ざまぁを見届けたモブくんの愉悦

くろねこどらごん

名も無きモブくんの愉悦

「ひぐっ、えっぐ、う、うぇぇぇぇ…」




「…………」




もう一時間ほどになるだろうか。少女は今もひたすら泣き続けてた。


ここはとある公園。時刻は七時。さらにいうなら彼女が泣いている場所は滑り台。


そして僕は彼女の名前を知っている。

彼女は僕の名前を知らないだろうけど、それは僕がただのモブで、彼女が有名人だからというだけの話だった。






赤城玲奈あかぎれいな。抜群のプロポーションと金色のストレートヘアーが特徴の、僕が通う高校屈指の美少女。


その綺麗な亜麻色の髪は彼女のトレードマークであり、日本人離れした彼女の容姿は、空が暗くなり始めた街灯の薄明かりのなかでもよく目立つ。

存在感が違うとでもいうのだろうか、明らかに僕のような凡人とは関わりあうこともないであろう、住む世界が違う人種である。




実際彼女は陽キャグループの中心人物であり、クラスカーストのトップに立っていた。そんな彼女は勿論有名人であり、学年二大美少女の片割れとしてよく告白されている姿を目にするのだとかなんとか。


さらにいうならその告白を全て手酷く断っているらしいことも知っている。これも人づてで聞いたことだった。


赤城さんとは関わりが特になかったが、彼女が気が強いタイプであるらしいことは教室での会話から把握していた。




クラスメイトで赤城さんの幼馴染らしい佐間健介ざまけんすけのことを、もうひとりの二大美少女とともに散々馬鹿にしたり、蔑むようなことを言っている姿を、僕はこれまで散々目撃してきたのだから。


僕は他人の色恋沙汰にはさほど興味がないため、暇つぶしの会話のなかでもその話題になると割と聞き流していた噂であったが、あの美少女っぷりなら納得である。


実際泣いているその姿すら、彼女の整った容姿を損なうものではなかったのだから。




「うぅ、なんで。なんでぇ……健介ぇ、なんで私じゃダメなのよぉ…」




「……いい」




いや、ぶっちゃけ滅茶苦茶可愛かった。というか男の名前を叫びながら泣きじゃくるその姿は僕の性癖に直撃だ。

メンタルにダイレクトアタックである。

ところどころで泣き言を漏らすのがまたたまらない。

普段気丈な彼女が見せる情けなさと弱さが同居した痛々しい姿が反比例するかのように、どこまでも僕の心を満たしてくれる。


彼女に話しかけもせずこうして木の陰に隠れて赤城のことを小一時間もスマホを掲げて観察しているのも、これが理由であった。




「これが愉悦か…」




普段強気な美少女の泣き顔。生意気なことを言う口から泣き言も漏らすその姿。

滑り台に座りながら顔を拭うその姿に、普段の面影はまるでない。


そのギャップが正直たまらなかった。これがギャップ萌えってやつか。


極上の愉悦に添えるスパイスとなり、俺へと降り注いでいる。


新たな扉を開く音を、僕は確かに聞き届けていた。






え?話しかけないのかって?


