第5話私だけの「傘のこびと」
彼のもつあの傘とは別の、私だけの特別な傘をさして今日はここへやって来たわ。
ほら、みんな。とっても素敵な傘でしょう?
桜の花びらが散りばめられたこの傘は、「傘の小人」の話を聞かせてくれたお祖父ちゃんも使っていた古い古い傘。
1度だって壊れたことのない特別な傘。
うん。
きっとこの傘にも小人が住んでいるの。
ずっと一緒だったこの傘の小人だったらね。
私の気持ちも解ってくれる気がしたんだ。
たったひとりで消えていなくなるのは辛いよ。寂しくて、淋しくて、冷たくて、寒くて、悲しい。
だから、私この傘を一緒に連れていくことにしたんだ。
この傘だったら、きっとどんな冷たい雨だって私を守ってくれるはずだから。
ねえ、そうでしょ?
私の「傘のこいびと」さん?
足下の水溜まりには、傘をさして笑う私。そして、傘を持つ手に手を重ねて穏やかに笑う小さな青年の姿がはっきりと写っていた。
置き傘のこびと 犬屋小烏本部 @inuya
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