第九章 ノーマン
第九章 ノーマン
「雨降って地固まるとはこのことですね。」
外が白やんだ頃、
「そうだな。」
眠っている
「それにしても、よく刺し殺されずに済みましたね。奥方様も
「
そう言って
「今何と!?」
「種付けはできた。
嬉しさを噛み締めながら言った。
「あな、めでたや!トシ子に赤飯を炊かせねば!」
「腹の子は
まだ見ぬ我が子にそう話しかけた。
朝から
「トシ子、竹の子を掘って来たんだが、ここで良いか?」
「
そう言いながら
「どういうこと?」
「
「はい。
トシ子が深くうなずいた。
「最初から騙していたのね。しかも皆グルで。トシ子さんまで。狐は悪巧みが上手ですこと。」
小子がますます目をつりあげて怒った。
「今日はこちらの件とは別の仕事がありますので、失礼します。トシ子さん、ご馳走様でした。」
「待て。別の仕事って?俺も一緒に・・・」
「ついて来ないで。そいうのをストーカーって
「あれはいけませんね。
「何だそれは?」
「妻を束縛する男のことです。」
何だかんだ言われたが、
「
「
そう尋ねながら、
「無事だけど・・・」
「
男が鋭い視線を向けて
「夫です。」
こんな時だが夫だと誰かに紹介されて心が躍った。
「人間ではないと知っていますか?」
「知っています。」
「人間ではないのはお前も同じだろう?」
俺がそう言い返すと、男はさらに鋭い視線を向けて来た。
「人間ではない?」
「ああ、その男は人間ではない。
男に視線を送った。
「答える筋合いはない。」
男は答えた。
「
男はそう言うと俺たちの前から姿を消した後から
その夜も
「もっと。」
甘い息を吐きながら小子が言った。
「
「
「ダメ。もっと。」
そう言うと、
「人間でなくともこれでは死んでしまうぞ、
満足げにスヤスヤ寝ている
事が終わったのを見計らって、いつものように、
「
「分かっている。そろそろ
「お帰りになられるので?」
「
「そうですか。
世話になった
朝日が昇り切った頃に
「
そういうと、
「俺とお前、二人で暮らせたらそれで十分だろう?」
「うん。」
「今日、
「律儀だな。黙って消えても良いものを。」
人間のしがらみにすがっているように見えた。
「
そう言って
だが
「
トシ子が言った。
「何もなければもうここへ帰っているはずだ。」
「この
「
俺がそう言うと、
「
「・・・はい。」
「またお会いしましたね。」
「
果たしてこの男には話が通じるだろうか?
「
ダメなようだ。
「それならば、勝手に探させてもらうまで。」
俺がそう言うと、男は戦う構えをした。
「来ていないと言ったでしょう?
皮肉っぽくそう言って男は大きな黒い犬の姿に変化した。
「
黒い犬は
その時だった。パーンと音を立てて、夜空に火柱が上がった。俺も犬も火柱の方を見上げた。
「二人共、争っている場合ではないぞ。」
庭に甲高い子供の声が響いた。
「
子供に向かってそうつぶやくと、黒い犬は見る見るうちに人間の姿に変化した。
「
子供がそう言った。一瞬頭の中が真っ白になった。
「あの火柱のところだ。」
子供が方角を指した。
俺は一目散に火柱の上がる尼寺に飛んで向かった。
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