・やめておくれ。」
「俺の妻はどこだ?」
「・・・・」
生き残っていた尼たちと
俺は尼たちの中で一番の年長者に目を止めた。
「おい、お前、
「しょ、しょう・・・・」
「に、二階・・・」
本殿の横にあるのが、尼たちの住居となっていた。そこの二階に
もう一匹いたのか。
急降下しながら、その鬼めがけて飛びかかった。鬼は身を
「お前は何者だ!?」
鬼が尋ねた。鬼は女だった。声を聞くまでは地味な着物でてっきり男だと思ったが、よく見れば髪は長く、
「俺はその女の夫だ。返してもらおう。」
俺がそう言うと鬼は構えを緩めた。
「これは人間の女だが?」
確認するように鬼の女が尋ねた。
「そうだ。人間の女を妻にした。」
鬼の女は注意深く俺と
「悪いが信用できない。」
当然、鬼の女はそう言った。
「ならば殺し合うまで。」
俺がそう言って再び足を踏み出した時、
「二人共、引くんだ!僕たちは敵同士じゃない。」
子供が二人の間に割って入った。
「
鬼の女は子供に向かってそう呼びかけた。どうやら顔見知りらしい。犬神は
「
子供は懐かしそうな目をして言った。
「ああ、久しぶりだ。私もお前に会えるとは思わなかった。
そう言って
「俺が治す。」
俺は鬼の女を押しのけて
「お前、治癒の力があるのだな。先ほどは信用せず、すまなかった。私は
「奥方はおそらく、私を助けてくれた。私は
俺は
「腹に子がいるのか?」
さすが女だけあって
「ああ。子がいる。」
それを聞きつけた子供の目の色が変わった。
「触るな!」
俺が怒鳴りつけると、子供は慌てて手を引っ込めた。
「おい、
「失礼した。」
子供はしょんぼりとして言った。まるで叱られた子供だった。だが、姿は子供でもこいつは
「
子供の姿をした鬼が言った。
「断る。こちらに用はない。」
「僕は
貴人はその場に片膝をついて、
やはりな。そうだろうと思った。
当時最強の鬼神を集めて組織されたのが
「悪いな。」
そう言って
トシ子の旅館に戻ると、心配そうに
「
「大事ない。今は意識を失っているが時期に目が覚める。」
「お子は?」
「無事だ。」
「良うございました。」
「このまま、この足で
「トシ子にもよく礼を言っておいてくれ。」
「はい。
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