第6話 ホラ吹きダイコン三兄弟

『フロフキ大根作るから庭に植えられている大根を一本抜いてきて』

母の一声で我先に飛び出すハル、ヒロたんとしーくん。

どれを抜こうか、これだ、いやこっちが大きい、

こっちの方が太そうだと抜き手と抜く大根の品定めに三者協議がかいさいされる事10分後。

一番手前の大根に手をかけたしーくんが

話し合いの途中にもかかわらず抜いてしまうという実力行使に走り、

今、三人の眼前には一本のヒョロリとした大根にが横たわっている。


「ちっさ。これ、ちっちゃいよね?ちっさ!」


「しーくんなんで抜いちゃうんだよー。ズルいよ。ヒロたんだって抜きたかったよ。」


「だって抜けちゃったんだもん。触っただけで抜けちゃったんだもん。」


大根を手に取っておもむろに空に掲げるハル。

「ちっさ。やっぱりちっさ!」


それを横から見上げるひろたん。

「これ、シーくんが取ったのホントに大根?」


一瞬怒られると身構えていたしーくん、

ニヤリと笑みをこぼして一言。


「…じつはワタクシ、ニンジンであります。」


「なんでだよ、しーくん抜いたの白いじゃん。」


「いえ、ワタクシ、白く見えるニンジンであります。」


「え?白く見える?? 白いの?白く無いの??」


「身も心も真っ白でございます。

 ワタクシ、雪見だいふくの心でニンジンしております。」


しーくんとひろたんのやり取りを聞いたハル。

一瞬ハッとした表情をして、

すぐに大根を仮面のように顔前に持つ。

「オレ、じつは白い新種のニンジンなんだ。」


驚愕の表情をみせるヒロたんをよそに、ニンジンになり切るしーくんとハル。


「ワタクシ、この庭生まれの新種のニンジンであります。

 なんとお買い得!」


「もうチリチリは嫌だ!

 葉っぱもダイコンの様に進化したニンジンでございます。」


「じゃぁ、ダイコンとニンジンはどうやって見分けたらいいの?」


「大丈夫であります。

 ちゃんと見分けがつくよう、こちらオレンジ色にしました。

 こんなにいっぱい生えています。」


おもむろに隣に植えてあるニンジンを抜くシーくん。


「ほら、この通り。」


すかさず大根をお面持ちしたままシーくんの横に並び直すハル。


「白かったニンジンをオレンジ色にしたのはオレなんだぜ。」


「これで、もう迷う事などないのであります!

 さぁさぁヒロめぐさん、持ってみな、手に持ってみな。」


シーくんとハルの売り込み?をじっと聞いていたヒロたん。


「じゃぁ、今日はフロフキ白ニンジンなんだね。」


即座に追随するハル。


「そうだよ、フロフキ白ニンジンに、オレはなる!」


ふふん。と言ってドヤ顔のシーくんが宣言。


「うそのダイコン、ホラ吹き大根!」



そんな、いつまでも届かない収穫物の行くを縁側で眺めている父は思った。


 シーくんのホラを語るときだけ語彙力10倍アップするあのアクティブスキルは一体……。

 このまま育つと『我らホラ吹き三兄弟!』とか言い出さないか?


冬の休日、午後3時。

大根の行方より、我が子の行く末にちょっぴり焦りを覚えた父だった。

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「あれ?シーくんアンパンの続きは見ないの?」「このあとエッチになるから結構です。」 @rokuxhachi

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