第32話

「それで、琉愛ちゃんとはどっちから告ったの?」

「ブー!」

何言ってるんだこの人。ていうか、なんで知ってんだこの人。

あまりの黒岩選手の唐突な発言に口に含んでいたスポドリを噴いてしまう。

よかった、その方向に誰もいなくて。

「まったく、嫁入り前の淑女がそんなことしちゃだめよ」

と黒岩選手は私が噴いたスポドリを拭いてもらうためにスタッフさんたちを呼び出してくれた。

即座に来てくれて、拭いてくれるスタッフさんたちに心から謝罪をしたけど。

でも、今横に立ってる人が悪いんです。

「というか、嫁入り前じゃないわね」

「ん!」

危ない、また噴きかけた。

「嫁入り前ですよ!結婚式まだやってないですし、婚約届も出してないです!というか、私今は女ですけど!元々男なんで、嫁入り前とか色々と違います!」

「あらそう?でも、もうヤったんでしょ?」

!!

「…ヤったってどういう意味ですかねー?私知らないなぁ!」

私はしらばっくれることにした。ほんとね、ヤったってなんだろうなぁ?私知らなーい!

「ふーん、なら、琉愛ちゃんとヤってきていいよね。奏空ちゃん知らないなら」

「そっ、それはダメです!!!!」

「ほら、やっぱり知ってんじゃん?」

あっ。やられた。

黒岩選手は小悪魔な笑顔を向けながら、私を見てくる。やめて、そんな顔で私を見てこないで!

「で?ヤったのかヤってないのか、私、気になるなぁ??」

と、答えは知ってるけど、私の口から言わせたそうにする黒岩選手。

くっ、なんだこの人。まじで。

付き合ってることは見抜かれるし、ヤったかヤってないのかというのを私から言わせようとするし。

ここで、恥ずかしがるのはからかわれる原因になるから、開き直ろう。

「ええ!ヤりました!ヤりましたとも!」

と胸を張った。どうだ!こんな感じで来ると思ってなかったでしょ!

と、黒岩選手の方を見ると、少し面食らったような顔をしていた。

よっしゃ!やってやった!とか思ってると、また、黒岩選手は何か企んだような顔になり、

「ところで、どっちがタチなの?」

と聞いてきた。

「た、タチ…?」

タチってなに?え?なんかそういう言葉あったっけ?

「あれ?タチとかネコとか知らない?」

ネコ?にゃー?Meow?

と、黒岩選手が言ってきた単語に首を傾げた。

「驚いた、てっきり、元男の子だから、そういうの知ってるものかと思ってた」

と、本当にこいつは知らないのかと驚いた顔をする。やめて!そんな顔しないで!

「じゃあ、教えてあげる」

と、耳に吐息が噴きかけられるぐらいの距離に黒岩選手の顔が近づいてきた。ち、近いです!

「タチってね、行為の時に色々とやってくれる人の方のこと、ネコはその逆、色々とされる人のことを言うの。ちなみに私はネコ」

…。

「あら、そんな顔真っ赤にして、ま、私とどうせ同族のネコちゃんでしょ?奏空ちゃんは」

…。

今顔を触ったら、顔が真っ赤ってことがよくわかる。

でも、だって、そんな話されるとは思わなかったし!

って、てか!

「黒岩選手もネコってどういうことですか!?」

「そのまんま、だって、芽衣がタチだもの。まあ、逆のこともあるけど、私がネコの方が多いかなぁ」

えっ、えー!!!

「でも、奏空ちゃんは全受けな気がする。どんな女の子に対しても、ネコになりそう。なんなら、私がやってあげようか?」

「いっ!」

「いっ?」

「嫌です!私にやってくれるのは琉愛だけです!」

「あらあら、可愛いねぇ。でも、顔真っ赤すぎるから、クールダウンしてね。何のために休憩をしてるかわからないわ」

それはあなたが話し始めたことでしょうか!と言いかけたけど、やめ、その代わりに、黒岩選手を恨めしく見つめる。

「んじゃあ、練習再開するよ!いい?麻衣たち」

と白木選手があっちから声をかけてきた。え?もうそんな経った?

「ええ。大丈夫よね?奏空ちゃん」

「…!はっ、はい!」

しょうがない、休憩らしい休憩じゃなかったけど、練習を再開しないと、琉愛に迷惑かけるし。

って、琉愛、なんで、顔赤いの?んで、なんで、ジト目なの?

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片想いの幼馴染と異世界転生したんですけど、なんで俺が女の子に? 福屋ケンタ @newsouth1134

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