そんなことしねーよ。僕は生粋の陰キャだぞ?なんで陽キャ中の陽キャに自分から話しかけないといけないんだ。

しかもそんな子が泣きじゃくるなんてレアってレベルじゃねーぞ、軽くSSRクラスはあるはずだ。




なら動画撮影するだろ、常識的に考えて。




僕は自分に素直な男なのだ。






「健介…健介ぇ…」




赤城さんはしゃくり上げながらひたすらひとりの男の名前を呼んでいる。泣きやんだらその繰り返し。僕が彼女を見かけてとうさ…見守り始めてからずっとこんな調子だ。


僕は誰かと付き合ったことはないし、男女の関係に関して疎いという自覚はあるけど、さすがにここまでくると事情もだいたい読めてくる。


ようはあれだ。赤城さんはきっと今日、佐間に振られたのだ。それも家に帰るまで耐えることができず、こうして公園で泣いてしまうほど盛大に。




「やったぜ」




思わずガッツポーズをしてしまう。


その場面を想像すると、僕の愉悦はますます深度が深まっていくのだ。


別に僕は佐間と仲がいいわけでもないが、彼が普段赤城さんからどういう扱いを受けているのかはクラスメイトであるためよく知っている。




「アンタは私の言うこと聞いてればいいのよ」


「学習能力ないの?あんな簡単な問題も解けないだなんて、脳みそ詰まってないんでしょうね」


「健介は私達がいないとほんとダメなんだから。ひとりじゃどうせなにもできないこと知ってるんだからね!」


「このクズ!馬鹿!死ね!」




こんなことを言うのは日常茶飯事。まるで下僕のように扱っているあの姿を何故か他のクラスメイトは微笑ましい眼差しで見つめていたし、時折「夫婦漫才がまた始まった」みたいな会話が彼らの友人からなされていることも知っていたが、僕からすればえ、あれがセーフなの?という疑問を常に抱き続けていた。




だって佐間はいつも嫌がっていることはその顔色からなんとなくわかってたし。


そもそも見知った相手から暴言を吐かれ続けるとかキツいだろ。


第三者の立場なら茶々いれることもできるのだろうが、僕だったら絶対無理。

小学校の段階できっと絶縁していることだろう。顔がいいにしても限度というものがある。

そもそも顔がいいから一方的に暴言吐くってそれ対等な関係じゃないじゃん。

幼馴染補正にも限度がありますよって感じだ。






とはいえ赤城さんの好意も分かりやすかったのは事実ではある。


暴言を吐くタイミングも佐間が他の女子と話していた直後で嫉妬していることが傍から見ればまるわかりだったり、テストで悪い点を取らないようにと放課後に勉強会をしてたりもしたようだ。


普通ならなんとなく「あれ?こいつ俺のこと好きなんじゃね?」と思っていてもおかしくないとは思うが…まぁこの結果を見る限り佐間は鈍感主人公の素質があったと見える。そこは素直にご愁傷様と言っておこう。




もっとも僕が内心そう呟いたところで、結果が変わりなどはしないのだけど。






「私、ほんとに好きだったのに!健介に好かれるようにずっと頑張ってきたのにぃ!」




それ、ここで言っても意味ないんですよ赤城さん。




「もう無理とか、一緒にいても楽しくなかったとか、なによそれぇっ!うそだよぉ…」




暴言ばっかり言ってたらそれは妥当としか言えないです。




「好きな人がいるって、そんな素振りなかったじゃない!私以上に可愛い子なんて、あの子くらいしかいないじゃない。私だけのけ者だなんておかしい、こんなの絶対おかしいよ…」




おかしくはないと思います。


だって素振り見せたらあなた絶対邪魔するタイプでしょ。

普段の様子見てたら自分の思い通りにならないと気がすまないのは明白な子だし、そりゃ好きな人ができたら隠れて会うだろうから残当だなぁとしか…




「なんでよぉ、なんでなのよぉ…」




「全部ツッコミどころがあるからじゃないかなぁ…」




彼女の泣き言についそんなことを口にしてしまった。


言わずにはいられなかったのである。僕は生来のツッコミ気質だったのだ。




「え、誰かいるの…?」




(あ、やべ…)




素の声量だったため、静かな公園内では風に乗って彼女の元に届いてしまったらしい。


泣き腫らした顔を上げ、辺りを見回す様子を見せる赤城さんを見て、僕は慌ててスマホを隠した。これを見られてはさすがに言い訳が効かないだろう。


まぁそれを差し引いてもなんでここにいるかを問われたらなにも言えなくなるのだが。




(とはいえ、この状況はまずいよな…)




さて、どうするべきか。ここで素直に出て行くという主人公ムーヴを取るという選択肢もないことはないが、ぶっちゃけ名乗り出たくない。

殴られる可能性も充分あった。ツンデレ特有の定番の照れ隠しではあるが、いくら女子とはいえ殴られるのはたまったものじゃない。

単純に暴力を振るわれるというのは嫌なものだ。自分の気弱な性格はわかっているし、トラウマになってもおかしくはないだろう。




「ね、ねぇ、誰か…」




だがこのままでは埒があかないのもまた事実だった。

赤城さんの涙も引っ込みつつあるし、そうなるとここにいる旨味もない。

時間を無為に過ごしているも同然だ。明日も学校はあるし、ならいっそ…という方向に思考が傾きかけたその時。




「……バレちゃったかぁ」




「!?」




近くでガサリとなにかが動く音がした。僕は心底驚くも、なんとか声が出るのを押さえ込む。その人影はそのままコツコツと音を立て、赤城さんの座り込む滑り台に近づいていった。




