第五章 総本山翡翠邸
第五章
伏見稲荷大社から真っ直ぐ翡翠邸に向かった。比丘尼様を頼るためだ。幸い翡翠邸に行くとすぐにお目通りがかなった。私は事の子細を話した。
「
「
私がそう伝えると
「
「私はどうすれば・・・」
「
そう
「
「ノーマン?」
「ノーマンは
「ところで、
「え?」
「今日の会議は最近出没している『
一人前の
「分かりました。部屋を探してみます。」
そう言うしかなかった。
「お話のところ、失礼いたします。」
十二、三の子供が入って来た。
「
子供がそう言った。
「良い案件とは?」
「依頼人は
子供が詳細を述べた。
「いいではありませんか。
「それでは依頼人が表におりますので、このまま一緒にその旅館まで出向いて頂いて宜しいでしょうか?」
子供が言った。この子供も私が食材を荒らす低級な
「はい。」
それでも選べる答えは一つだけだった。身寄りはないも同然。友達も恋人もいない。お金もない。そんな人間には選ぶ権利はないのだ。
「それでは
「ええ。またね。小子。」
子供と一緒に表まで行くと、門の外で一人の老女が待っていた。
「あの方が依頼人です。」
子供が言った。
「不思議ですよね。」
「え?」
これまで無駄口を叩かなった子供が話しかけて来た。
「見えませんか?あの依頼人の方は狐の加護があります。それなのに
確かに。私にも見えた。
「もしかしたら、加護している
子供が言った。私もそう思った。なんて言うのは大人げない。私は黙っておいた。
「では行ってきますね。」
子供に言った。子供は首から勾玉をかけていた。おそらく
「はい。いってらっしゃいませ。」
子供は笑顔で私を送り出した。
「お待たせしました。
「まあ。初めまして。佐藤トシ子と申します。いらして下さったのですね。浅井さん。」
佐藤トシ子は嬉しそうに目を細めた。
「私の旅館は
「聞きました。」
「大したもてなしはできませんが、どうかゆっくりなさって下さい。」
佐藤トシ子はそう言った。目的は
二人で電車を乗り継いで佐藤トシ子が経営する旅館に辿り着いた。
「早速お夕飯にしましょうか?それともお風呂がいいですか?」
「いえ、お構いなく。」
これでは本当に旅行客になってしまう。
「遠慮なさらないで下さい。今お客さんは一人しかいないので。」
一人いるのか。と思った。旅館はかなり古びていた。玄関の鍵穴は
「トシ子さん、本当にどうかお構いなく。お客さんを優先して下さい。」
道中話をしていて、下の名前で呼ぶようになっていた。
「では、小子さん、お夕飯は食堂でお客さんと一緒でも宜しいですか?」
「もちろん私は構いませんが・・・。」
客が嫌がるだろうと思った。
「ではそうしましょう。六時に食堂に来て下さいね。」
トシ子さんに押し切られるかたちで承諾した。
夕食時間まで部屋で休めと言われて、言われた通りにした。夜中に台所を見張るつもりでいたし、ちょうど良かった。部屋は古びた旅館にしては綺麗だった。縁側までついていて、庭の木々や花々を見渡すことができた。一昔前まで間違いなく、ここは高級旅館だったのだろう。
畳の上に寝転がってウトウトしていると気配がした。目を開けると、庭に
「我は
「
身を起こして名乗った。この
「この旅館の主に悪さをするのはお前か?」
「そうだ。」
「何故そんなことをする?」
「・・・」
「
そう言って
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます