第三章 光輝
第三章
目を覚ますと温かい布団の中にいた。
「気が付いたか。」
男が言った。
「お前のために居を整えたんだが、まだ
男が続けて言った。話が見えなかった。
「どうした?まだ傷が痛むのか?全部治してやったはずだが。どれ、見せてみろ。」
横たわる私に男が手を伸ばして来た。とっさに手を振り払った。
「怖いか?」
男が尋ねた。
「俺は
「は?」
「ここは俺の根城。幽世にある。知っているだろう?人間の世界の裏にある、現世ではない妖の世界。それが幽世だ。私と一緒でなければここを出ることも帰ることもできない。現世に用がある時は言え。連れて行ってやろう。」
光輝はそう言った。
「私・・・私は戻らないと。怪我人が・・・」
精一杯勇気を振り絞ってもそれだけしか話せなかった。
「ああ、あの倒れていた男のことなら、心配いらぬ。お前の知り合いだろうと思って、助けてやった。」
光輝はそう言って意味ありげに私を見た。
「これでもう
『ここで暮らす』の一択しかないような言い方だった。だが流れに呑まれて一度承諾してしまえば二度と帰れないことは分かっていた。彼ら
「私は戻らないと・・・」
震える声でもう一度そう言った。
「そうか。ならば
意外ほど
「どこへ送ってやればいい?」
「京都へ。」
「分かった。」
「小子、すぐに連れて行ってやる。目をつぶれ。人間が俺たちの道を使うと酔うからな。」
目、鼻、耳、口。
「俺の力を分けてやる。」
耳元で
目を開けると、私は桜の花が咲き乱れる京都の
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