「え…あ、アンタ…」




「玲奈、貴女も辛かったのね…」




滑り台の手前でピタリと立ち止まったその姿は、またもや見覚えのある同級生のものだった。




「静乃…どうしてここに…」




「私も泣きたいことがあったの。そしたら自然とここに来ちゃったのよ」




青山静乃あおやましずの。学園二大美少女のひとりで、赤城さんととも二俣をいじめていた張本人がそこにいた。


彼女もまた佐間の幼馴染であり、常に赤城さんと一緒にいるカースト上位の生徒である。


普段はクールな少女で、美少女というよりは美人というタイプ。長く伸ばした黒髪を背中に流し、凛とした姿勢で真っ直ぐ歩くその姿勢だけで絵になるとたまに男子が騒いでいることも知っている。


実際その後ろ姿を木の陰から見守った僕としても、なるほど綺麗だと唸るものが確かにあった。もっとも何故かのぞき見していた姿も見ていたから憧れとかそういう感情は沸いてこないが。




「泣きたいことってなによ…私以上に辛いことなんてないでしょ!選ばれた静乃には分からないでしょうけど、私はね、け、健介に、ふられ…」




赤城さんはまたも顔を曇らせ、瞳から涙を溢れさせようとしていた。


それを見て僕も慌ててスマホを掲げる。これを見逃す手はなかった。


クズっぽい?しょうがないじゃん、性癖なんだから。僕はまったく悪くない。この手が勝手に動いたのじゃよ。




「やっぱりそうなのね…」




そんな赤城さんを見て、青山さんは静かに頷いていた。

普段通りのクールな姿勢を崩さないが、考えてみればさっきまでの僕同様、一部始終見ていたようだからそりゃそうか。なかなかいい趣味をしてらっしゃる。

僕は自分を棚に上げ、彼女に賛辞を送っていた。




「やっぱりってなによ!静乃に私のなにがわかるっていうの!勝った者の余裕ってやつ!ふざけないでよ!!」




お、八つ当たり入りました!それはちょっとみっともないっすよ、赤城さん。


いくら親友とはいえそんな態度を取ってしまったらせっかくの友情も崩壊待ったなしだろうな。これはますますご飯が美味い。そう思っていたのだが…




「分かるよ」




青山さんはまたも赤城さんの言葉を受け流した。返した言葉もただ一言だけ。だけどどこか哀愁の漂う青山さんの表情に、何故か僕の心臓はドキリと大きく脈を打つ。


もちろんそれは恋をしたとかそんな甘酸っぱいものではない。心のどこかが期待で打ち震えた、歓喜の鼓動だった。




(なんだ、僕はいったいなにを…)




その理由は分からない。だけど、なにか予感があったのだ。


ここを離れてはいけない、そうしたら絶対後悔することになるという、確信にも似た予感が。




「分かる?静乃に私の気持ちが分かるはずなんてない!」




未だ困惑する僕を尻目に、激高した赤城さんが食ってかかる。


その顔はもはやかつての親友に向けるものではなく、憎い恋敵に向ける怨嗟の炎が宿っていた。美少女のキレ顔って、ぶっちゃけ普通に怖いっすわ。ちょっと漏れそうな迫力がある。


佐間がここに居たら仮に惚れていたとしても、その恋心を覚ますには充分な形相だ。


あれを正面から見ても穏やかな表情を浮かべているとか、青山さんの心臓は鉄でできているんじゃないだろうか。そんな失礼な考えをつい思い浮かべてしまう。




「ううん、分かるんだよ。私だから分かるの」




「はぁ?だからそんなわけ…」




そこで青山さんは大きく息を吸った。まるで、なにか大事なことを言う前触れのような――




「私も、同じだから」






なん…だと…






「え、同じって…」




「私も告白して、振られたのよ。健介にね。お前とは付き合えないって、ハッキリ言われちゃった」




淡々と親友にそう告げる青山さんの瞳には、いつの間にか大粒の涙が浮かんでいた。


ちなみに俺の瞳にも溜まっていた。それはおそらく青山さんとは真逆の感情によるものだったが、そんなことは些細なことだ。


僕は拳を天へと突き出して、心の底で咆哮を上げた。






………………天丼キタコレッッッッッ!!!!!!






