まほうがとけるまで/Endroll

◆夜のおわり/第02特区/ナレーション:ドロシー


 舞踏会は終わり、魔法は解けるものです。

 サンドリヨンの暴走は、犯人が21時ちょうどに市警へ自首すると同時に収束します。180分。ソラさんたちの予想どおり、サンドリヨンの連続稼働時間より早いバッテリー切れでした。三時間をそれぞれの場所で過ごした人たちも、不便はありそうですが、明日からいつもの生活を送れそうです。


 サンジュくんはお兄さんの病室で一晩過ごすようです。車から持ってきたブランケットをかぶって、ニュースを一緒に見ています。大切な車はご無事でした。


 ソラさんはあれからずっと森の中、友達と遅くまでおしゃべりです。明日も学校ですよ、ほどほどにね。


 アンナさんと誓さんは、先程電話を終えました。アンナさんはお休みのため寝室へ、誓さんはホテルの部屋を出てバーにお酒を飲みに向かいます。良い夜を!


 ササメさんは、アサヒさん遊飛さんの車で自宅近くまで送ってもらい、眠った娘さんをおんぶして社宅に戻ります。それを見届けたアサヒさんと遊飛さんも、渋滞の道路に愚痴をこぼしながら家路につきました。


 お店の片付けをお手伝いしていた3Bの少年たち、おかみさんの一声で今夜はお家に泊めてもらうようです。元気よく小売店で夜更かしのおやつを買いこんでいます。


 小さな靴屋さん、二階のご自宅はまだ明かりがついています。カーテン越しに、ひとつのソファで寄り添う影が見えました。


 ご家族の顔を見るため帰宅の支度を始めた深澄さん、他の社員さんたちに囃されながらもう一人の方と現場事務所を飛び出して行きました。


 ……さて。これはおとぎ話ではないので、その後のお話も、少しだけ。


 自首した男性はその後裁判で執行猶予なし懲役80年の実刑を受け、洋上の監獄船、通称「鬼が島」へ収容されることになりました。自首したことを差し引いても、被害の大きさ、死傷された市民の数を鑑みるとそのくらいが妥当、ということのようです。

 犯人の男性は容疑を認め、ヌケヌケと

「試したらできた。魔法使いとしてはやるしかなかった。こんなに引っかかると思っていなかったし、セキュリティ意識を高く見積もりすぎた。二次被害で死傷した方には本当に申し訳ない気持ちだ【要約】」

 と語り、性格の悪い一部の魔法使いにとても受けました。

 街の交通網は翌朝には回復しましたが、屋内施設の被害は大きく、その週は丸ごとお休みして最低限の修復に充てる人が多くいました。電設屋さんと家具屋さんはとても忙しかったとか。


 それでも第02特区は、次の月になれば何事もなかった顔で生活の歯車を回します。

 この街はそういうところです。いつでもその内側にたくさんの主人公を乗せ、海に浮かんでいるのです。


P-PingOZ「まほうがとけるまで」おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

P-PingOZ @P_PingOZ

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