マジかよ、学年二大美少女が同時にひとりの男に告白して振られただと?




そんな…そんなの…!




(ニヤケるのが、止まらないじゃないか…!)




僕は正しかった。ありがとう本能。生きてて良かった。


心から僕はこの世に生まれたことに感謝していた。


こんな最高の瞬間を、見届けることができたのだから。




「そんな…どうして。だって、静乃でも私でもなかったら、いったい誰が…」




おっと、訂正しなければ。まだ至福のフィーバータイムは終わっていないようだ。


歓喜の雄叫びをあげるのはまだ少々早いようである。俺は気を引き締め直し、再びふたりの会話に全神経を集中させる。




「それは聞くことができたわ。隣のクラスの白石さんが好きなんですって。優しいところに惹かれたって、そう言ってた…」




「白石って、あの地味な子?うそ、なんであんな子を…」




白石?白石か。その名前は僕にも聞き覚えがある。赤城さんに同意するようであれだが、顔は悪くないけど確かに目立たない子であった記憶はあった。

確か手芸部所属だったか。性格は話したことがないので分からないが、少なくともナチュラルに見下している赤城さんよりはマシだろう。


カースト上位に君臨して華のあるこのふたりとは住む世界の違う子であるのは確かだ。




「私達にいじめられてるところをいつも慰めてくれて気付いたら惹かれてたって、健介は、言って…」




そこが彼女の限界だったのだろう。青山さんの涙腺はとうとう決壊し、大きな瞳から次々に涙が零れおちていく。




「ぅ…しずの…しずのぉ…」




それを見て赤城さんも再び涙を流していた。振られたもの同士特有のシンパシーがあるのかもしれない。あるいは親友ゆえの共感か。なんにせよその涙は美しい。


僕は電池がレッドゲージに突入したスマホに二個目のモバイルバッテリーを差し込む。この光景を撮らないなど、生きてきた価値がないにも等しい。余すことなく全て収める心積もりだった。




「ごめん、辛かったんだね…どうして私達じゃダメだったんだろうね」




「わかんない、わかんないよ玲奈…」




(それが分からないからだと思います)




そのままふたりは抱き合い、お互いを慰めモードに入ったようだ。


同じ男を好きになったもの同士、幼馴染でもある彼女達にはやはり似たところがあったのだろう。自分達の欠点が見えていないという致命的な欠点が。


とはいえどちらかに備わっていたのならそのときはこの天国のようなシチュエーションを堪能することがなかっただろうし、僕にとっては彼女達の都合のいい考え方がただただありがたいのだけど。




(いやぁ、今日は本当にいい日だな。ありがとう佐間、彼女たちを振ってくれて…ん?)




級友に対し感謝の念を送っていると、ふと誰かの気配を感じた。


視界の端に動く影を捉えたのだ。その影は公園の入口あたりで中の様子を伺っているように見える。




(誰だ…?ってあれはもしかして)




同じクラスの…確か二俣勝吾ふたまたしょうごだったか。学校の制服を着たままなので多分間違いないだろう。




(なにやってんだあいつ。あ、もしかして…)




もう九時になるというのに未だこの時間に制服姿で彷徨いている級友に呆れながら、なんの魂胆があるのかと考え、やがて答えにたどり着いた。


だがこの考えが正しいのなら、それは間違いなく悪手だ。


どうしよう、止めるべきだろうかとしばし逡巡していると、覚悟を決めたのか意を決した表情で二俣がふたりに近づいていく。




「あ、おい馬鹿やめろ」




小さい声で思わず二俣を止めていた。あの馬鹿、マジか。僕同様ただのモブがそんな主人公みたいなことをするつもりなのか…




その行動ははっきり言って無謀としか言いようがない。だってあいつぼっちだぞ。

普段ラノベばっか読みふけって、女子はおろか男子とすらまともに話してる姿を見たことがないようなやつだ。対人におけるコミュ力は皆無であると言い切ってもいいだろう。


そんなやつが学校の外とはいえ、カーストトップクラスの女子に話しかけるだと?しかも学年二大美少女に?




断言しよう。それは無謀が過ぎる行いであると。


お前、最悪キモいと言われて吊るし上げにあう可能性考慮してるか?あいつらのネットワークえげつないんだぞ。ていうかここで男気見せるなら最初から教室で見せとけよ。

最初のうちは結構話しかけられてたのに全部無視してぼっち決め込んだのはお前だろうが。なんでこのタイミングで動くんだよ、KYすぎんだろ。弱っている女の子にワンチャンあるとか考えているんだとしたらあまりにクズだ。まったくもって度し難いにも程がある。




「あ、あの、ふたりとも大丈夫?なんで泣いてるの?」




だがそんな僕の心の声など露知らず、二俣は滑り台コンビに話しかけてしまっていた。


しかもやっぱりどもっている。明らかに人と話すのが慣れていないやつの話し方だ。慰めるにはあまりにも心もとないたどたどしい語り口に、見ていられなくなった僕は天を仰いでしまう。あっちゃーって気分だった。




「は?あんた誰?」




「……ほっといてくれない?そういう空気じゃないの、見て分からないの?」




「え、う、うぇ?」




言わんこっちゃない。案の定の展開になっていた。


二俣はふたりの美少女の冷たい視線に晒され早くも狼狽えMAXだ。


危惧した展開を裏切らないというのはある意味素晴らしいことだが、こういうのは見ている側としてもひどく居た堪れない気分になる。




「いや、でも俺、ふたりのこと放っておけないし…」




よせばいいのに二俣は何故か粘ろうとしているようだ。普段放って置かれるやつが言ってもその言葉に説得力が伴わないと思うんだが。




「なんでアンタに心配されなくちゃいけないのよ。てかほんとに誰よ。うちの学校の生徒?」




「空気読めないって言われない?それともはっきり言わないと分からないほど愚図なのかしら」




「あ、う…」




陽キャの本能なのか、滑り台コンビもその匂いを敏感に嗅ぎ取ったようで、早速マウント取りに移行していた。


先ほどの涙はどこへいったのか、その姿は普段佐間に対する態度と相違ないものへと変化している。なぜ振られたか分かっていないことがまるわかりだ。


同情するつもりはなかったが、これでは佐間も浮かばれないだろう。




「煮え切らないわねぇ、はっきり言ったらどうなの?そういうとこ、健介に似ててなんか腹立つわ」




「そうね、顔もちょっと健介に似てるし…うん、似ているわね、貴方」




そういってふたりは目を細めた。なんかフラグが立った音が聞こえた気がしたような…




「……ちょうどいいわ、話を聞いてもらおうじゃない」




「そうね、時間はあることだしね」




「え、あの、ちょっ」




ふたりは滑り台から立ち上がり、二俣の腕を両脇からガッシリと掴んだ。


二俣は今も狼狽えたまま、ふたりの顔を交互に見比べている。




「ここ、僕が慰めてフラグが立つはずじゃ…」




「なに言ってるの?さっさといくわよ」




「健介に似ているんだもの。きっと貴方なら大丈夫よね…いろいろと」




そう言ってふたりは二俣を引きずって公園の出口へと去っていく。


去り際に見たその瞳は、ハイライトが消えていたような気がするがきっと気のせいだろう、うん。




「成仏してくれよ、二俣。僕はこれからこの動画ととも生きていくからな…」




二俣も弱ったふたりに声をかけ、心の隙間を突こうとする魂胆があったように見えたしきっと本望であるはずだ。

僕はこれから彼が佐間の役割を担うことになるであろう未来を想い、静かに手を合わせた。






結論 人間素直が一番である。

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